【ビールのある風景in岩手㉓】~週2回の量り売りテイクアウト営業で味わうビール~ 奥州市の315BEER
ちょうど1年前の今日、かなり雪が積もった道を歩いて私が初めて訪れたブルワリーがあります。その後も、1~2か月に1回の割合で訪問し、タイミングを見計らってここを紹介したいとずっと思ってきました。
水沢駅からブルワリーへ向かう道(2020年12月撮影) ちなみに今年はまだ雪がありません…
そのブルワリーの名前は「315BEER」。岩手県奥州市水沢地区にあります。
岩手県奥州市について
岩手県の内陸南部に位置しする奥州市は人口11万人あまり。人口は、県庁所在地の盛岡市に次いで県内第2位です。2006年に水沢市・江刺市、前沢町・胆沢町・衣川村が合併して誕生したこともあり、総面積は約990平方キロメートルと広大で、東京都の2分の1弱の広さがあります。(それでも県内では、宮古市、一関市に次いで第3位の面積です…)
地域の中央を北上川が流れており地域全域が緑のあふれる豊かな自然に恵まれており、稲作を中心とした複合型農業により県内屈指の農業地帯になっています。
奥州市出身者の中で今一番の有名人は、やはりMLBロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平選手でしょう。東北本線の水沢駅前には大きな掲示がありますし、あちらこちらで応援ポスターも見かけます。
水沢駅前(2021年11月撮影)
東北新幹線に水沢江刺駅はありますが、古くから商業を中心として発展してきたのは、車で15分ほど離れた前述した水沢駅周辺になります。その水沢駅から徒歩10分弱のところにあるのが、今回ご紹介する315BEERです。
315BEERとは
315BEERは、地元水沢出身の岩淵俊さんが、2020年4月に醸造免許を取得し6月に醸造を開始したブルワリーです。岩淵さんは、現在まで製造・販売をひとりで担っていらっしゃいます。
ちなみに、315BEERは”サイコービール”と読みます。「サイコー」と聞くと、最高、再考、再興などいろいろな意味が思い浮かびますが、店名の由来はご自身の誕生日だそうです。
(2021年10月撮影)
最初はイベント出店で販売を広げる予定が催しが、このご時世で軒並み中止に。また、元々はビアバーを始めたかったとのことで、この1年の間には、DIYで少しづつ店内にBARスペースが造られていく様子が見られた時期もありました。
でも、小さいお子さんがいらっしゃるという家庭事情などもあり、現在まで基本的に週2日(金・土いずれも午後)の量り売りのみでの提供を続けています。
(2021年5月撮影)
(2021年7月撮影)
ビールは入れ替えしながらの提供。最近は4種類のビールの中から選べることが多く、100mlで160円〜180円(商品によって変化)です。その日提供されているビールの詳細は店内の表示にもありますが、持ち帰ることが出来るような用紙も準備されているのが嬉しいです。
(2021年10月撮影)
炭酸可能なマイボトルを持参するのがベストですが、グラウラーのレンタル(容器保証料3000円が必要)も可能です。レンタルを利用する場合は、数に限りがあるため事前に確認して予約しておくのが望ましいとのこと。またオリジナルグラウラーの販売をしていることもあるので、気になる方は購入を考えてみるのもいいかと思います。
お店の近くには桜の名所として名高い水沢公園があり、四季を通じて市民の憩いの場として親しまれています。季節と天候によってはテイクアウトしたビールをここで飲むのもいいかもしれませんね。(ただし公園利用のルールがある場合には必ず従うようにお願いします…)
水沢公園の桜(2020年4月撮影)
また、どうしてもテイクアウトの時間の調整がつかなかったり、テイクアウトではなくお店で飲みたいという場合には、1種類にはなってしまうものの、近隣の飲食店数店舗には樽の納入も行っているとのことです。
315BEERの魅力と今後
県庁所在地がある盛岡駅から水沢駅までは、同じ岩手県内と言っても東北本線での所用時間は1時間あまり。車で東北自動車道を利用しても、同じぐらいの時間がかかってしまいます。
それだけの時間をかけても、私はなぜ1年間テイクアウトに通ってきたのか…その都度少しづつ変化していく様子を自分の目で見たかったこと、ずっと量り売りでのテイクアウトのみという販売方法を続けていることに興味を持ったことも確かですが、何よりここで造られているビールの味に惹かれたからです。
まずは、一番直近にテイクアウトしたビールをご紹介したいと思います。
After Hours
初のSingle HOP IPA。
ニュージーランド産HOPモトゥエイカを贅沢に使用し、南半球産ホップらしい、トロピカルでライムなレモン感が溢れています!
