[イベント,ブルワー]2015.10.16

【意外なビアスポット探訪】栃木のツインリンクもてぎでMotoGP開催中に飲める「最速ビール」

思いがけない場所で飲めるビール&ビアスポットを紹介するシリーズ。
第2回(あってよかった)は、栃木県のサーキットで年1回、3日間だけ飲めるビールをご紹介したいと思います。


 「ツーリングの後に飲むビールは最高に美味しい」

仕事後に飲む1杯が至福の時間であるように、オートバイでツーリングを楽しんだ後に飲むビールは文句なしに美味しい。きっとジョギングでもフットサルでも卓球でも同じように美味しいのだろうけど、他のアクティビティと決定的に違うのは、飲んだらバイクに乗れないし、バイクに乗るなら飲めないということ。
さらに、運転の必要がないレース観戦やイベントでも、スポンサーとの関係やそもそも自動車関連の催しはバイクや車の来場者が多いこともあり、わざわざアルコールに力を入れることはほとんどありません。

しかし年1回、「オートバイを楽しみながらオリジナルビールも堪能できる」というビアラバーなライダー(子供ができて頻度は激減しましたが)には、夢のようなビアスポットがあるんです。

栃木の山奥にあるサーキット「ツインリンクもてぎ」

 

栃木県の南東部、茨城県との県境にある茂木町。緑豊かな里山の町に、世界最高峰のオートバイレースが毎年開催されている「ツインリンクもてぎ」という国際サーキット施設があります。
1_P1010329_1「MotoGP™ 世界選手権シリーズ 日本グランプリ」

MotoGPとは、オートバイレースの世界選手権シリーズ。世界各国をまわりながら全18戦が開催され、ポイント制で年間チャンピオンを決めるレースです。
二輪ロードレース最高峰のカテゴリーで、車でいえばF1。レース専用車の最高速は新幹線より速い350km/hにも達し、コーナーリングでは生身のライダーが最大64°のバンク(マシンの傾斜角度、つまり地上から26°)で膝どころか肘まですりながら、モンスターマシンを縦横無尽に操る世界です。
2_BN5A8747日本グランプリは毎年秋に開催され、ツインリンクもてぎには世界中からバイクファンが押し寄せます。今年は10月9日(金)~11日(日)の3日間に渡って開催され、昨年の来場者数を大幅に上回る約8万5千人が集う大盛況でした。

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P1010356_1期間中は場内で様々なイベントやショーが行われ、年に1度のMotoGP観戦を楽しみにしていたファンで埋め尽くされます。

このオートバイまみれの地で、MotoGP開催中にビアラバーのオアシスになっているスポットがあるんです。

 P1010292_1 「最速ビール」

醸造元は宇都宮の「ろまんちっく村クラフトブルワリー」。生産量日本一を誇る栃木産の二条大麦麦芽を使った「麦太郎」、「麦次郎」、「餃子浪漫」など、モルトがしっかり効いたビールで知られるブルワリーが、毎年MotoGP日本グランプリのために限定ビールを造っています。

P1010307_ビールの種類は「サイソクビール(FASTEST)」「ドッグファイト(DOG FIGHT)」「ブラックマーク(BLACK MARK)」、そして今年初登場の「グリーンフラッグ(GREEN FLAG)」の4種類。GPファンならこのネーミングだけでテンションが上がるはず。

P1010306_走行時間以外はブースやイベントを見てまわりながら広い敷地内を移動するためか、テイスティングセット(1,200円)より440ml(650円)のレギュラーカップの方が売れています。

2007年の出店から9周年。今年は日曜が雨だったのにもかかわらず、3日間で3,000杯も売れたとか。飲食とは関係ないイベントにおいて、大手スポンサードビールが至るところで旗を上げる中での3,000杯。年々リピーターも増え、もてぎに来るMotoGPファンにとってはすっかりお馴染みのビール屋さんです。

P1010458_1醸造長・山下さんが、渾身の力をこめて最大出力で仕込むというのがこの「最速ビール」。MotoGPファン歴なんと29年。

「ゲートオープンに合わせて毎朝7時~8時から営業して、終わったら醸造所に戻って翌日の準備。毎日2時間ぐらいしか寝られません(笑)」
「それでも365日の中で、一番楽しい3日間なんですよね」

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P1010586_1MotoGPは作り手の山下さんにとっても、外せない年1回の一大イベント。
長年観てきたファンだからこそ、特別な想いが込められているのが最速ビールなのです。そのレシピや味わいには、ネーミングだけに留まらないこだわりが光っています。ひとつずつ紹介しましょう。

