「#ビールで明日を幸せに。SUPPORT YOUR LOCAL PUB & BREWERY」スタートから1ヶ月。活動を立ち上げた谷和氏に現状と課題を聞いた
2020年3月25日より本格的に活動をスタートさせた「#ビールで明日を幸せに。SUPPORT YOUR LOCAL PUB & BREWERY」。飲み手が自宅や小売店、飲食店など、自分の生活圏でクラフトビールを飲むことで業界をサポートするチャリティ活動です。開始直後から業界関係者、飲み手によりSNSに「#ビールで明日を幸せに。」をタグ付けした投稿がされています。
スタートから約1ヶ月。この活動の発起人となった大阪・梅田を中心にビアパブやブリューパブを展開している「株式会社CRAFT BEER BASE」の谷和氏に、改めて活動への思いと今後について話を聞いてみました。
★以前、紹介した記事はこちら
■外出が控えられるようになり、自社の運営で感じた業界崩壊への危機感
-:本日はよろしくお願いします。はじめに今一度、このチャリティ活動を立ち上げようと思った経緯を教えてください。
谷氏:きっかけは、新型コロナウィルスの感染を防止するために始まった外出規制です。私の経営する「株式会社CRAFT BEER BASE」は、小さいながらも醸造所、小売店、飲食店を経営していて、造り手、売り手、注ぎ手がいるビール業界の縮図のような会社です。すべてに関わることで、業界の素晴らしいところも問題点も社内で起こりうることとして捉えることができます。今回、この新型コロナウィルスの影響で、お客様の足が遠のいてきて樽詰ビールの消費が落ち込み、パブでの売り上げが下がりはじめました。そうすると、新しい樽を繋げなくなり、醸造所からビールが出荷できなくなって、在庫が溜まりビールを造ることもできなくなったのです。
-:お店で飲まれなくなったことで、生産から消費までの循環が悪くなってしまった……。
谷氏:はい。そうなると醸造スタッフの仕事がなくなります。パブでも人件費を削る話が出ます。「ビールを飲む」という日常が叶わなくなる。このままの状況が長引けば、当社で起こっていることが全世界規模で起こる。しかも、小さな醸造所ほど経営体力がなく、流れが少しでも滞ると存続が難しくなります。この危機を回避するためには「ビールを飲むこと」が必要だと実感したんです。
-:私も先日、アメリカ・ポートランドに在住の「オ州酒」レッドさんから向こうでも同様の状況によりクラフトビール業界が大ダメージを受けている話をお聞きしました。
谷氏:クラフトビールは造り手、売り手、注ぎ手、飲み手の距離がほかの商材よりも近く、一体感を感じられる素晴らしい世界観をもっています。私も自分の人生でクラフトビールを飲むということでストレスを緩和したり、楽しんだりしています。こんな素敵な業界がこのままではなくなってしまう。それは防ぎたい! この業界を未来につなげるために造り手、売り手、注ぎ手、飲み手、みんなが少しずつ意識をして支え合うことでこの危機を乗り越えたい。そのために全員で意識できるアイコンを作れば少しでも力になれるのではないかと思ったんです。
-:なるほど。
谷氏:直接的に言葉に出すことはなかなかないけれど、ちょっと目にしたり、SNSで拡散するときに使ったり、繋がったり、後押しできたりする。クラフトビール業界だからこそできるプロジェクトだと思って立ち上げました。
■クラフトビール業界の明るい未来を抱いてつくられたキャッチコピー
-:造り手から飲み手までが1つになって業界を支え合うことを意識できるアイコンとして「#ビールで明日を幸せに。」というキャッチコピーを設けました。この言葉は、どうやって生まれたのでしょうか。
谷氏:私が働く「CRAFT BEER BASE garden」の壁に描かれている、ある醸造家の言葉からです。この状況をどうにかしたいと考えているときにいつも目の前にこの言葉がありました。誰にもわかりやすく、ビール好きの皆さまと一緒に掲げる良い言葉だと思っています。
-:明るい未来につながる言葉だと思います。
谷氏:この企画を始めてから状況が刻一刻と変化しています。クラフトビールに従事する者として、お客様に「ビールで明日を幸せに」なっていただきたい。私たち自身はビールを造ること、販売することで明日を幸せに迎えたい。巡る言葉ですよね。
■1つに繋がろうという意志とさらに広げていくための課題を感じた1ヶ月
