日本産ホップのプライドをみせるビールへ。「SORACHI1984」リニューアルインタビュー
2019年4月9日に発売をスタートした「SORACHI1984」。先日、お伝えした通り発売から1年をむかえ、リニューアルされる。今回は味を変えず、原料比率やパッケージを変更するという珍しい変更となった。その真意はどこにあるのか。ブリューイングデザイナーの新井健司氏にこの1年の感想とともに話を伺った。
■顧客満足度は高いが、販売先の獲得が難しかった1年
発売前から1984人のアンバサダーの募集や日本生まれのホップ「ソラチエース」のストーリー性から注目を集めた「SORACHI1984」。新井氏が「ホップにフォーカスしたビール」という通り、「SORACHI1984 SESSION」「SORACHI1984 DOUBLE」「SORACHI1984 Another Story Amarillo」の派生商品3種類を同時に発売したり、ビールイベントで販売したりとソラチエースをアピールしてきた。1年を通して活動するなかで新井氏は何を感じたのだろうか。
「店舗でも料飲店でも飲んでいただいたお客様からは好評でした。『飲んだことがない味だけど、大手メーカーらしい飲みやすさ。くどくなくて何杯も飲みたくなるビール』。王道だけど個性的という認識をもたれている印象です。
初めて飲んだ人からも「大手メーカーでここまでの香りがあるビールは凄い」という感想もあり、「大手ビールメーカーっぽくもなく、でも小規模醸造所がつくるビールとも違うという感じで受け止められているのかなと思っています」と分析する。
しかし、その一方で販売網での課題を感じたという。
「置いてもらえるお店が少ないことは1年を通して続いています。多くのお客様からも『買いたいけど置いていない。どこで買えるのか?』という声をたくさんいただきました。私たちの言葉でカバー率というのですが、いかに継続して置いてもらうためにどのように展開をしていくのかを発売当初からずっと考えています」
購入したいが、置いていないので飲むことができない。飲み手の思いに応えられない葛藤が新井氏の話から感じられた。
販売店を増やす対策として、どんなことを考えているのかを聞いてみると「売り上げが高い方が良いというのはありますが、これまでやってきた『CRAFT LABEL』や『Innovative Brewer That’s Hop』などのブランドよりも『SORACHI1984』は市場に入り込めているという感覚はもっています。販売店様にもお客様にもしっかり価値を認識してもらい購入していただきたいので、安くして販売量を多くするという考えで展開はしません」と、引き続き価格の安さではなく、ブランドの価値をしっかりと伝えていくという。
■ホップへのプライド。サッポロビールが創業から取り組んできた原料への思いをアピールしていく
今回のリニューアルポイントは、日本産ソラチエースの使用比率を増やしたところにある。
「北海道上富良野産ソラチエース(以下、上富良野産)を増やすことは、3年前くらいの開発段階から決めていました。これまでも上富良野産は使っていましたが、使用量がとても少なく大々的にアピールはしてきませんでした。徐々に使う量を増やすことを思い描いてきて、今回のリニューアルでアピールできる量まで増やしました」
現在、「サッポロビール株式会社(以下、サッポロビール)」で使用している上富良野産は、研究圃場で栽培されているものだけ。年間の収穫量は年によって異なるが、30~100㎏程度。通年販売するには大部分をアメリカ産で補わなければならなかった。それでも今回のリニューアルでは「明確な量はお伝えできませんが、今までと比較するとかなり増えています。日本産ホップを打ち出してもおかしくない量になっていると思います」という。
これからも日本で収穫されたソラチエースの使用量を増やしていく考えだが、実現するためには収穫量を増やす必要があり、そのために「北海道で協働契約している農家の力を借りていく」と新井氏は話す。
ところで、なぜ新井氏は日本で収穫されたソラチエースにこだわるのだろうか。
「全盛期と比較すると日本のホップ生産量は1/10まで落ち込んでいます。ソラチエースは、日本で生まれて世界で陽の目を浴びたホップ。そのストーリー性をきっかけに日本産ホップに興味をもち、『ホップでビールを選ぶ』という新しいビールの楽しみ方を伝えることで、日本のホップ産業をもう一度元気にしたい。未来のビール好きのために日本産ホップを残していきたいんです」
