それは柔らかい泡となめらかな喉越しで自分を癒すビールです【ビール誕生秘話18本目 「瓶のビール(酵母のピルスナー)」編】
Soup Stock Tokyoのオリジナルビール「瓶のビール(酵母のピルスナー)(以下、瓶のビール)」の発売から6年。2022年6月13日にリニューアル発売されました。今回のリニューアルで、どんな風に変わったのか。商品開発を担当したスマイルズ クリエイティブ本部デザイナーの北山瑠美さんに話を聞きました。
目次
自分たちがこだわった商品たち。でも、ビールだけは違った。
リニューアルと言っても「瓶のビール」をご存じではない方もいると思います。どんな経緯から誕生したビールなのかをお伝えします。
始まりは北山さんが入社直後に当時の上司から言われた「Soup Stock Tokyoの改善点を見つけて自分で仕事をつくってみて」です。
指示を受けて、当時の全店舗を巡って改善点を探しに出た北山さん。そこであることに気づきます。「Soup Stock Tokyoは、提供メニューだけではなく、スプーンや器や空間などすべてにこだわりをもって提供しています。しかし、なぜかビールだけは他社メーカーのビールでした」
「商品や食器、店舗デザインもこだわりをもっている。だったらビールも自分たちで考えた商品をつくりましょう」と会社に改善点を提案します。その後、会社からもGOサインが出てプロジェクトがスタートし、2年の歳月を経て2016年6月に「瓶のビール」が発売されました。
味ではなくブランドイメージを伝えて造られた新「瓶のビール」
そこから6年。今回のリニューアルでは中味とラベルデザインを変更。醸造はベアードブルーイングが担当しています。
ベアードブルーイングをパートナーに選んだ決め手は何だったのでしょうか。
「品質の良い美味しいビールを造っているのはもちろんですが、会社の理念や『素材のすばらしさを引き出す』価値観にお互いが共感できたことです」
共感できる部分が多かったこともあり、出会いからビールが完成するまではあっという間に進んでいきます。
普段はデザインを担当している北山さん。新しい「瓶のビール」を造るにあたり、醸造責任者のブライアン・ベアードさんには具体的な味ではなくイメージを伝えたといいます。
「ピルスナースタイルにしようというのは決めていたので、伝えたのは仕事帰りの女性が1人で食事をしながら楽しめる『瓶のビール』の世界観と、どんなスープやカレーにも合わせられるようにしてほしいとお願いしました」
Soup Stock Tokyoは、様々なスープやカレーを提供しています。この話を聞いて難易度の高い要求だと思いましたが、ブライアンさんは「ハッピーなビールに仕上げるよ」と返答。一発で北山さんがイメージするビールを完成させます。
そして、もう1つの変更点のラベル。今回は北山さん自身がデザインしています。ラベルにどんな思いを込めたのでしょうか。
「『瓶のビール』には、ついついクルクル小躍りしてしまうような美味しいビールというコンセプトのようなものがあります。今回のラベルには、踊っている女性を中心に里山を描きました。これはコロナ禍で帰郷ができない、旅行にいけないといった閉塞感を感じている方に向けて日本の原風景を感じてもらえたらと思いデザインしました」
コロナ禍や世界情勢の不安定さ。気持ちが塞ぎがちな日常に、ラベルに描かれているどこか懐かしい風景を眺めながら飲むことでリフレッシュしてほしい思いが込められています。
華やかな香りとライトな苦味とボディで、ビールが苦手な人でも楽しめる味
北山さんの話を汲み取りブライアンさんが造ったのはドイツスタイルのピルスナー。最大の特長は香りです。
「瓶のビール」のために特別にブレンドした数種類のホップを使用。ドライホッピング製法によりソフトで優しい花やフルーツを思わせるアロマを引き出しています。
一方、苦味は控えめでボディも軽くすることで、「ビールが苦手な方にも楽しんでもらえる味」ということです。
また発酵は、ベアードブルーイングで採用している瓶内二次発酵を採用。これは瓶詰めの際に酵母と少量の糖分を入れることで瓶の中で発酵が進み、自然発生した炭酸ガスがビールに溶け込む製法です。自然発生した炭酸ガスにより柔らかな泡と滑らかな喉越しが楽しめます。
「温度の変化でも感じる香りや風味が違ってくるので、ゆっくりと飲んで変化を味わってほしいです」と時間をかけて楽しむのがおすすめです。
一推しペアリングは酸味の効いたスープ
商品数が多いSoup Stock Tokyo。「瓶のビール」はどのメニューにも合うというので取材後に近くの店舗によって試してみました。
この日、試してみたのは、「東京ボルシチ」と「海老のフレンチカレー」。どちらもビールと調和して食べやすく、「東京ボルシチ」はレモンを効かせて合わせるとマイルドに感じました。ビールが穏やかな味わいなので、あっさりしたスープやカレーとも合わせやすいと思います。Soup Stock Tokyoファンの方なら色々試してみたくなるのではないでしょうか。
北山さんの一推しのメニューも教えてもらいました。
「私自身、色々好きな組み合わせがあって1つに絞るのが難しいですね。強いて挙げるなら酸味の効いたアジアのスープでしょうか」と、酸味とホップ由来の柑橘を感じさせるフレーバーとの相性が良かったと教えてくれました。
2022年6月14日現在、販売方法は店内提供のみです。店舗ではビール単品の購入も可能で、営業時間中に飲むことができます。休日ランチと一緒に楽しむのも良いと思います。
となると近くに店舗がない人は楽しめないのでしょうか。
「オンラインショップや物販店で販売をする構想があります。実現するのを楽しみにしていてください」
今後の展開に期待しましょう。
将来的には、ピルスナースタイル以外のビールも開発して楽しみの幅を広げられるようにしたいと北山さん。利用する側からすれば、その時の気分で飲むビールを変えることができるのは嬉しいです。Soup Stock Tokyoでは、スープではなくカレーをメインに楽しむ「Curry Stock Tokyo」の企画(2022年は7月4日~8月26日まで開催)もありますから「Beer Stock Tokyo」という企画があっても面白いと思います。
「瓶のビール」は未来にどんな物語をみせてくれるのでしょうか。夢が膨らみます。
Special Thanks 森下慶
瓶のビール(酵母のピルスナー)商品概要
品目:非加熱処理生ビール
容量:330ml瓶
アルコール度数:5.0%
発売日:2022年6月13日(月)
商品価格(税込):単品680円/セット+580円
取扱店舗:Soup Stock Tokyo全店(※店内提供のみ、家で食べるスープストックトーキョーは除く)
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。