テイスティングレポ:ブレタノマイセスを加えたヴィクトリー「Sour Monkey(サワーモンキー)」
アメリカンクラフトビールの売り場を物色していたら、変な奴と目があってしまいました。
眠いの? 睨んでいるの? それとも私をからかっているの?
750mlの大きめボトルに、コルク栓。
ふてぶてしさを感じさせるその目の持ち主は、アメリカのヴィクトリー醸造所の「Sour Monkey(サワーモンキー)」
なになに。“ヴィクトリー醸造所のベルジャントリプル、Golden Monkey(ゴールデンモンキー)にブレタノマイセスと乳酸菌を加えたビール”とな。
ちなみに、ゴールデンモンキーのラベルはこんな感じ。
ゴールデンモンキーって神様なんですって。
サワーなモンキーはきっと、エキゾチックでやんちゃなビールなのだろう…
面白そうなので、うちに連れて帰ることにしました。
冷蔵庫で落ち着かせる間に、海外のサイトを検索してみるといろいろと面白いことがわかってきました。
サワーモンキーの発酵には2種類の酵母と、乳酸菌が使用されています。
一つ目はトラピストのウエストマールに使われている酵母。
これはベースになっているゴールデンモンキーにも使用されています。
さらに、野生酵母であるブレタノマイセスと乳酸菌が加えられています。
ブレタノマイセスや乳酸菌は多くのワインやビールにとって“汚染”に成り得るもの。
ブレタノマイセスは「黴臭さ」や「獣臭さ」、乳酸菌は「ヨーグルト臭さ」とも表現されます。
しかし、うまく発酵させることができれば酸味や複雑さをもたらすことができます。
ベルギーのランビックなどでは積極的に取り込まれていますよね。
さぞかし野性味あふれるビールかと想像し、グラスに注ぐと
飛び出してきたのは、熟したベリーのような甘酸っぱい香りとモルトの香り。
口を付けるとモルティな甘味を感じつつレモンのようなフルーティな酸味も現れます。
喉を滑り落ちて行った後には、すりおろしたリンゴのような甘酸っぱい余韻。
ブレタノマイセス特有のワイルドさは、仄かに香る程度。
シャープな酸味はあるけれども酸っぱすぎない。
モルトの甘味、フルーティな酸味、ちょっとの野性味、それらが複雑に絡み合ってちょうど良いバランス。
こりゃ~冬服を脱ぎ捨てて春の装いになる季節、気分までアゲるにちょうど良い!
ラベルの目はふてぶてしいままですが、飲む人の目をパッチリとさせてくれます。
うっとりとしながら杯を重ねているとアルコールの酩酊がやってきました。
アルコール度数は9.5%! そんなハイアルコールとは思えない軽やかさにやられました。
あれ、せっかく開いた目が重くなってきたぞ。
ガツンとくる酸味を期待していると物足りないかもしれません。
しかし複雑な味わいにノックアウトされてしまうビールでした。
Sour Monkey(サワーモンキー)
生産国:アメリカ(ペンシルバニア州ダウニングタウン)
醸造所:ヴィクトリー
スタイル:サワーエール
アルコール度数:7.5%
http://www.aqbevolution.com/
https://www.victorybeer.com/
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。