-:活動がスタートしてから1ヶ月になります。現在の状況を教えてください。
谷氏:皆さまのご支援をうけまして、SNSでもこのアイコンとハッシュタグを目にする機会が増えてきました。第1回目の企業様受付も終了してグッズの配布が始まっています。このアイコンをどこかで見たり、それこそ、日本ビアジャーナリスト協会に書いていただいた記事を読んだりして問い合わせてくれた醸造所やビアパブも多くありました。日を増すごとにアイコンやハッシュタグを目にします。グッズの配布やフライヤーもあり、これからもっと目にしていくのではと期待しています。
-:こちらも少しでもお役に立てたのなら嬉しいかぎりです。確かにSNSでも「#ビールで明日を幸せに。」を付けた投稿を見かけます。飲み手の応援する力を感じます。
谷氏:今までクラフトビールを親しんで飲んでいただいていた方々にはとても浸透が早いように思います。皆さんの気持ちは一緒なんだって勝手に思っています(笑)。とてもありがたいです。飲み手の方々や、醸造所、ビアパブと、いろいろなところで利用してもらい、共に繋がっていこうという気持ちがアイコンやハッシュタグを通して伝わってきます。やっぱりクラフトビール好きの方々には愛がありますね。
-:飲む側も「何か応援できることはないか?」と悩んでいる人が多いと思います。
谷氏:飲み手の活動のおかげで、造り手としても売り手としても励まされます。活動の意図を理解してくださっていることにとても感謝しています。
-:スタートして見えてきた課題はありますか?
谷氏:チャリティグッズをつくることでビアパブに行ったり、小売店、醸造所で利用できたりすることで微々たる金額ですが、参加者の売り上げに貢献したいと考えました。グッズの申し入れを参加の醸造所、ビアパブ、小売店に利益を出せる金額を設定して有償で企画しました。この活動は、チャリティでボランティアにより運営していますが、グッズのデザイン・作成・配送にどうしてもコストがかかってしまいます。今回の第1次募集では、その費用を参加費の中に含める形でご負担いただいていましたが、日本のクラフトビール業界を一体とするための企画なので、「有償ではなく無償の方が良いのではないか?」というご意見をいただきました。
-:活動に際して多少なりの金銭的負担は生じてしまいます。課題に対して、どのような解決策を考えていらっしゃいますか。
谷氏:このアイコンとハッシュタグをもっと広めていくためにも金銭的負担の最小化を図ろうと企画を練り直しています。例えば、フライヤーは作成せず、各ビアパブで必要に応じて印刷できるデザインデータをオンライン上でダウンロードできるようにするとか前回作成したバッジを省くなどコスト面の改善を考えています。いま、第2次募集に向けて内容や配送方法を変えようと思案中です。
-:大変な状況ですが、クラフトビールを愛する人たちが一丸となることで、業界の明るい未来にもつながると思います。最後にメッセージをお願いします。
谷氏:この新型コロナウィルスの影響は、今までに経験したことのない事態を引き起こしています。非常事態宣言が出ている大阪に住んでいる身として不安な気持ちは隠しきれません。安全に生きること。経済的にも生き抜いていくこと。様々な思いが交錯しています。いま、ビアパブとしては営業することもままならい状況です。醸造所もストップしています。でも、この企画の想いが伝わって広まることで、励まし合い、支え合い、いつかこのトンネルを抜けたときにもっと大きな力が付いていることを期待しています。「ビールを飲むこと」は、造り手や売り手の明日にも繋がることを少しだけ意識してもらえたら幸いです。いまはビアパブに行けなくとも、ご家庭でビールを楽しんでいただければ嬉しいです。今日、手にする1本のビールが繋がっていって醸造所で働く人の笑顔になります。クラフトビールには、みんなで1つになれる可能性を感じています。ビールで明日を幸せに。皆さんと笑いあって乾杯できる未来が1日でも早く訪れることを祈りながら活動を続けていきます。これを読んで賛同いただける方がいましたら力を貸してください。SNSのフォロー、「#ビールで明日を幸せに。」のタグ付け拡散もよろしくお願いします。
◆#ビールで明日を幸せに。SUPPORT YOUR LOCAL PUB & BREWERY
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