ビールをもっと自由に楽しんでほしい! Beerに惹かれたものたち 7人目 ジャパンプレミアムブリュー(株)新井健司氏
昨年、サッポロビール(株)の子会社として誕生したジャパンプレミアムブリュー(株)(以下、JPB社)が発売している「クラフトラベル」シリーズ。本年8月19日には、日本で生まれ、アメリカで人気が高まったホップ、ソラチエースを使用した「Craft Label THAT’S HOP伝説のSORACHIACE」が発売され、人気を博している。
今回の「Beerに惹かれたものたち」はサッポロビールで唯一のマスターブリュワー、新井健司氏を取り上げていく。
目次
ブリュワーとして1番大事なのは「情熱」
「ブリュワーとして大事なことですか?う~ん…、やっぱり美味しいビールを造りたいという情熱ではないでしょうか」
クラフトビールの人気が高まり、「自分もビールを造ってみたい」とブリュワー志望者が筆者の周りには増えてきている。そこで、新井氏にブリュワーとして何が一番大事な要素なのかを質問してみるとしばらく考えた後にこのように答えてくれた。
そして、「その他に知識を深めていくために学ぼうとする姿勢や自分の造ったビールを一緒に販売してくれる仲間とのコミュニケーション能力が大事」と続けた。様々な職務を経験し、ビールのレシピ企画から作り込みまで全工程の総責任者を務めるマスターブリュワーになったからこそ、ビール造りはチーム力が重要だということを感じている。
「美味しいビールが造りたい」とサッポロビールへ
「ビールは元々、好きでした」
大学時代に応援部の吹奏楽団に所属。六大学野球部をはじめ、チームが勝利したときには祝勝会としてお酒を飲む機会はよくあったという。大学では応用生命工学を専攻し、食品に関わる研究をしていたこともあり、「美味しいビールを造ってみたい」と考えるようになり、学生時代に発売された「ドラフトワン」など新たなチャレンジを積極的に行っているサッポロビールを志望し、2007年に入社した。
「ビールを造りたいと言っても最初は『こんなビアスタイルのビールが造りたい』と明確な形があったわけではなくて、漠然と美味しいビールを造ってみたいと思っていました。実はこんなにも多くのビアスタイルがあることも入社してから知ったくらいです」と当時を振り返る。
土地それぞれで楽しまれるビール文化に触れたドイツ留学
2013年にはミュンヘン工科大学Weihenstephan校で、醸造技術を学ぶために1年間ドイツへ留学。その期間にドイツ国内にとどまらず、ベルギー、チェコ、フランスなど様々な国々のブルワリーを訪問した。
ドイツ留学では最先端の醸造設備や歴史ある醸造を見ることができた。「ドイツって、ビール純粋令があったから頑なに昔からの醸造方法を厳守しているイメージがあるかもしれませんが、新しい醸造方法や効率化を図ってビールを造っていたりしていますよ」と語る。
しかし、最も印象的だったのはその土地それぞれのビール文化に触れることができたことだという。
「日本とは異なり、ほとんどの醸造所の規模は小さく、いわば地ビールの国です。そのため、街それぞれにこだわりがあります。電車に乗って少し離れたところに行くだけでビールのラインナップが変わってしまいます。例えばミュンヘンだと、アウグスティナーとか有名ですが、少し離れると置いて無かったりします。『その土地に根付いている』そうしたところが面白かったです。だからこそ、ケルシュとかアルトみたいな飲み方ができてきたのだと思います」と話す。
帰国後に携わった新商品開発業務で得た経験がクラフトラベルに活きる!
1年間の海外留学の後に与えられた活躍の場は新商品を開発する業務だった。帰国後、学び得た経験を活かしていきたいと思っていた新井氏もこれには驚いたとのこと。技術部門から企画部門への異動は、非常に珍しいそうだ。このときに携わった商品には、お客様と共同で新しいビール開発を行うプロジェクト「百人ビール・ラボ」を通じて開発した「魅惑の黄金エール」がある。
だが、転機はすぐにやってきた。サッポロビールが2015年3月、クラフトビール業務を開始することになり、マスターブリュワーに就任することになったのだ。「正直サッポロビールとしても初めての役職であり、『どんなことを、どのようにして成し遂げようか』を走りながら考える状態だった」、と就任当時を思い返して述べてくれた。また、開発業務での経験は、コンセプト開発からビール醸造まで担うマスターブリュワーの業務において大いに役立っていると話していた。
マスターブリュワーになり、何か変化があったかを訊ねると「生の声を聞ける機会が多くなりました。お客様に自分たちのビールについてコンセプトを伝えられるようになったことで、より深く理解してもらえるようになりました」と飲み手との距離が縮まったと話す。
ビールをもっと自由に飲んでほしい!
今後、造ってみたいビールを訊くと「銀座ライオンGINZA PLACE店で提供しているCraft Label SECRET TAP-銀座コレクション-は自分が飲んでみたいと思うビールを造っています。単純にビアスタイルだけを追うのではなく、色々な要素を組み合わせながら、今この世にないビールを生み出していきたいです」と話した。また、ビアスタイルは1つの基準になるが、こだわり過ぎることは好きではないという。ビアスタイルという形ではなく、ビール自体を楽しんでほしいと新井氏は言う。
最後にビールファンに伝えたいこととして「色んなビールを先入観なく、色んな場所で、もっと自由に飲んでほしいと思います。そうすることで、もっとビールの味や香りを感じられるようになって、面白くなると思います」と語ってくれた。
ビールはやっぱり、美味しく、楽しい飲みものだ!
◆新井健司(たけし)氏 プロフィール
<略歴>
2007年4月 サッポロビール(株)入社。価値創造フロンティア研究所で、発酵・酵母関連の研究を担当。
2010年9月 九州日田工場製造部(現 生産部醸造グループ)に異動。ビールの仕込、発酵・貯酒、ろ過工程を担当。
2013年9月 ドイツ留学。ミュンヘン工科大学Weihenstephan校で醸造技術を学ぶ。
2014年9月 帰国後、新価値開発部第1新価値開発グループ所属 新商品開発業務に従事。
2015年3月 クラフト事業部へ異動、ジャパンプレミアムブリュー(株)マスターブリュワーに就任。
<趣味>
醸造所・ビアパブ巡り。ドイツ留学中には、ドイツ国内は元より、ベルギー・ルクセンブルグ・フランス・イタリア・スイス・オーストリア・チェコ・デンマーク・イギリス・アイルランドなどの醸造所を訪問。
2015年には、シアトル・ポートランド・ヤキマ・サンフランシスコ・ニューヨークなどアメリカの醸造所を訪問。
クラフトラベルHomepage:http://www.craftlabel.jp/
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