【ビールのある風景in岩手⑦】岩手県沿岸発の「三陸ビール」 ~「人と人、人と自然をつなぐビールを」クラフトビールを通じて、自然豊かな三陸の魅力を発信~
2011年3月に発生した東日本大震災の大津波で甚大な被害が生じた岩手県の沿岸部。あれから9年あまりが過ぎ、もちろんまだまだこれからの部分や問題点も残されていますが、復興は着実に進み、新しい賑わいも生まれています。
沿岸南部の一帯は、リアス式の入り組んだ複雑な海岸線と水深の深い入り江が多数見られ、黒潮の恵みも受けて海産物の宝庫となっています。また、キノコや山菜、渓流で捕れる川魚などの山の幸にも恵まれています。県の内陸に比べるとやや温暖な気候なので、本来ならば温暖な地域で作られるゆずの生産も行われています。
岩手県の内陸部には全国的に有名になったブルワリーもあり、新しいブルワリーも誕生し、人口規模に比べかなりビール文化が豊かだと感じます。しかし、沿岸部では、スーパーなどで県内のブルワリーの瓶ビール・缶ビールを見かけることはあっても、樽生で味わえる機会は少なく、またその地域独自のビールを見かけることもほとんどありませんでした。
ところがある日、沿岸の道の駅「さんりく」(大船渡市)で、「三陸ビール」が売られているのを見かけました。貴重な三陸発のビールのことが知りたくて、三陸ブルーイングカンパニー合同会社の代表、南忠佑さんにお話をうかがわせていただきました。
三陸ブルーイングカンパニー合同会社は2018年6月に設立され、昨年秋から瓶ビールの販売も開始しています。
【画像提供:三陸ブルーイングカンパニー】
三陸ビールは三陸地域の素材を副原料にしたクラフトビールです。定番ビールの「週末のうみねこ」は小麦を使った白ビール。苦み控えめ、すっきりフルーティな仕上がりになっています。ぜひグラスに注いでゆっくりお楽しみください。お食事に合わせやすいビールです。
【画像提供:三陸ブルーイングカンパニー】
<三陸の素材を副原料としてビールに生かそうと思ったわけ>
・結婚をきっかけに妻の実家の大船渡を訪れるようになり、そのたびにリアス式の地形が広がる三陸の渓流でフライフィッシングと山歩きを楽しむようになりました。生い茂る野草、動物の痕跡、そして渓流魚。都会では味わえない三陸の自然に魅了されていきました。
・昔から山登りやキャンプなど、アウトドアをライフワークとしており、日本各地の名峰をはじめ、ヒマラヤでの登山経験もあり。そのような経験の中で、アウトドアで飲むビールが最高だと思っています。自然豊かな三陸、最高のアウトドアフィールドで美味しいクラフトビールを飲みたいと考えるようになりました。
・一方で、東日本大震災は三陸地域に甚大な被害をもたらしました。津波の被害についてテレビ等を通して衝撃的な記憶として残っているものの、その後、瓦礫がなくなり、かさ上げが行われた土地に新たな住まい、商い、賑わいも生まれつつある状況はあまり伝わっていないと感じていました。新しい三陸、復興の姿も伝えていく必要があるのではないかと感じてきました。
・もともとビールが好きで、いつかブルワリーを立ち上げたいという思いがありました。
三陸発のクラフトビールを通じて、人と自然、人と人、三陸と都市を繋ぐことで、情報発信による認知度の向上、地域資源の活用、さらには交流人口の増加などの点で貢献できるのではないかと考えるようになりました。
三陸ビールは、シェアードブルワリーをはじめ、全国各地の醸造所に委託して造られています。レシピ通りに醸造をお願いすることもあれば、定番ビールをアレンジしてもらってコラボビールとしてリリースする場合もあります。5月下旬に「伊達女IPA」(MARCA)が発売されています。このあとも順次瓶での展開があり、今月上旬に「恋するセゾン」(日本ビール醸造)、中旬に「伊達男IPA」(フジヤマハンターズビール)が登場予定です。*( )内は製造元
個性的なネーミングは奥様のアイデアのことが多いそうです。
【画像提供:三陸ブルーイングカンパニー】
地元でビールを提供する機会を大切にしたいということで、お祭りやマルシェではプラカップでも提供されるという三陸ビール。今はなかなか人の集まるイベントも遠出も難しいので直営オンラインストアで購入し、そしていつか、新しく復興していく三陸の姿を目にしつつ、現地で三陸ビールを味わっていただけると嬉しいです。
【画像提供:三陸ブルーイングカンパニー】
三陸ブルーイング・カンパニー合同会社
岩手県大船渡市大船渡町地ノ森24番6
オンラインショップ
https://sanriku-beer.stores.jp/
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。