【前略 好みなんて聞いてないぜSORRY】 ニーズを無視して生まれた名勝負4選!
目次
ヤッホーブルーイング【前略 好みなんて聞いてないぜSORRY】
既存のビアスタイルやヒットした味わいなど、消費者のニーズに応えるではなく、ブルワーの想いと自由な発想が詰まったビール、ヤッホーブルーイング【前略 好みなんて聞いてないぜSORRY】。
これまでにリリースした4種類の【前略 好みなんて聞いてないぜSORRY】シリーズには、以下の2つの特徴があるという。
1.ユニークで尖ったビールであること。
2.「和」の素材を使っていること。よなよなエール公式ウェブサイト「よなよなの里」より
「自らの造りたいビールを造る。」
おそらく、すべてのブルワーが持っている気持ちだろう。
そして、その気持ちは私のようなライターも同じだ。
ビールと格闘技のペアリングなど、世間から求められている内容ではない。
しかし、私はビールと格闘技の相性が抜群であることを知っているし伝えたい。
だから今回もしばしお付き合い願いたい。
今回のテーマはズバリ【前略 好みなんて聞いてないぜSORRY】。
ファイターがファンや運営側の「ニーズを無視して生まれた名勝負4選」を紹介しよう。
其の一【米麹SAKE仕立て ストロングエール】
記念すべき1作目は、長野県産酒米の麹を使った【米麹SAKE仕立て ストロングエール】。
フルーティーな吟醸香と強いうまみは、どこか日本酒のようでもある。
多くのファンを持つ【前略 好なんて聞いてないぜSORRY】シリーズが誕生した歴史的なビール。
桜庭和志VS.ホイス・グレイシー(2000年5月1日 東京ドーム)
『PRIDE GP 2000』の2回戦で実現したファン待望の一戦で、ホイス・グレイシー(以下、ホイス)陣営から出された要望に私は目を疑った。
・1R15分の無制限ラウンド
・判定決着なし
・レフェリーストップなし
ホイス陣営は運営側の事情を一切無視して、トーナメントの中でこの試合だけの特別ルールの“完全決着ルール”を望んだ。
結果、死闘は90分にも及び、6R終了後にホイス陣営はタオルを投入する。
絶対に負けを認めないグレイシー一族が負けを認めた歴史的瞬間である。
其の二【うま味一番だしアロマ仕立て ホワイトIPA】
2作目は【うま味一番だしアロマ仕立て ホワイトIPA】。
「とにかく良い香りのするビール」を造るために、日本人に慣れ親しんだ「かつお節」をふんだんに使い、一番だし製法にてうまみを抽出している。
「かつお節」を使用するというユニーク発想から、きっちり本格ホワイトIPAに仕上げている「流石はヤッホーブルーイング」といったビールだ。
山本“KID”徳郁VS.宮田和幸(2006年5月3日 国立代々木競技場第一体育館)
レスリングでシドニーオリンピックを目指していた山本“KID”徳郁(以下、KID)と、レスリングでシドニーオリンピックに出場した宮田和幸(以下、宮田)によるMMAの一戦。
レスリングで上回る相手にKIDがどう闘うのか、KIDのパンチと宮田のタックルのどちらが主導権を握るのかが注目された。
結果、試合時間わずか4秒。KIDの飛び膝蹴り一発で決着する。
試合開始直後に大技を仕掛ける選手はいるが、きっちり一発で決めるKIDはやはり流石だ。
其の三【黒五インペリアルポーター~黒糖極深仕立て~】
3作目は【黒五インペリアルポーター~黒糖極深仕立て~】。
「食後に楽しめるような甘くてコクのあるポーター」を目指し、黒五(黒米・黒豆・黒ゴマ・黒松の実・黒加倫)と黒糖を使用したインペリアル・ポーターだ。
もし、あなたが“飲むスイーツ”と称される【黒五インペリアルポーター~黒糖極深仕立て~】を飲む機会に恵まれたなら、これまで飲んだビールとは違った衝撃を味わうだろう。
