続報!醤油樽熟成ビール「Shoyu the Way」
2021年12月14日に発行された当協会の記事
“醤油樽で熟成させたビール「Off Trail #19 Shoyu the Way」2021年12⽉23⽇(⽊)発売
https://www.jbja.jp/archives/38181
において、その個性的で挑戦的なビールの紹介をさせて頂きました。
(ビアジャーナリスト: こぐねえ執筆)
そこで紹介されたビールは、伊勢で素晴らしいビールを紡ぎ続ける伊勢角屋麦酒と、山梨県小菅村で個性的なビールを次々に生み出すFar Yeast Brewingのコラボレーションビール。
筆者もとても興味がありながら飲みそびれていた”Shoyu the Way”
先日、そのビールを飲めるだけでなく、考え抜かれたペアリング(Far Yeast Tokyo Brewery & Grill 料理長 富田浩嗣さん)と関わったブルワー(伊勢角屋麦酒 Brew Master 出口善一さん、Far Yeast Brewing 醸造長 栁井拓哉さん)によるトークセッションが開催されると聞き、一人のビールファンとして参加してきました。
目次
醤油樽、歴史と場所を超えて
今回の取り組み、その中心にあるモノは『醤油樽』に他なりません。その醤油樽は、伊勢角屋麦酒を事業展開する、天正年間(1575年)創業の二軒茶屋餅本店の味噌・醤油醸造部門からFar Yeast Brewingに提供されたモノ。
きっかけは、ある京都での会談時に伊勢角屋麦酒の鈴木社長からFar Yeast Brewingの山田社長に醤油の空樽があるという情報が伝わったことだそう。その後、本当に使い込まれた醤油樽が贈られてきた時には、栁井さんの醸造チームもどんなビールができるのかワクワクしたとのこと。
ちょっとしたきっかけで、歴史を飛び越え場所を飛び越え繋がっていくのは、まさにクラフトビール業界ならではですね。
醤油樽で醸したビールの真相
贈られてきた醤油樽は70Lくらいの大きさの物が全部で5本。先ずは、かなり古い樽を水で膨らませてきっちり漏れないように下拵え。
この樽にビールを入れて熟成させれば出来上がり!という訳ではないのです。
実は単体でも美味しそうなビールを三種類ブレンドして作られています。
1種類目 ※唯一醤油樽で熟成
醤油樽に入る権利を見事射止めたのは、既に赤ワイン樽で5ヶ月熟成されていたサワーポーター。醤油樽に38日漬け込んだ後、再度赤ワイン樽で3ヶ月熟成したビール。
2種類目
赤ワイン樽で8ヶ月熟成した後、バーボン樽で8ヶ月熟成されていたサワーレッドエール。
3種類目
赤ワインと日本酒樽で21ヶ月熟成されていたKiwi Kaiju のベースビール、ポーター。
※他にも数種類の副原料を使っています。
これらを両社で納得できる割合をテイスティングにより導き出し、ブレンドして出来上がったのが、”Shoyu the Way”なのです。
そのネーミングにはこんな意味が込められているそう。
Show you と醤油をかけた、いわゆる親父ギャグですね。Show you the Way.と同音です。
意味はShow you ですので、直訳すると
(I’ll )Show you the Way. 道を見せてやるよ(教えてやるよ)
という意味となります。
「どうやってやるの? How to do it?」「こうやるんだよOK. I’ll show you the way.」
というようなニュアンス。
つまりは「醤油のビールってなんなの?」「これが醤油のビールだぜ!」という意味なんです。
ブレンダーのリチャードのダジャレ的な発案に満場一致で決まりました。
(栁井さん談)
開宴! “SHOYU THE WAY” BEER ペアリングイベント
前置きが長くなりましたが、いよいよペアリングイベントについてのレポート。
ペアリングイベント自体は2回開催されましたが、筆者はFar Yeast Tokyo Brewery & Grillで開催された2回目のイベントに参加しています。
コロナ禍の中、対策が施された会場は満席で、参加者は皆ワクワクして待っているような緊張感が伝わってきます。
テーブルに用意されていたのは、三種類のビールとそれぞれにペアリングされた三種類のフード。勿論、”Shoyu the Way”はその中の一つ。ペアリングフードはFar Yeast Tokyo Brewery & Grillの料理長、富田さんの力作。
栁井さんと出口さんの漫才感あるトークを聞きながら、ペアリングを楽しませて頂きました。
1st ペアリング
🍺Off Trail Shoyu the Way
Brewery: Far Yeast Brewing × 伊勢角屋麦酒
Style: Barrel Aged Sour
ABV: 8%
👨🍳寒ブリの棒寿司
醤油やバルサミコっぽい味わいは、生魚にぴったり。脂の乗ったブリの旨味を引き立たせる。バレルエイジドによるふくよかで円やかな旨味は、ブリの旨味との相乗効果で分厚い味わいを作り出す。そして、サワーらしい酸っぱみは脂の抜けの良さと、華やいだ彩りを添える。棒寿司に忍ばされたなますの甘味と食感が全体を引き締める。主役らしい素晴らしいペアリング。
2nd ペアリング
🍺Far Yeast Hop Frontier Juicy IPA
Brewery: Far Yeast Brewing
Style: New England IPA
ABV: 6.5%
👨🍳カキフライ ~ペアリングタルタルで~
これは一度頂いたことのあるペアリング。
瑞々しく華やかで爽快なフルーティーさは、付け合わせのレモンのようにカキフライの油をスッキリと味わわせてくれる。ホップ由来の苦味はカキの旨味をさらに持ち上げ、後味も引き締めてくれる。単体でも十分満足感のある飲み口ながら、程よくドライで食事を邪魔せず引き立ててもくれる仕上がりに唸らされる。
3rd ペアリング
🍺Pale Ale
Brewery: 伊勢角屋麦酒
Style: American Pale Ale
ABV: 5%
