[ビアバー]2015.10.12

ビア女の酒場放浪記(11)Hofbrauhause München(ホフブロイハウス ミュンヘン)

飲むこと食べること楽しいこと大好きなビア女が
あっちこっち飲み歩いて気に入ったお店を勝手に紹介しています。

ドイツビール好きの私です。

どれくらい好きかと言うと、何の当てもないのに仕事を辞めて1年半ドイツに住んでしまうくらい好きです。
相手が人間だったら完全に「おまえ重いねん」と夜の街に捨てられるパターンですね。

ビールを飲むためにドイツに渡った私ですが、結局のところ就いた仕事はワインの販売。
おかげでビールをワイングラスに注いで光に透かして見たり、ずずっと液をすする小難しいビア女になってしまいました。

しかしドイツビールとは相思相愛の仲と自負しております。

そんな私が、日本から友達が来たら必ず連れて行っていたビアホールがあります。

ホフブロイハウス ミュンヘンHofbrauhause München
ミュンヘンの中心部にある歴史的なビアホールです。
観光地化していると言う人もいますが、骨太な威厳を持ち今なお伝統が受け継がれている生きたビールの歴史です。

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創業は1589年。
当時のバイエルン王ヴェルヘルム5世の宮廷醸造所として誕生しました。
そのころの日本は豊臣秀吉の安土桃山文化が真っ盛り。
そんな昔から、ミュンヘンのビール文化を牽引し続けているんです。
1920年にはアドルフ・ヒトラーがホフブロイハウスの上の階にあるフェストザール(祝典の間)で大集会を行い、ナチスの旗揚げになったことも有名。

大人数を収容できるビアホールは、政治の場としても利用されてきたんです。
ドイツの歴史本を読んでいると、度々ビアホールが重要な局面で登場します。

(ドイツでヒトラーの話をしてはいけませんよ。今でもとてもセンシティブな問題なんです。外国人同士で話題にするときは「名前を呼んではならないあの人」とか「ヒーさん」と言います。)

でも、躊躇することはありません。店内へ進みましょう。
ビアホールの中央には音楽隊のための小さな舞台があり、管楽器の賑やかに民族音楽を演奏しています。
その周りを観光客が囲みます。

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踊りだしたくなるようなテンポの良い音楽にみなご機嫌で、音楽に合わせて肩をゆすったり、グラスを掲げたり、中には踊りだす人も。
乾杯の音楽がかかれば、みんなで大合唱。
毎日がオクトーバーフェストのよう。
いろんな国の言葉の「乾杯」が聞かれるあたり、やはり観光地です。

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一方、ホールの入口付近の席では、常連客が陶器のジョッキを手に、強いバイエルン訛でおしゃべりをしています。
お祭りでもないのに、民族衣装である皮の短ズボンに、大きな羽を付けた帽子をかぶっている人たち。
伝統の中心にいるのはこの常連さんたちです。

常連さんは、自分のジョッキを店に預けることができるんです。

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棚にずらりと並ぶジョッキ。
自分で鍵を開けジョッキを取り出して、ウエイトレス・ウエイターさんに渡すシステム。

ミュンヘンに生まれた男性にとって、この店に自分のジョッキを置けることは誇りなんだとか。
知り合いのドイツ人のジョッキはお爺さんの代から伝わるもので、亀裂が入っても修復して大切に使っていました。

新たに常連客になるには、顔の効く常連からの推薦が必要で、審査や順番待ちがあるためなかなか常連にはなれません。
常連になれば、ジョッキを預けるスペースと顔写真付きの会員カードがもらえ、どんなに店が混んでいようと優先的に中に入ることができます。

看板下がっているテーブル席は常連さんのグループ席。
空いていれば誰でも座ってよいのですが、常連グループが来たら席を移動するルールです。

「一番の特権はね、自分の家のようにビールを飲むことができることだよ」と教えてくれた常連のオジサマ。
いつでも好きな時間に行けて、誰かしら知り合いがいて、自分のジョッキでおいしいビールが飲めるなんて、うらやましい限りです。
仕事以外の付き合いがいつまでも続いているって素敵ですよね。

(え? 写真を見せろですって?
「自分の家」にいる人に、写真を撮らして欲しいなんて言えませんよ)

ここ以外にも、Max-Weber Platzという住宅地にホフブロイケラーがあります。
以前はそこでビールを貯蔵していたのですが、現在はビアホールとビアガーデンになっています。
ここも古き良き常連のたまり場。観光客はほとんどいません。
昼間に行くとビールを飲みながらカードやボードゲームに熱中するオジサマたちに会えます。
夏にはビアガーデンがオープンし、家族連れで賑わっています。

ああ、またホフブロイに行きたくなってしまいました。
伝統的な雰囲気の中でビールが飲みたい。それも伝統的な1リットルジョッキで。

次回はホフブロイハウスのとっておきビールをご紹介しますね。

ホフブロイハウス ミュンヘンHofbrauhause München
住所/Platzl 9, München ドイツ
営業時間/9:00~23:30
http://www.hofbraeuhaus.de/

ホフブロイケラー Hofbraeukeller
住所/Inner Wiener Str 19, München ドイツ
(Uバーン4、5「Max-Weber Platz」下車。徒歩3分)
営業時間/10:00~24:00
http://www.hofbraeukeller.de/

ビア女ホフブロイミュンヘン酒場放浪記

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

コウゴ アヤコ

ビアジャーナリスト

1978年東京生まれ。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールに惚れこみ1年半ドイツで生活したことも。『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『BRUTUS』(マガジンハウス)など様々なメディアで執筆。

最近はキャンプとサウナにドハマり中。そこにもやはりビールは欠かせない。最高の「ビアキャンプ」&「ビアサウナ」を求めて、日本全国津々浦々旅をしている。

■執筆歴■
-海外生活情報誌ドイツニュースダイジェストで「旅ールのススメ」連載中
ビール小話 (ドイツニュースダイジェスト)2009~16年連載
-東海教育研究所かもめの本棚onlineにて「旅においしいビールあり」
-クラフトビールで乾杯!(日本トランスオーシャン航空機内誌Coralway2020年9.10月号特集)
-ビール王国(ワイン王国)
-ビールの図鑑・クラフトビールの図鑑(マイナビ)
-BRUTUS(マガジンハウス)
-an・an(マガジンハウス)
-CanCam(小学館)
-DIME(小学館)
-東京人(都市出版)
-るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
など
■出演歴■
-アサデス。7(KBC九州朝日放送)
-KURASEEDS(J-WAVE81.3FM)
-食べて!歌って!まるごとユーロ!ドイツ語(NHKラジオ第2)
-トークイントーク(フレンズFM)
-売れ筋RANKING~クラフトビール(KTSライブニュース)
-よじごじDays(テレビ東京)
など

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