根底にあるのは、日本のホップ産業がなくなってしまうことへの危機感。しかし、ただホップの栽培量を増やすのではビールファン以外の支持を集めることは難しい。多くの人の関心を集めるためには、日本で生まれ育った「ジャパニーズホップ」の確立が重要であり、それにはソラチエースが適任だと新井氏は考えている。
「いま通年で販売されているビールで、ホップの品種を全面に出しているのは『SORACHI1984』くらいだと思います。2年目の今年は、『サッポロビール』が創業から140年以上続けてきているホップ栽培へのプライドを前面に打ち出してホップが主役のビールなんだと伝えていきます」
その思いは缶ラベルにも表れており、プライドをもって140年以上の月日をかけてホップを栽培してきたことを世間に伝えていくために『サッポロビール』というブランドを打ち出した方が良いと判断し、「Innovative Brewer」のロゴを外すことにした。
■いろいろアイデアはある。でも、あくまでも「SORACHI1984」が基本
日本産ホップへの思いをより強く込めた2年目。飲み手に伝えるため、どのような展開を考えているのだろうか?
「良くも悪くもまだまだ認知度が低い。忘れられる前に知られていないと思い、昨年は認知度を上げるために全国の人が購入しやすいインターネット通販サイト『Amazon』限定で『SORACHI1984アソートセット』を販売しました。しかし、何でもかんでも新しい商品を発売していくのではなく、あくまでも『SORACHI1984』が基本。このビールを中心に色々アイデアを考えながらやっていきます」
現在も「Amazon」限定で販売中の「Innovative Brewer 日本産ホップ4種詰め合わせ」に入っている「伝説のホップ ソラチエース」のように、年に一度は上富良野産ソラチエース100 %のビールをつくりたい考えはある。しかし、まずは「SORACHI1984」を通じて日本産ホップへの関心をもってもらえる環境を築いていく。
リニューアル後も従来通りスーパーをはじめとする小売店と「Amazon」でのインターネット通販で販売される。変更点は、1箱24本入りから12本入りに。1パックも6缶から4缶にすることで、まとめて購入しやすい環境も整えた(※)。
※ 1缶ずつのバラ売りもあります。
最後に新井氏からビールファンにメッセージをもらった。
「いつも応援ありがとうございます。1984人のアンバサダーからも声をかけていただき感謝しています。いま、新型コロナウイルスの影響で、家で過ごす時間が長くなっている人が多くいらっしゃいます。家のなかで少しでも楽しい時間を過ごしてもらえるような企画も検討していきます。2年目も楽しいことを提案していきますので引き続きよろしくお願いします」
140年以にわたり、ビールの原料に向き合ってきた「サッポロビール」。ホップの香り成分をよりダイレクトに引き出すことができる独自のドライホッピング製法によりソラチエース特有のスギやヒノキ、レモングラスを思わせる香りと日本産ホップへの思いを感じながら「SORACHI1984」を楽しんでみてほしい。
★「ホップへのプライド」に込めた思いをまとめたムービーはこちらから
https://youtu.be/vpJtIRjkTrY
◆SORACH1984 商品概要
1.商品名:サッポロ SORACHI1984 2.品目:ビール 3.発売日・地域:2020年4月14日(火)・全国 4.パッケージ:350ML缶・樽10L(樽は2月上旬製造分から順次切替) 5.原材料名:麦芽(外国製造又は国内製造(5%未満))、ホップ ※ソラチエースホップ100%使用(米国産使用、上富良野産一部使用) 6.参考小売価格:350ML缶・250円(税抜)(樽はオープン価格) 7.アルコール分:5.5% 8.中味特長: ・独自のドライホッピング製法を採用 ・ビアスタイルはゴールデンエール ・伝説のホップ「ソラチエース」を100%使用 |
※2020.4.22 ムービーを追加しました
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。