[ビアバー]2017.2.27

ビア女の酒場放浪記(37)ウィーンの街で伝統と革新を飲み歩く

前回の「ザルツブルク酒場放浪記」に続き、オーストリアの首都ウィーンの酒場放浪記をお伝えしたい。
かつてはザルツブルク家のお膝元として栄華を極めた。今でも美しい建造物が多く残る。
クラシック音楽も盛んで、モーツァルトやベートーヴェン、シューベルトなど、多くの作曲家が活躍したことから「音楽の都」とも呼ばれている。

ウィーンでアルコールと言えば市内と近郊で造られるワインと、「ホイリゲ」と呼ばれるワイン専用の居酒屋が有名だ。
さりとてビールも負けてはいない。
伝統的な酒場と、クラフトビールが飲める酒場に行ってみよう。

ウィーンの伝統的なビールが飲める「Salm Bräu(サルムブロイ)」

ウィーンの南、ベルヴェーデーレ宮殿や、音楽家も多く眠る中央墓地の近くにある醸造所兼レストランが「Salm Bräu(サルムブロイ)」だ。
レストランができたのが1994年だが、ビールは1924年から造られている。

ビールに詳しい方なら、「ウインナスタイル・ラガー」を思い出す方もいらっしゃるかもしれない。
ウィーン麦芽で造られていたビールで、ミュンヘンで飲まれるオクトーバーフェストビール(メルツェン)のもとになったビールだが、ピルスナーに淘汰されウィーンでは造られなくなってしまった歴史を持つ。
オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の弟マクシミリアンがメキシコ皇帝に就いたとき、ウインナスタイル・ラガーも海を渡りメキシコで細々と造られてきた。

クラフトビールや伝統的なビールが見直されている今、ウインナスタイル・ラガーもウィーンで造られるようになった。
このお店では、MÄRZEN(メルツェン)としてメニューに載っている。

友情が生んだメルツェンについては、こちら

ビールはピルスナー、ヘレス、ヴァイツェン、ボヘミアンダークラガー、そしてメルツェンが定番。
注文したヴァイツェンはオレンジのようなジューシーな甘さ。


注文すべき料理はスペアリブだ。(手前)このボリュームで1人前。
やわらかい肉と甘辛いソースはビールとの相性が抜群であっという間に食べきってしまった。
ウィーナー・シュニッツェル(奥)は、ウィーン風子牛のヒレ肉。

ワイルドに肉に食らいつき、ビールを飲み干す。
豪快に飲み食いできる庶民的なレストランだった。

Salm Bräu
住所:Rennweg 8, Vienna
営業時間: 11:00~24:00
http://www.salmbraeu.com

国立歌劇場の近くには、 「Stadtbrauerei Schwarzenberg」がある。
こちらもレストラン内で造ったビールを飲ませてくれる。市内観光の休憩も兼ねて立ち寄るに良いロケーションだ。

ウィーンで世界中のビールを堪能できる「Mel’s Craft Beer(メルズクラフトビア)」

流行に敏感なウィーンっ子に注目されている革新的なビールを置くダイナーといえば、こちらの「Mel’s Craft Beer(メルズクラフトビア)」


カウンターにずらりと並ぶタップの数は28種類! この日はオーストリアのビールは9種類。
250mlが2.9ユーロ(345円)、400mlが3.8ユーロ(452円)の均一料金で、値段の安さも魅力だ。
少しずつ色々なビールが飲めるのが嬉しい。
(2017年2月23日現在のレート、1ユーロ≒119円で計算)


分厚いメニュー表をめくり、ボトルビール数を数えたところ、その数なんと292種類!!
ボトルサイダーは12種類。
オーストリアのクラフトビールを始め、イタリア、デンマーク、ドイツ、英国、アメリカなどなど、様々な国のビールを扱っている。
日本からは常陸野ネストビール3種類がメニューに載っていた。

バーマンの話によると、期間限定品などまだ多くのビールがあるのだがメニューに載せきれないとのこと。


フ―ドは、ハンバーガー(10.5ユーロ~)をお勧めされた。
手作りのパテはオーストリア産の牛を100%使用し、焼き加減は中心部に赤味が残るミディアムレア。
噛みしめるほどに肉の旨みが染み出す。


チーズとミートパレット(12.5ユーロ)

たまたま隣に座ったオーストリア人のビール好きカップルに勧められるまま、オーストリアのビールを飲み進めた。

2015年現在、オーストリアには人口862万人に対し214醸造所があり、うち年間1,000キロリットル以下の小規模醸造所114 箇所だ。
日本は1億2680万人で、255醸造所であることを考えれば、まだまだオーストリアには敵わない。
「日本のビールの歴史はまだ短いけどいつかは追いつきたいな。でもオーストリア人はなんでこんなにアルコールに強いんだ」酩酊にむかっていく頭でそんなことを考えながら、古都ウィーンの夜は更けていった。

次回は日本で味わえるオーストリアビールと旬のシュパーゲル(白アスパラガス)をお伝えしたい。

Mel’s Craft Beer
住所:Wipplingerstraße 9, Vienna
営業時間:17:00~翌4:00
Facebook
https://paddysco.at/mels-craft-beers-diner/

ウィーンオーストリアビア女の酒場放浪記

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

コウゴ アヤコ

ビアジャーナリスト

1978年東京生まれ。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールに惚れこみ1年半ドイツで生活したことも。『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『BRUTUS』(マガジンハウス)など様々なメディアで執筆。

最近はキャンプとサウナにドハマり中。そこにもやはりビールは欠かせない。最高の「ビアキャンプ」&「ビアサウナ」を求めて、日本全国津々浦々旅をしている。

■執筆歴■
-海外生活情報誌ドイツニュースダイジェストで「旅ールのススメ」連載中
ビール小話 (ドイツニュースダイジェスト)2009~16年連載
-東海教育研究所かもめの本棚onlineにて「旅においしいビールあり」
-クラフトビールで乾杯!(日本トランスオーシャン航空機内誌Coralway2020年9.10月号特集)
-ビール王国(ワイン王国)
-ビールの図鑑・クラフトビールの図鑑(マイナビ)
-BRUTUS(マガジンハウス)
-an・an(マガジンハウス)
-CanCam(小学館)
-DIME(小学館)
-東京人(都市出版)
-るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
など
■出演歴■
-アサデス。7(KBC九州朝日放送)
-KURASEEDS(J-WAVE81.3FM)
-食べて!歌って!まるごとユーロ!ドイツ語(NHKラジオ第2)
-トークイントーク(フレンズFM)
-売れ筋RANKING~クラフトビール(KTSライブニュース)
-よじごじDays(テレビ東京)
など

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