ビア女の酒場放浪記(43)黒酢の郷が醸す鹿児島クラフトビール「桷志田(かくいだ)」後編
前編では「黒酢の郷 桷志田(かくいだ)」に併設されたクラフトビール醸造所についてお伝えした。
後編では、2階にある「黒酢レストラン」で黒酢料理と、黒酢造りの技術を活かしたというクラフトビールをご紹介しよう。
2階に上がると、目の前に広がるのは白く明るいテーブル。
正面の大きな窓の向こうには黒酢の壺畑と、錦江湾に浮かぶ桜島が見える。
運が良ければ、波と戯れる野生のイルカを見ることができる絶好の眺めだ。
(著者は5回目の訪問にしてイルカを発見!)
奥の窓から見えるのは黒酢の壺畑。
20,000もの壺があるというから驚きだ。
黒酢壺畑は自由に散策でき、人数が集まれば見学ツアーが開催され壺から取り出したばかりの黒酢も試飲させてもらえる。
レストランと合わせて是非お楽しみ頂きたい観光スポットだ。
さて、お目当てのクラフトビールは2種類。「桷志田ホワイトエール」と「桷志田レッドエール」だ。
「桷志田ホワイトエール」はオレンジピール、コリアンダーを副原料に使用したベルジャンホワイト。
外観はやや白濁した黄金色。
フラワリーな香りとすっきりとした口当たりが同居している。
控えめながらレモンを連想させるフルーティな酸味も。
ボディは軽めで、喉を軽快に滑り落ちていく。
「桷志田レッドエール」はコレステロールを下げる作用がある紅麹を加えたアメリカンレッドエール。
外観は赤みがかった琥珀色。
麹を想像させる風味はなく、柑橘系のホップの香りを感じる。
丸みのある酸味と、モルトの香ばしい甘味、後からやって来る苦味のバランスが良く、全体的にすっきりとした印象。
桷志田黒酢ランチはメイン料理に、食前酢、前菜、サラダ、小鉢、スープ、ライス又はパン、スイーツ、コーヒーが付いて、1,550円から。
黒酢は、コーヒー以外のすべての料理に使われているというのも興味深い。
まずは黒酢ドレッシングのサラダを頂く。
レストランで使用されている野菜のほとんどは、壺畑に隣接する「桷志田有機農園」で収穫された新鮮な有機野菜だ。
ビール粕や、酢のもろみ粕、製品にならなかった黒酢を肥料に育てられている。
きゅうりのビール漬けは、ホワイトエールに野菜を漬け込んでいる。
パリパリとした歯ごたえは良い箸休めだ。
ホワイトエールと一緒に食べてみよう。
ビールとドレッシングが持つ、酸味とフルーティさがリンクし、野菜の味を強く感じる。
メイン料理の一番人気は「黒豚の黒酢酢豚」。
5年熟成の黒酢を使用している。黒豚は柔らかく脂まで甘い。
肉と野菜をつなぐソースは素材の味を引き立たせ、口の中で旨味のフルハーモニーが響き渡る。
合わせるなら、レッドエールだ。
柑橘類の皮のような爽やかな苦味あとに、モルトの香ばしさと旨味がやってくる。
黒酢は普通の酢と比較して旨味成分であるD-アミノ酸が約55倍なのだとか。
ビールや食材と合わせることでさらに旨味が増し、味の奥行きを感じる。
ソースまでパンで拭ってツマミにしてしまったくらいだ。
日本ではまだ珍しい、ジョージア(旧・グルジア)ワインもレストランで注文できる。
収穫したブドウを皮や種、茎を取り除かず房ごと壺に入れて造られたワインだ。
黒酢と同じく壺で発酵熟成させたワインで、複雑かつエレガントで満足感の高い味だった。
こちらも黒酢料理に大変合う。
黒酢はアミノ酸が豊富に含まれるだけでなく、活性酸素を除去し、抗酸化力アップの作用もある。
大自然を臨みながら食べて飲んで、パワーを貰ったような気になる。
桷志田のクラフトビールはボトルでの販売をしておらず、又そのほとんどが黒酢レストランで消費されてしまうため、他で飲む機会はめったにない。
桜島が浮かぶ錦江湾の雄大な景色、黒酢の壺が整然と並ぶ畑、そしておいしい料理とビール。
眼でも舌でも楽しめる「黒酢の郷 桷志田」を是非とも訪問して頂きたい。
レストランで使われている黒酢やドレッシング、ワインは1階の売店でも購入できる。
お土産に黒酢とワインを購入して、黒酢の郷を後にした。
「黒酢の郷 桷志田(かくいだ)」
住所/鹿児島県霧島市福山町福山字大田311-2
電話/0995 (55) 3231
営業時間/8:30 – 17:30ランチタイム 11:00 – 15:00 アフタヌーンティー 14:00 – 17:00
定休日/年中無休
WEB/ http://kurozurestaurant.com/
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