山梨・甲府:“Outsider Brewery”の始まり – 01
2012年2月25日。山梨県甲府市に、新しいブルワリーが産声を上げる。
「Outsider Brewery(アウトサイダー ブルワリー)」と名付けられたブルワリーのブルーマスターは、博石館ビールといわて蔵ビールで15年にわたりクラフトビールを醸造してきたブルワー、丹羽智さんだ。
アウトサイダー ブルワリーは、一階のブルワリー、二階のビアパブから成り立っている。甲府駅から歩いて約15分の、甲府中央商店街に位置する。すぐ近くには「櫻座」。江戸時代に芝居小屋として始まり、江戸へ足を運ぶ一流の芸人を育て、甲府の文化作りを担ってきた場所だ。
丹羽さんは、オーナーのオーストラリア人、マーク・メジャーさんがブルワーを応募する声に応える形でアウトサイダー ブルワリーの醸造長になった。醸造のための機材は海外から中古を購入。醸造システムから何から、すべて丹羽さんが考え手を動かしていた。
現時点では「準備中」のアウトサイダー ブルワリー。店舗の前でお目にかかったおふたりに話を聞いた。
■宮下天通さん(富士桜高原麦酒 醸造長)
僕らの仕事はビールを造るだけに留まらない。機械のメンテナンスができないと「ブラウマイスター」とは言えない。その点、丹羽さんはブラウマイスターの職務を忠実に全うなさっていると思う。いちから醸造所を立ち上げるのは、造る側にとって、醸造所はもちろん造るビールそのものに愛着が湧く。そうして丹羽さんが愛着を持ったビールはどんな味わいだろうか。とても楽しみ。
丹羽さんは素晴らしいビールを造り続け、とりわけビール業界では知られている方。山梨県でビールを造る者のひとりとして、共に地域活性化のためにもがんばっていきたい。
■西尾圭司さん(クラフトビアダイニング eni-bru 代表取締役)
現在、クラフトビールの第二世代──次の世代に入っている。丹羽さんは長くブルワーでいらしただけでなく、システムエンジニアとしてもコンパイルできているのが素晴らしい。ビール造りのためのメンテナンス、システム作りも手がける希有なブルワーではないか。手作り感にあふれるビール工房は、売り手の立場である僕らにとって期待感がより高まる。
日本でクラフトビールができてまだ20年足らず。ブルーイング第一世代とは、「醸造環境を第三者であるエンジニアが造ってブルワーを招聘した、またはブルワーをいちから育てた」展開のように思う。そのシステムを自分たちの手で創り上げるのが第二世代。しかもアウトサイダー ブルワリーの場合は、丹羽さんというひとりの人間が、醸造にまつわるすべてのシステムを造り上げた。そこにとても驚いている。
米国であれば、こういった醸造所は普通にあるのかもしれない。日本にもこんな造り手が現れたことがうれしい。売り手として、出来上がるビールのクオリティに大きな期待感がある。■(次回02へ続く)
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