👨🍳チリビーンズのブルスケッタ
伊勢角屋麦酒の顔でもある伊勢ぺ。
柑橘のしっかりした味わいは、濃厚なチリビーンズのメキシカンテイストにジャストフィット。甘味と苦味がバランスよく効いたボディはフードにも負けていない。ついつい手を進めてしまう間違いないペアリング。
少量ずつでしたが、どのペアリングもお互いが引き立て合い、それぞれの味わいを楽しみつつ、ストレスなく頂ける素晴らしい組み合わせでした。
特に、主役のペアリングは圧巻。いっそのこと、棒寿司のお酢を”Shoyu the Way”にしちゃうのもアリなんじゃないかと思うくらい、お似合いのペアリングに感動を覚えました。
醤油樽が紡ぐモノ
今回のイベントでは、ペアリングとトークセッションの後に、ブルワーを囲んで二次会的な懇親会が催されました。
各テーブルでブルワーに意見や質問を活発に投げ掛ける人、頷きながらおかわりビールを楽しむ人、参加者同士で感想を話し合う人、皆、笑顔、笑顔、笑顔。その笑顔が印象に残っています。
挑戦的なビールは不安も同居するものですが、皆の表情から満足感が伝わってきました。実際に筆者が話した人からも「醤油のアロマが面白い」「酸味のバランスが絶妙」「複雑な味わいが良くまとまってる」「和食にとても良く合いそう」等々好意的な反応が多くありました。
2つのブルワリーのファンやクラフトビールのファン、ブルワーの栁井さんや出口さんのファン、色々な方が集まっていた筈ですが、短い時間で皆が仲間のようになっていたのは、”Shoyu the Way”やペアリングの素晴らしさだけでなく、挑戦に対する期待、敬意、そして感謝があったからではないでしょうか。
醤油樽から始まった2つのブルワリーのプロジェクトは、今回のビールで一旦打ち止めのようですが、また新たな出会いから紡がれる新たな挑戦を期待せずにいられないのは筆者だけではないでしょう。
このような機会を作ってくださった関係者の皆様、ありがとうございました。
次回も楽しみにしています。
商品概要
商品名: Off Trail #19 Shoyu the Way(オフ・トレイル #19 ショーユー・ザ・ウェイ)
品⽬:ビール
原材料:⻨芽 (外国製造)、ホップ、⼤⻨、オーツ⻨、糖類、⾹⾟料
アルコール度:8.0%
スタイル : Blend of Sour Porters and Sour Red Ales aged in Wine and Shoyu Barrels
醸造所: Far Yeast Brewing 源流醸造所(⼭梨県⼩菅村)
仕様:750ml瓶、330ml瓶、10L樽
希望⼩売価格:オープン価格
⚠️直営Web Store販売分は完売です。
買えるお店・飲めるお店リストをご確認お願いします。
Off Trailとは
『Off Trail』は、Far Yeast Brewingの2大ブランド『馨和 KAGUA』『Far Yeast』に続く取り組みとして2019年11月に誕生した、クラフトビールの新たな可能性にチャレンジするブランドです。「しっかりと舗装された道路」から一線を画し“Off Trail”=「舗装されていない道」を突き進むイメージから命名されました。ビール酵母以外の微生物を活かすことによりリッチで複雑な香りを生成するために、ワインや日本酒、ウイスキーに使われた樽でビールを熟成させるバレルエイジングの手法によってビールを造っています。ベースとなるビールの個性に合わせて、ぶどうや桃といった季節のフルーツ、地域の特産品をブレンドすることでユニークなフレーバーに挑戦しています。
最近では、2021年2月に発売した『Kriek in the Barrel』が、10月28日に発表となったビールのコンペティション「Asia Beer Championship 2021」で金賞を受賞。国際的にも高い評価を得ています。
伊勢角屋麦酒について
1575年(天正3年)伊勢神宮を目指す船着場の横に、二軒茶屋餅という参拝客に向けた餅屋として創業。大正時代から続く味噌醤油醸造を背景に、1997年より「伊勢から世界へ」をスローガンにクラフトビールブランド伊勢角屋麦酒を立ち上げました。国内外の品評会で数多く受賞し、ビール界のオスカー賞と言われる最も歴史ある英国IBA (The InternationalBrewing Awards)で2017年・2019年・2021年と日本初3大会連続でゴールドメダルを受賞。さらに、2021年にはTrophy Awardも併せて受賞しました。
Far Yeast Brewing について
“ Democratizing beer ”-「産業化によって画⼀的な⼤量⽣産商品になってしまったビールの多様性と豊かさをもう⼀度取り戻す」というミッションのもとに展開。和の馨るエール「馨和 KAGUA」、東京Tokyo をテーマにした「Far Yeast」、そして、イノベーティブなビール造りに挑戦する「Off Trail」という3つのクラフトビールブランドを展開しており、個性あふれるビールを世界へ向けて発信しています。
WEB:https://faryeast.com/
Far Yeast Tokyo Brewery & Grill について
住所:東京都品川区西五反田1-15-6
営業時間:平日11:30~15:00, 17:00~23:00 土日11:30~23:00
※2022年1月23日現在
新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。
定休日:無休
座席数:最大105席(店内75席 テラス席30席)
※当面は座席数を減らして営業
Instagramはこちら→https://www.instagram.com/faryeasttokyo/
本件に関するお問い合わせ先
Far Yeast Brewing 株式会社
Mail︓info@faryeast.com
電話︓050-3135-3926
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。