ブランコ・シカティックVS.アーネスト・ホースト(1993年4月30日 国立代々木競技場第一体育館)
「空手、キックボクシング、カンフー、拳法など、頭文字に“K”のつく格闘技の世界王者を集めて世界一を決める」というコンセプトでスタートしたのが『K-1』だ。
第1回大会とした開催された「K-1 GRAND PRIX 93」は、アメリカやヨーロッパで最強と呼ばれていたモーリス・スミス(以下、スミス)やピーター・アーツ(以下、アーツ)など世界中の猛者に、日本の佐竹雅昭(以下、佐竹)が立ち向かう構図だ。
しかし、決勝に駒を進めたのは、アーツ、スミスの2人の優勝候補を倒したアーネスト・ホースト(以下、ホースト)と、佐竹を含め全試合KOで勝ち上がってきたブランコ・シカティック(以下、シカティック)という当時無名の2人だった。
シカティックの右ストレートでホーストが立ったまま失神する姿は、格闘技ファンのみならず大きな衝撃を与えた。
其の四【セッション柚子エール~あら塩仕立て~】
4作目は【セッション柚子エール~あら塩仕立て~】。
和の柑橘の代表格である柚子の果皮を、海のにがりを豊富に含んだあら塩に漬込んだ。
そうすることで柚子の香りを最大限引き出すことに成功している。
発酵後、無濾過にて缶に充填されているので、より柚子の爽やかな香りが際立っている。
ストレス社会と呼ばれる中で、晴れ晴れとした気持ちになれる爽快なビールだ。
長島☆自演乙☆雄一郎VS.青木真也(2010年12月31日 さいたまスーパーアリーナ)
K-1日本王者の長島☆自演乙☆雄一郎(以下、長島)と、MMAトップファイターの青木真也(以下、青木)の一戦は、1R3分間はキックボクシングルール(フリーノックダウン制)、2R5分間はMMAルール、判定はなく、2Rで決着が付かない場合はドローとなる特別MIXルール。
「長島は1Rで青木を仕留めきれるのか?寝業師の青木がキックボクシングルールでどんな試合をするのか?」
2Rになれば青木の独壇場となることは明白で、ファンの注目が集中した1R、青木は長島やファンの期待を一切無視した試合を展開する。
リング上を逃げ回り、ドロップキックを繰り返してはゆっくりと時間をかけて立ち上がる。
ブーイングもなんのその。ルールの盲点をついた試合運びで、青木は長島の打撃には一切付き合うことなく3分間逃げ切った。
1Rが終了してなんともいえない空気に包まれた会場は、この数分後、割れんばかりの大歓声に包まれる。
2R開始と同時にタックルに入った青木の顔面へ長島の膝蹴り一閃。
崩れ落ちた青木に長島が追撃すると、たまらずレフェリーが割って入り、長島がTKO勝利を飾ったのだ。
1Rの内容にストレスを感じたファンにとって、なんと爽快な結末だろう。
いかがだろうか。
「ニーズを無視した結果、生まれた名勝負4選」お楽しみいただけただろうか。
4つ目に挙げた青木は、以前、対談で「(格闘技では)余分な力を使わず、一切リスクのない試合をしたい。だからエンターテイメントを求める人には、結構つまらないかも。」と語っている。
しかし、世界中の誰もが認めるトップファイターとなったのだから、まさに「前略 好なんて聞いてないぜSORRY」という考えの結果だろう。
同時に「記憶であれ何であれ、何かが残るということが大事」とも語る青木は、自身のベストバウトの1つとして長島との試合を挙げている。
ビールも格闘技も、ファンのニーズに寄せるより、己を貫くことでその期待値を上回ってほしい。
そう願うファンは私だけではないはずだ。
最後に、世間のニーズを無視したこのような企画に対して、快く画像提供いただけた株式会社ヤッホーブルーイングに感謝しつつ、今日も美味いビールをいただきます!
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。