[イベント]2010.10.4

ある程度ってどの程度?

 ビールは楽しく飲むのが一番だが、もしあなたがそのビールに対してなんらかのコメントや評価を発表するなら、ある程度のテイスティング能力は必要だろう。それが、個人のサイトやブログ、ミクシーやツイッターであったとしても、世間に対して影響を及ぼす可能性があることを認識しておきたい。
 よく「これは個人的な感想なので…」といった弁解をしつつビール評価をしているサイトやブログを見かけるが、不特定多数が自由に閲覧できるメディア上に執筆することは大きな責任が生じ、「個人的な感想」ではすまされないことがあると自覚するべきである。

 なんて、ちょっと堅いお話から入ってきましたが、よーするに、ビールを語る場合には「裏付けのない思いこみや無責任な噂」で書いちゃ、ビールがかわいそうだってことなのよね。風評被害に繋がりかねないし。
 
 そんなわけで、公にコメント、評価、感想を述べるには”ある程度のテイスティング能力”が必要だってわけなんですが、じゃぁー”ある程度”って”どの程度”よ? って疑問が生じてくる。

 まず第一に、”テイスティング能力”とは何か? ということだ。 それは、”ビア・スタイルの把握と官能能力”である。
 ならば、ビア・スタイルを”どの程度”把握すればいいのだろうか?
 ブリュワーといった造り手、飲食業者などの供じ手、そしてビア・ジャッジやビア・ジャーナリストといった伝え手は細かいビア・スタイルを熟知している必要がある。
 しかし、一般的な飲み手としては「そこまでシリアスになると飲んでてつまんないよ」という気持ちになるだろう。そー、冒頭にも述べたが「ビールは楽しく飲むのが一番」である。ビア・ジャッジのように90にもおよぶビア・スタイルを把握する必要はない。
 一般的に楽しむには「同じ黒いビールでも、シュバルツとスタウトでは全然違う」というスタイル概念ぐらいからスタートすれば良いだろう。
 これは何も”お勉強”ではないし、”知らないとビールを飲んではいけない!”といった戒律でもない。こういった違いを知ると、ビールの世界がさらに広がるという案内板のようなモノである。
 官能能力に関しては、ブルワーやパブ・オーナーのように低レベルのオフ・フレーバー(本来、ビールにあってはならない不快な香りや味わい)を感知したりする必要はない。ビア・パブで「ビールのアラ探し」をしながら飲むのは不幸なことなのだ。
 まずは、日光臭(ビールが日光にあたることによって生まれる悪臭。動物臭に似ていて、テイスティングではスカンキー、キャッティーと表現される)ぐらいがわかれば良いだろう。
 しからば、その日光臭とはどのような臭いなのだろうか? 透明なグラスに市販のピルスナーを注いで、日向に放置しておけば良い。20~30分後には、見事にスカンキーなビールが出来上がっているだろう。このように”日光臭”は簡単に体験できる。逆に言えば、ビールは光にあたるとわずか20分でスカンキーになってしまうので保管は十分注意を払う必要があるということだ。日光臭を知れば、自分自身の保管の仕方を改善するといった対処が出来るわけだ。

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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