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【サイソクビール(FASTEST):へレスボック、7%】

「1杯目はコレ!」という根強い人気のあるフラッグシップ。
日本(宇都宮)・オーストラリア・ドイツ・イギリスの麦芽に、アメリカ・フランス・チェコのホップ、イタリア・スペインの米と、レースを開催する9か国の原料を使って仕込むへレスボックです。

しっかりしたモルトの旨味や甘い香りに混じって、やや強めのホップの香りが押し寄せてきます。GP開催国のキャラクターが渾然一体となって味わいに深みを出していますが、後味は非常にすっきり。7%とボックならではのキック力を持ちながらも、ボディ感が少なくアルコールをあまり感じないので、油断しているとハイスピードで飲めるという、最速(で酔える)ビールです。

常陸牛の豚丼やすき焼き丼など、和風ガッツリメニューとも相性がいい

常陸牛の豚丼やすき焼き丼など和風ガッツリ料理とも好相性

続いて「ドッグファイト」は、シトラ、シムコー、モザイク、ソラチエース、チヌークなど柑橘系の香りと強い苦みが特徴のホップを使った濃厚なIPA。

右【ドッグファイト(DOG FIGHT):IPA、6.5%】 左【ブラックマーク(BLACK MARK):シュバルツ、5%】

右【ドッグファイト(DOG FIGHT):IPA、6.5%】
左【ブラックマーク(BLACK MARK):シュバルツ、5%】

煮沸段階の最後に投入する「ホップバースト製法」と、冷却中に投入する「ドライホッピング製法」の2段階に分けて投入することで、ホップの香りと苦みを余すところなく引き出しています。

ジューシーでしっかり味のから揚げには、フレッシュなIPAが良く合う

ジューシーで濃いめの味つけのから揚げに良く合う

まずグッと香るのがグレープフルーツのアロマ。それに瞬く間に追いついてくるのがレモンピールのようなシャープなフレーバーと苦み。最初から最後まで、複雑なホップの香りと苦みが競い合うように追いかけあうさまは、まさにホップレースのよう。なるほど!と膝を打つネーミングです。

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一方「ブラック
マーク」は、漆黒の見た目からは想像できないキレ味とすっきり感のシュバルツ。甘味や酸味は控えめで、スタートではブラックモルトの香ばしさを感じさせつつも、フィニッシュまで口の中をスピーディに駆け抜けていきます。ぼーっとしているとたちまち置いていかれそうな軽やかさ。こってり味噌味のもつ煮とも相性ぴったりです。

そして今年初登場の「グリーンフラッグ」

【グリーンフラッグ(GREEN FLAG):セッションIPA、4.3%】

【グリーンフラッグ(GREENFLAG):SessionIPA、4.3%】

サザンクロス、ワイメアなどNZ産のホップを使い、シトラス系の爽やかな香りと苦みもしっかり感じられるセッションIPA、モルティなビールが揃う最速シリーズの中ではちょっと毛色の違う味わいです。天気が良ければ真夏日になるもてぎ。熱戦を繰り広げるレースの初戦にピッタリ!
1杯目に飲めば目の前のコースがクリアに開けて、セッション開始を告げてくれる、ドリンカビリティの高いビールに仕上がっています。

人が集まる場所に旨いものあり。料理も充実

 

これら4選手を引き立てるフードブースも充実しています。3_P1010375P1010289_! P1010399_1 P1010468_

P1010320_ P1010322_1ご当地グルメから世界各国の料理、MotoGPのチームシェフ監修メニューも。栃木の名産品やサーキットオフィシャル名物もあり食べ歩きも楽しい。

気になっていた「タイヤカスさきいか」×ブラックマーク。ビールのすっきり感で生臭さが際立つというブラックマーク(スリップ痕)を残してくれたので、これはあまりおすすめできないやつ

そしてまたブースに戻りビール補給

そしてまたブースに戻りビール補給

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毎年金曜朝イチに来て「最速ビールを飲んでからMotoGPが始まる」と言ってくれる人や、「ただいま!」「今年も来たよ!」とすっかり顔を覚えて声をかけてくれる外国の人、そんな国境を越えたリピーターに愛される最速ビール。そんなふれ合いも楽しみに来ていると、山下さんは言います。