315BEER史上、最も苦みの少ない仕上がりはまるでネクタージュース!
スルスル飲めて、数時間後が心配です…
STYLE:Hazy IPA
HOP:Motueca
Alc. 5.5%
IBU. 12.1
EBC. 9.8
続いて、今年度IR東日本が企画したIWATE BEERとして造られたビールです。(IWATE BEERについてはこちらもご参照ください。)
Gold Breathe
SMaSH(Single Malt and Single Hopの略。1種類の麦芽、1種類のホップを使用)製法で造った、シンプルなゴールデンエール。
岩手県産ホップ「IBUKI」の特徴をわかりやすく伝えたいと思い、クラフトビールに馴染みのない方でもスッキリと飲みやすい、ゴールデンエールをチョイス。
草原のような青々とした豊かな香りを目一杯吸い込んで、「今」を感じちゃいましょう!
STYLE:Golden Ale
HOP:IBUKI
Alc. 5.5%
IBU. 17.6
EBC. 9.1
今までビールスタイルとしては5種類程度、30種類以上のレシピで仕込んできたとのこと。その中には、使用するホップをブレンドしたビールや、ここで紹介したものよりIBUが少し高め(30以上)だったり濃色な色合いのビールもあります。
スタイルやそれぞれの味わいは異なるのでやや乱暴ですが、315BEERの全体的な印象をまとめると、副原料を工夫して楽しむビールとは対照的で、「ホップの種類やブレンドによる味や香り、そしてその違いを楽しめるビール」と言えると思います。いい意味でけっこうまじめで、しっかりとした美味しさがあり、クラフトビールの初心者からいろいろと味わってきた方まで、いろいろな方に「飲んでみて」とお勧めしやすい味わいです。
もちろん開栓しないことが前提ですが、不思議なことにテイクアウトしてから数日しても、味の劣化をあまり感じずに美味しく飲めるとも私は感じています。(もちろんお店としては、2~3日中に飲むことをお勧めしています。)
そして「お酒は楽しく飲むのが一番です!」(2021年11月撮影)
最近はマイクロブルワリーでも瓶や缶の販売に取り組んでいるところも多くなっていますが、315BEERでは「まだ造ることに一生懸命で考えられない」とのこと。またビアバーとしての営業も「家族の都合もあるので」と、当面時期は未定のようです。
週2日のテイクアウトだけではもったいないと思いますが、1年間ここに通っているうちに、こんな感じの先を急がないブルワリーがあってもいいような気もしてきました。
、
今の315BEERにBARスペースが出来あがったり、どこか別の場所に直営店が出来たときには、また改めて紹介させていただきます。それまでは量り売りのテイクアウトを利用しながら、その日が来るのを気長に楽しみに待ちたいと思います。
これを読んでいただいた皆さまも、機会を作って是非一度訪問してみてくださいね!
315BEERを口にした全ての人にサイコーなひとときを!
◎315BEER
岩手県奥州市水沢袋町6-26
080-3338-9362
https://www.facebook.com/saikobeer/
E-mail:315saikobeer@gmail.com
*テイクアウト販売時間
金曜日 16:00~19:00
土曜日 15:00~18:00
(他の曜日・時間については要問合せ)
<参考>遠方からの交通手段
東北新幹線(水沢駅まで)
・水沢江刺駅から車で約15分
・北上駅下車、東北本線で約15分(3駅)
・一ノ関駅下車、東北本線で約25分(5駅)
・盛岡駅下車、東北本線で約1時間10分
東北自動車道
・水沢ICまたは奥州スマートICから車で約15分
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。