【検証&提案】「納豆」と合うビアスタイル3選+α!!
フードペアリングインストラクターとして、ずっと気になっていた問いがある。
果たして「納豆」とペアリングするビールはあるのか?ということだ。
納豆はそのままはもちろん、生卵と混ぜたりとご飯のお供としてバリエーションが豊富で、それらを応用して様々なアレンジ料理が存在する。
油揚げではさみ揚げにしたり、ポテトサラダにしたものも私は好きだ。
しかし、その強力な香りも含め、嗜好品であるお酒とのペアリングをわざわざ考えて味わおうという方はあまりいないのではないであろうか?
目次
■納豆の香りは「オフフレーバー」の例えにもなっている
例えばビールの世界では、納豆の香りはオフフレーバーの一つである「イソヴァレリアン酸(イソ吉草酸)」の香りの例えに用いられる。オフフレーバーとは一定以上含まれるとビールに不快な香味を付与し、飲み進みづらくしてしまう香気成分の総称で、上記の成分は熱によるビールの劣化や古いホップの使用、ドライホッピングしたビールの劣化、製造工程等でビールがバクテリアなどに汚染されてしまった際に発生し、「腐敗臭」とも呼ばれる。
つまりは納豆とビールを合わせるということは、意図的に傷んだ風味をつけることにもなり得るし、特にビールの味わいが繊細なほど良さをマスキングしてしまうことになりかねないのだ。
■「ウォッシュチーズ」とワインのマリアージュも存在する
では、「納豆」とビールのペアリングは叶わないのか、、?
私はそんなことはないと思っている。
例えば、同じく「納豆のような」香りを持つ「ウォッシュチーズ」といわれる分類のチーズをご存じだろうか?外皮(表面)を塩水などで洗いながら熟成させるタイプで、その工程により表面に増殖した「リネンス菌」といった菌類により上記のような香りが付与される。この類のチーズは単体ではもちろん、ワインや蒸留酒とのマリアージュも存在し、ウォッシュチーズの代表格である「マンステール」とライチに例えられる甘やかな香りを持つ「ゲヴェルツトラミネール」品種を使った白ワインの組み合わせは特に有名である。
ここをヒントにしたら、、どうだろう?ビールでも良いペアリングがありそうだ。
■ヴァイツェン・ヘイジーIPA・バーレーワインとの組み合わせ
実際に様々なビールと合わせてみた結果、相性が良いと感じたのは以下の3つのスタイルだった。
●「ヴァイツェン」などバナナ・クローヴに例えられる香りを持つビール
納豆に負けない香りの強さはもちろん、しばしば共に使用される醤油と共有の香気成分「オイゲノール」がヴァイツェンには比較的多く含まれているため、それを仲介にまとまりが生まれる。
ペアリング例)いかオクラ納豆(イカそうめんとおクラ、ひきわり納豆を混ぜて。鰹節とともに)
●「ヘイジーIPA」など非常にジューシーなビール
上述の「ゲヴェルツトラミネール」との組み合わせがヒント。強力な香りには同じく力強いジューシーな香りでがっつりスクラムを組むイメージで。とろりとした口当たりも納豆の独特の粘りと食感が同調しやすいという点もある。
ペアリング例)アボカド納豆のマヨチーズ焼き(醤油やマヨネーズで軽く混ぜ合わせ、チーズをかけてオーブンへ)
●「バーレーワイン」など濃厚・複雑なビール
長期熟成由来のスパイシー・ナッツ、ドライフルーツといった複雑な香りが、納豆の菌臭さや土っぽさと同調する。実際、「ゲヴェルツトラミネール」と「マンステール」を食べ合わせる際に現地ではしばしば「クミンシード(カレーなどに使われる香辛料)」を添えられる。バーレーワインなどの濃厚な味わいはもちろん、黒ビールの強いロースト香も納豆のネガティブな部分を打ち消しやすく、炭酸ガスが強くないタイプは食感的にも違和感がない。
ペアリング例)ネギ納豆の巾着焼き(ネギと一緒に油揚げで包んで。味噌や醤油風味をつけるとより◎)
ちなみに、同じく(良い意味での)菌臭さやブレタノマイセス属による漬物臭をしばしば伴う「ランビック」とも合わせてみたが、こちらは納豆の食感との違いや、これらの風味が逆に強くなりすぎて個人的には合わないと感じた。
また、どうしても口に残る粘り気が気になる場合は、納豆を軽く水洗いしてから調理することでより口内でペアリングしやすくなる。
ぜひ納豆ラヴァーの皆様は、後の予定がない夜の晩酌にねばねばと癖になるようなペアリングを楽しんでみてほしい。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。