[コラム,ブルワー]2022.6.21

自分のビールに妥協せず、常に向上心を持って追求する【Beerに惹かれたものたち18人目 アンドビール安藤祐理子さん】

東京・高円寺。

阿佐ヶ谷方面に中央線の高架下を歩いていくとあるのがアンドビールの醸造所です。すぐ近くにはパブもあり、自社で造っているビールとカレーを味わうことができます。ここでビールを醸造しているのがオーナーブルワーである安藤祐理子さん。

2018年2月5日に醸造免許が交付されてから4年。2019年には醸造所を拡張するため、現在の場所に移転。さらに山梨県で第2醸造所を準備中と、益々の活躍が期待される安藤さん。今回はブルワーとして大事にしていることを聞いてみました。

「飲みたい」ではなく、醸造の科学的な部分に惹かれてはじめた

京都出身の安藤さん。大阪の大学を卒業後は、上京してIT関連の仕事に就きます。ビールとは関係のない世界で活躍していましたが、実家がパン屋や親戚が飲食店を経営していたこともあり、「昔から自営の活気ある感じや自立している感じに興味がありました」と転職を考えるようになります。

ちょうどその頃、高円寺麦酒工房に出会います。来店して、ビールを飲んだ安藤さんは、「ビールって、こんなに身近で造ることができるんだ」とビール醸造に関心をもちます。「その足で『ビールの造り方を教えてください』って言いましたね」。色々とビール醸造について聞いた安藤さん。元々、料理をすることや大学で化学を専攻していてビール醸造の科学的な部分に惹かれてブルワーになることを決意します。

その後は、自分で勉強をしながら醸造研修を受け入れているブルワリーで学び、現在、パブのある場所にブリューパブをオープンします。

ビール醸造の仕組みに惹かれてブルワーなった安藤さんですが、「昔から最初から最後までビールです」。飲む方でもビール愛に満ちた人なのだ。

自分のビールに真摯に向き合って、品質を向上させる探求心をもつ

ビール醸造を始めて4年。安藤さんにブルワーを仕事にして良かったことを聞いてみました。

「ビールを介して私を知ってもらえることでしょうか。自分のお店やほかの場所でアンドビールを飲んでもらうことで自分の存在を知ってもらえる機会がつくれたのは良かったと思います。他の世界では、なかなか体験できないところじゃないですかね」

アルコール度数の高いビールや苦味の強いビールが好みという安藤さん。ビールを通じて人間性を表現できるのが良いと話します。「逆に他のブルワーさんのビールを飲んで『こんなところがビールに出ているなぁ』って思えるのもブルワーを仕事にして良かったところですね」と笑顔で話します。

造ったビールを通じて自分を表現する。安藤さんの話を聞いていて、ビールは芸術品だと思いました。

ビールを介して自分を表現する安藤さん。ブルワーとして大事にしていることは何でしょうか。

「日々、良くなるように改善していく向上心をもつことです。私たちは、ただビールを造って販売するのではありません。品質の良い美味しいビールを造り、飲んでくれた人を喜ばせなければいけません」

常に自分が造るビールに妥協をしないでレベルを高める必要があるといいます。そのために何か疑問に思うことがあれば調べ、必要があればブルワー仲間に意見を求めて改善点を探し出して品質を向上させています。

時間が経つにつれて惰性的になることはないのかを聞いてみると、「追い求めることは楽しいですよ」とビール醸造への探求心は尽きることはなさそうです。

自身のブルワー論を話す安藤さん。ビールを介して自己表現する話は興味深かった。

1人でやる仕事に見えるけど多くの人達との繋がりでやる仕事

自分のビールに真摯に向き合う姿勢が大事。しかし、決して1人でやる仕事ではないといいます。

「醸造技術はブルワーとして必要な能力の一部分でしかないと思っています。ビール醸造自体は1人でも行えますが、造ったビールの販売や仕入れなど多くの人の力が必要です。実はブルワーという仕事は、多くの人と関りをもたないと成り立たない職業です。特別なコミュニケーション能力は必要ありませんが、相手のことを考えて物事を進めたり、自分の考えをきちんと伝えたりできることは重要な能力です」

熟成中のビールをチェックする安藤さん。醸造工程だけなら1人で行うことも可能だが、ブルワリー業務は原料の調達や販売など多くの人の協力がないとうまくいかないという。

オーナーブルワーである安藤さん。夫婦で始めたブリューパブ事業も今では多くのスタッフとともに仕事をしています。醸造部門や飲食店部門を運営していくためにはスタッフとの連携は欠かせません。「コミュニケーションを取りながらスタッフの成長を促し、事業をどのように発展させていくのかを常に考えている」と話します。

現在、アンドビールは、山梨県にバレルエイジドビール中心のブルワリーを建設中です。今後は高円寺と山梨と離れた拠点で活動をしていくため、今まで以上にスタッフとの連携が重要になってきます。

ブルワーとして。経営者として。アンドビールのビールを通じて、どのような表現をみせてくれるのでしょうか。話を聞いていて期待が膨らんでいきました。

これからも安藤さんの活躍が楽しみです。

山梨でバレルエイジドビールを造ることにしたのはアメリカのブルワリー体験から。じっくりと向き合うバレルエイジビールの世界観に興味をもったという。

★アンドビールでは醸造全般を担当するスタッフを募集しています。下のバナーをクリックすると募集ページに移ります。

ビアQ

アンドビール Data

住所:東京都杉並区高円寺北4-2-24 アールリエット高円寺A棟105

電話:080-5913-8241

営業時間:月・水・木・金 11:30~15:00(L.O 14:30).17:00〜22:00(L.O.21:30) 土・日・祝

11:30~22:00(L.O.21:30)

定休日:火(祝日除く)

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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【メディア出演】
<TV>
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●テレビ神奈川「News Link」
<ラジオ>
●TBSラジオ「鈴木聖奈LIFE LAB~○○のおじ様たち~」
●JAPAN FM NETWORK系列「OH!HAPPY MORNING」
<雑誌>
●週刊プレイボーイ(2019年2月11日号、2020年12月28日号、2022年12月12日号、2023年10月9日号) ●DIME(2019年4月号)●GetNavi(2020年2月号) ●週刊朝日(2020年6月12日増大号)●食楽(2020 SUMMER No,116)●週刊大衆(2021年4月19日号、2021年7月12日号、2022年6月20日号)●BRUTUS(944号 2021年8月15日号)●東京人(no.463 2023年3月号)●BRUTUS特別編集 増補改訂版 クラフトビールを語らおう!
<Web>
SUUMOジャーナル ●みんなのランキング ●この秋新しい恋をスタートしたいあなたに贈る!ビール恋愛心理学 ●初心者にも!プロがおすすめする絶品クラフトビール&ビアグラス ●プロの逸品 ●SORACHIの集い
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