変わりゆく銀座の街並みに残る日本最古のビヤホールを訪ねて 【ビヤホールライオン銀座七丁目店】
東京銀座。今、この街は再開発が進み、街並みが大きく変化しています。この街に昭和9年から変わらぬ形で営業をしているビヤホールがあります。それが今回、ご紹介しますビヤホールライオン銀座七丁目店(以下、銀座七丁目店)です。
世代を超えて、「楽しかった」と言われるビヤホール
「楽しかった」
そう言ってもらえるのが、1番嬉しいと話すのは経営戦略部の西村礼佳氏です。「もちろん、美味しいと言ってもらえることも嬉しいのですが、料理やお店の雰囲気、全てを通して楽しんでもらえたことに嬉しさを感じます」と続けて話します。
飲食店業界では開業から10年続くお店は約1割と言われるなか、銀座七丁目店は今年で創建82年目を迎えました。来店されるお客さんの中には3世代で、利用される方もおり、「子供が成人したときに最初にここのビールを飲ませたい」、「1年の始まりはここから始めないと始まらない」、「両親が、ここでプロポーズをした」など様々なエピソードが長い歴史にはあります。常連のお客さんのなかには新人スタッフさんに「私がこのお店について教えてあげるよ」なんておっしゃる方もいらっしゃるのだとか。「これだけ長く、営業していけるのもお客様から支えられているからだと思います」と西村氏は言います。
ちなみにビヤホールというのは和製英語で、サッポロビールの前身である日本麦酒(株)が明治32年にヱビスビールのプロモーションをする場所のためにつくられた言葉です。この日本初のビヤホール「恵比壽ビヤホール」を創業としているサッポロライオンでは、コンセプトが和食店やダイニングであっても、その根幹には「自分たちがビヤホールのパイオニア」という自負をもたれています。
「周りのお客さんの声がBGMとなり、1人でも大人数でも楽しんで、くつろげる空間になっているのがビヤホールの価値なのではないかとサッポロライオン社長、刀根義明氏も言っています」と西村氏は話します。
どんなシチュエーションにも対応できる空間。それがビヤホールなのです。
職人技から生まれる絶品ビール
現在、ビヤホールライオンまたは銀座ライオンの名前がつく形態の店舗では1度注ぎでビールを提供することを基本としています。
ビヤマイスターの井上克己氏に「やってみる?」と声をかけていただき、実践させていただきました。まず、驚いたのが、ビールが注がれる勢いです。メイン商品のサッポロ生ビール黒ラベルは地下のタンクから1階まで押し上げてビールを注いでいるため、通常よりもガス圧を高くする必要があるためです。小グラスだとあっという間にビールが溢れだします。挑戦したビールは3:7で泡だらけ。しかも、泡は不均等で、見た目にも不味そうなビールになってしまいました。
井上氏は何杯も連続で注いでも最後の1杯が注ぎ終わるときにはすべてのビールが7:3の黄金比の形になるのです。しかも、泡は別に注いだようにきめ細かい泡になっています。
「コツですか?一定の角度にしたグラスに一気にコックを開き、ビールを回転させながら注いでいきます。こうすることで、余分な炭酸を抜きます。泡は最初にビールをグラスに当てる角度と注ぎながら調節しています」と絶妙な注ぎ具合について、秘訣を訊いてみると明るい笑顔でこう答えてくれました。
この芸術品ともいえるビールを求め、オーダーの際に井上氏を指名するお客さんも多いのです。銀座七丁目店に行った際にはぜひ、井上氏が注いだビールを飲んでみてほしいと思います。
注ぎの技術だけではない
銀座七丁目店の地下には1000リットルのタンクが6基設置されています。多い時には2~3日で1000リットルのビールが飲まれると言います。
「入荷して1日は冷却、静置してビールを落ち着かせる必要があります。しかし、多く在庫をもち過ぎるとビールが劣化してしまいますので、すぐに無くなっちゃうからといって、常にたくさんのビールを仕入れておけばいいというわけではないのです。天候やお客さんの入りをみながら、2日程度先の状況を見極めながら発注をしています」
そして、もう1つ美味しいビールを提供するために重要なことがあると井上氏は言います。
「注ぎ方、ビールのコンディション管理も美味しいビールを提供するために重要ですが、最も重要なのが、洗浄です。タンクからサーバーまでのビールが通る経路、お客さんの口に直接触れるグラスがきちんと洗浄されていないと美味しいビールになりません」
洗浄で味の8割は決まると言います。最高に美味しいビールを提供するために注ぎの技術だけではなく、徹底した品質管理があるのです。
これを知っていればライオン通!
こちらのお店に来店すると目に飛び込んでくるのが、入口正面にある大きなガラスモザイク壁画です。銀座七丁目店のビルは建築家の菅原栄蔵氏に依頼して、建てられたものです。ビヤホールの内装のテーマは「豊穣と収穫」です。私たちが美味しいビールを飲めるのも原料となる麦芽やホップなどを農家さんたちが丹精込めて作ってくれるからです。そうした背景を知っていただきながら飲んでほしいと思います。
また、天井からぶら下がった水玉電球はビールの泡を。槍状に広がるようにそびえたつ柱は麦の穂をイメージしています。実は店舗の至るところに隠れたテーマが、ビヤホールライオン銀座七丁目店にはあります。来店した際にはぜひ、確認してみてください。そして、知らない人に教えてあげましょう。
西村氏により美味しく、楽しめる方法を訊いてみました。
「ビールでいえば、適温で早く飲みきるのが美味しく飲む秘訣ですね。私たちは金口(小グラスのことを指す)で飲みます。フードは数量限定のローストビーフはぜひ食べていただきたいと思います。あとはクラブライオンカード。全国のサッポロライオン各店で使用でき(一部店舗のぞく)、100円使用毎に5ポイント貯まり、2000ポイントに達すると2000円の割引券が発行されます」
クラブライオンカードは宴会など、大人数の幹事様として利用するとすぐにポイントが貯まるので、もっておくとかなりお得です。しかも、YEBISU BARをはじめ色んな店舗で使えるので使い勝手もいいです。
たくさんの想いが込められた日本最古のビヤホールに、心に残る最高の1杯を味わいに行ってみてはいかがでしょうか?
◆ビヤホールライオン銀座七丁目店 Data
住所:東京都中央区銀座7-9-20 銀座ライオンビル1F
電話:03-3571-2590
Homepage:http://www.ginzalion.jp/
営業時間:月~土 11:30~23:00 日・祝 11:30~22:30
定休日:なし
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。