「今年はペドロサ(ホンダ直轄ワークスチーム「レプソル・ホンダ」の選手)が優勝したから、決勝戦が終わった後に来て、レプソルカラーのボトルで乾杯してくれたお客さんもいてね。そういうのを見るとたまらなく嬉しくなりますね。レースの状況で売れ行きが偏ったりはしますが(笑)」。

 

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チームをイメージしたラベルのボトル(1本620円)。全部で10種類バリエーションがあるので、好きなライダーやチームで選ぶこともできます。
ちなみに山下さんは、バレンティーノ・ロッシ選手(ヤマハ直轄ワークスチーム「モビスターヤマハ」)のファンだそうで、

現時点でタイトル獲得に一番近いライダー#46 ロッシ選手

現時点でタイトル獲得に一番近い#46 ロッシ選手

P1010625_!一見同じチームラベル(左と右)に見えて、ライダーのイメージによって微妙にアクセントカラーを変えています。芸が細かい!ラベルのデザインも毎年リニューアル。

P1010394_1ビールとバイクという、自分の好きなものが共存している空間。
それを楽しみに訪れる、大勢のリピーター。山下さん自身がこの雰囲気を純粋に楽しんでいるんです。だから、ビールもとびきり美味しい。

朝イチで、レースの合間に、帰り際に、たびたびブースに寄り、ビールを飲みながらレースや選手について話し、また明日!といって別れる――。

まるでMotoGP村の街角ビアパブといった雰囲気。筆者も5年前から通い続けていますが、RPGゲームでいえば完全にセーブポイントです。

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画像は期待の新人ブルワー小針さん

直営ブースは3カ所あり、ろまんちっく村や宇都宮のブルーパブ『BLUEMAGIC』のスタッフがサポートしている。画像は期待の新人ブルワー小針さん

クラフトビールに興味がある人でなくても、ここに来てろまんちっく村ブルワリーを知り、改めて道の駅の醸造所まで飲みに来てくれる人がいたり(施設内に宿泊設備がある)、ビールのイベントとはまた違う喜びや新しい絆が生まれるという最速ビール。こうしてブルワーもファンも、また来年のMotoGP祭りに期待を寄せつつ、今年のもてぎセッションを終えます。

 

※ちなみに冒頭で「3日間だけ飲める」と書きましたが、厳密には宇都宮市内の『BLUE MAGIC』や、道の駅ろまんちっく村の飲食店でも在庫がある限り飲めます。さらに10月15日~開催中の「大江戸ビール祭り」(10月15日~18日シーズンⅠ)でも在庫限りで「グリーンフラッグ」が登場とのこと(名前は変更)

チャンスがある人は、是非!

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…とはいえサーキットのこの空気の中で飲めるのが最上級の幸せだと思う。雰囲気で美味しさ2割増し

取材協力:
道の駅うつのみや ろまんちっく村クラフトブルワリー

住所:栃木県宇都宮市新里町丙254番地
電話:028-665-8800
アクセス:JR宇都宮駅から「ろまんちっく村行」バスで約35分
東北自動車道、宇都宮ICより車で5分
開園時間:8:30〜18:00(レストランは10:00~21:00、L.O.20:30)
※季節により変更があるため、詳しくはお問い合わせ
定休日:第2火曜日(祝日の場合は翌日)
ホームページ:http://www.romanticmura.com/
公式facebook:https://www.facebook.com/romanticmura

IPASession IPAへレスボックろまんちっく村クラフトブルワリーシュバルツ宇都宮最速ビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

山口 紗佳

ビアジャーナリスト/ライター

1982年愛知県知多半島出身、大分県大分市在住。中央大学法学部卒業。
名古屋で結婚情報誌制作に携わった後、東京の編集プロダクションで企業広報、教育文化、グルメ、健康美容、アニメなど多媒体の編集制作を経て静岡で10年間フリーライターとして活動。現在は大分拠点に九州のビール事情をお伝えします。

【制作実績】
フリーペーパー『静岡クラフトビアマップ県Ver.』、書籍『世界が憧れる日本酒78』(CCCメディアハウス)、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)、グルメ情報サイト『メシ通』(リクルート)、ブルワリーのウェブサイトやPR制作等

【メディア出演】
静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」
静岡FMラジオ局k-mix「おひるま協同組合」
UTYテレビ山梨「UTYスペシャル ビールは山梨から始まった!?」
静岡新聞「県内地ビール 地図で配信」「こちら女性編集室(こち女)」等

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