日本のクラフトビールとともに発展をしていく 【ブルワリーレポート Founders Brewing Co.】
2016年9月。クラフトビールの本場アメリカから日本に新たなビールが輸入されました。そのブルワリーの名は「Founders Brewing Co.(以下、Founders)」です。2015年には雑誌「ZYMURGY(ザイマージー)」のランキングで4位に選ばれる人気のブルワリーです。10月某日、共同創業者の1人であるデイブ・エンバース氏とインターナショナルセールス担当のブライアン・メイ氏が来日され、彼らのビールへの想い、そして日本についてお話を伺ってきました。
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成長する日本のクラフトビールとともに発展をしたい!
「私たちは各国のビール好きに飲んでほしいというのが一番の理由です。北米のクラフトビールが世界のクラフトビールの価値観を変えていっているということも理由の1つです。日本のクラフトビールが成長している過程で、日本に進出することができて光栄です。私たちは日本のクラフトビールとともに発展していきたいと思っています」
今回、日本へ進出を決めた理由についてデイブ氏は、こう教えてくださいました。
そして、国外へ輸出する際に重要となってくるのが、インポーターの存在です。数あるインポーターからナガノトレーディングをパートナーに選んだのかを訊いてみると「私たちの製品を損なわれることなく、ビール好きに提供されること。徹底した冷蔵管理をされていること。そして、彼らが私たちの他にパートナーにされているブルワリーをみても尊敬しているところばかりということで選ばせてもらいました」とその理由について話してくださいました。
すべては“Brewed for us”の精神から
“Brewed for us”
Foundersとはどんなブルワリーなのかを訊ねるとデイブ氏は上記のように答えてくれました。彼らは一般受けするビールを造ることを信条にはしていません。ビールの限界を押し広げることを好む、いや、望んでいるものたちに向けて造っています。
しかし、Foundersは最初からこのような精神の元にビール造りをされていたわけではないと言います。1997年の創業から3年間は売り上げが伸びず、2000年に倒産危機を向かえます。ここで、彼らはそれまで造っていたビールを一部、醸造中止にしました。そこで、「今までのようなビール造りでこれだけの失敗をしてしまったのだから、これからは自分たちが飲みたいビールを造ろう」と決心しました。そこから生まれたのが“Brewed for us”の精神だったのです。
しかし、ラインナップや精神を変えただけで、急にビールが売れるようになるものなのでしょうか。
この疑問をぶつけてみたところ「“Brewed for us”の精神があって、味が安定した圧倒的な強いビールを人々が受け入れて、共感してくれたことは大きいと思います。経営が大変だった時期もビール好きな人たちが支えになってくれ、自分たちがしていることが間違っていないと自信をもつことができました。私たちは私たちのファンとともに成長してきました」
そう。“Brewed for us”のusは自分たちだけではなく、彼らのビールを愛し、支えてくれたファンも含まれているのです。
Mahou San Miguelは自分たちのレガシーを理解し、ともに発展していけるパートナー
Foundersを語るうえで、もう1つ欠かせない歴史が2014年末に行ったスペインのMahou San Miguel(以下、San Miguel)とのパートナーシップです。自社株を30%譲渡したことはそれまでのファンから批判を受け、ファンが去っていくことにならなかったのでしょうか。
「そういった否定的な意見はありませんでした。そうなった要因にSan Miguelがブルワリーだったこと、125年間、家族経営をしてきていたところがパートナーシップを結ぶ大きな要因になりました。私たちとしては自分たちがアメリカ国内で売ってきたビールを世界中に広められるということが大きなメリットと感じました。今はSan Migelからは世界中で流通するということを学んでいます。また、San Miguelは北米のクラフトビール文化が、これから世界的なものになると察し、それに対して、情報を取り入れていかなければならないという思いがありました。お互いがwin-winな関係性だったのです。なによりもビール醸造に対する哲学も一緒と根本的に結びついてきていると思っています。これがもし、バドワイザーやミラーズといったところと手を結んだらファンからの反応は違っていたと思います」
San Migelとのパートナーシップについて、デイブ氏はこう付け加えました。「Foundersというものが続いていかなければなりません。自分たちの地域で、子供たちに受け継がれていったらいいなと思っています」とこの提携は未来を見据えての行動でもあったのです。
ブルワー育成支援にも関心を示す
ビール造りで日本とアメリカで決定的に異なること。それはブルワー育成環境です。アメリカではどのようにブルワーとしての経験を積んでいくのか。またとない機会でしたので、訊いてみました。
「クラフトビールにとって、ホームブリューイングというのは重要なものです。ホームブリューイングそのものが、本当に魂が入っているものです。アメリカにもビール醸造を学べる学校はありますが、ホームブリュワーたちのコミュニティが盛んなので、そこでディスカッションを交わしながら学んでいくことができます。ですので、必ずしも学校で学ばなければならないとは思いません。アメリカにおけるブルワリーのほとんどが自分たちのキッチンが始まりの場所です」
デイブ氏、ブライアン氏はアメリカでクラフトビールが大きく発展した理由の1つにホームブリューが認められていることがあると言います。
「日本でホームブリューが認められていない詳細は分かりませんが、合法化されることで、私たちに力になれることがあれば、ぜひ、やらせていただきたいと思います。そのくらいホームブリューイングは重要なものです」
様々な考え方があると思いますが、彼らが他国のクラフトビール発展にも情熱をもって語ってくれたことはとても嬉しい限りです。
「美味しいビールを造ろうとしている人に私たちは敬意を示します。Foundersでは設備を見せることは大歓迎ですし、経験が1番重要なので、そうした方たちを受け入れる姿勢はあります」
“Brewed for us”はビールだけではなく、ビール造りに関わる仲間たちに対しても当てはまるのではないかとお話を聴き、感じました。
今後の日本での活動について訊いてみますと「私たちは常に世界中、どこでもアメリカのクラフトビールが広まって、日本でも色んなビアスタイルを知ってもらうことを1番の目的にしています。日本で1番のアメリカクラフトビールブルワリーになりたいです。そのために一緒にクラフトビールシーンを活性化させることをどんどんしていき、成長していきたいと思っています」と優しくも熱く語ってくださいました。
これまで、多くの失敗をしてきたと言います。そこから生まれた“Brewed for us”の信念。この信念から生まれたビールに日本のビールファンも魅了されることと思います。今後も新作ビールが輸入予定です。Founders Brewing Co.が生み出していくビールの世界、期待が高まります。
取材地:ナガノトレーディング
通訳:大曽根 智之氏(ナガノトレーディング)
◆Founders Brewing Co. Data
本社所在地:235 Grandville Ave. SW Grand Rapids, Ml 49503
創業年:1997年
共同創業者:Mike Stevens(マイク・スティーブンス)、Dave Engbers(デイブ・エンバース)
年間生産量:269,687bbl(約31,680kl 2015年実績)
◆(株)ナガノトレーディング(正規輸入元)
住所:〒231-0041 神奈川県横浜市中区吉田町5-4第六吉田ビル4F
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