2022年11月24日(木)手軽にバレルのフレーバーが付けられるウッドチップビールが味わえるイベントを都内で開催
世界では多く造られているバレルエイジドビール(樽熟成ビール)。日本でも造るブルワリーが増えてきています。その魅力の1つに木樽の香りをビールに付与して複雑な香りが楽しめるところにあります。しかし、バレルエイジドビールは木樽を置くのでスペースの確保が必要です。そのため、建物が小さいブルワリーでは本格的に行うのが難しい現状があります。
そんなスペースの問題を解決して、手軽に木樽のエッセンスを隠し味にも個性にも使用できて、ブルワーのニーズに応える手段の1つになるのがウッドチップビールです。今回、Sake Experience Japan株式会社(以下、SEJ)が都内で説明会とお披露目会を開催するというので、ウッドチップを取り上げながら魅力をお伝えします。
ベースビールに浸けるだけで木樽の香りが付く!
ウッドチップビール。その魅力をSEJの井谷さんは次のように話します。
「味わいの面ではビールでは他の原料からは感じることができないナチュラルなオーキーフレーバー(オーク樽の香り)が楽しめます。また、オーキーだけではなく、バニラの香りやフルーティーさなど同じフレンチオークでも焼き加減を変えると全く異なる味わいの表現が可能になるのが魅力です」
ウッドチップビールは、一般的にベースとなるビールの主発酵後を貯酒タンクに移し替えたタイミングでウッドチップを浸け込み香りを付けていきます。浸けた後は、数日でウッドのニュアンスが表れきて、10日~2週間程度でフレーバーをしっかり楽しめます。
ベースビールのビアスタイルも決まりはなく、「ピルスナーやラガータイプからベルジャンタイプなど、各ビールの個性をそのままに複雑性や余韻を付与したり、フルーティーさを付与したりすることで飲みやすさが増すことが期待されます。また、ランビックでも樽を使うブルワーもいますので、ランビックも相性がいいのではと考えています」とウッドチップビールの可能性を話します。
「ウッドチップも含めた樽材は、木の種類や育った環境ももちろん重要ですが、「実はシーズニングと呼ばれる乾燥工程が非常に大きな影響を与えます」と井谷さんは言います。数年かけて樽材を乾燥させる過程で雨や湿度、微生物の影響を受けることで、その製樽会社固有の特徴になります。
オーク系やチェリー、そしてパタゴニア産のレンガなどバリエーション豊かなウッドチップを用意
SEJが取り扱うウッドチップは、チリに唯一ある製樽会社TN Coopersのもの。TN Coopersでは、フレンチオークやアメリカンオーク、ヨーロピアンオークの木樽を主に使用しています。特に特許技術であった(近年特許有効の期限切れ)コンベクションと呼ばれる対流熱を使ったトーストで知られていて、極めて再現性が高く、狙った焼き加減を得ることができる技術を持っている会社です。この技術が世界中の顧客から信頼され、愛されている品質を支える基盤となっています。
現在、SEJではオーク系ではフレンチ、アメリカンを焼き違いそれぞれ3種類ずつ、それ以外ではチェリー、アカシア、そして、チリのパタゴニア原産のレンガという特殊な木を取り扱っています。
使用する目安量は3~5g/L。1回の仕込みが500Lの場合は約2.5㎏必要です。しかし、「日本では、やや多めの使用量が一般的です。約1%の約5㎏が良いかもしれません」。
チップはオーク系と非オーク系で全くフレーバーやアロマが異なり、焼き加減でも全く異なると言います。選択の多さも「ブルワーの皆様の知的好奇心をくすぐる素材になると確信しています」と井谷さん。さらにオークチップやその他の素材のチップを使用して、多くの人が出会ったことのない味わいのビールを造り、ビールの楽しさを広げてほしいと語ります。
同じ木でも焼き加減を変えることで様々なフレーバーを付与することができるのは魅力的ですね。しかも大きなスペースを必要としないで木樽の香りを楽しむビールを造ることが可能になります。木樽を置くことが難しいブルワリーにとってメリットがあるのではないでしょうか。
ウッドチップビールの魅力を体験できるイベントを11月24日に開催
魅力やメリットがあると言っても、実際にどんなものなのか分からないと使ってみたり、飲んでみたり興味がわきにくいと思います。SEJでは2022年11月24日(木)に東京のさかづきBrewingでブルワー向けの説明会とウッドチップビールと料理を楽しむ会を開催します。
説明会ではウッドチップの実物を見て説明を聞けるほか、先行して使用して醸造を行った4つのブルワリーのビールを試飲することができます。
試飲ビールは以下の通り。
1.クリフビール(沖縄) イングリッシュスペシャルビター(アメリカンオーク)
2.さかづきBrewing(東京) 木蓮(レンガ使用)
3.DD4D BREWING(愛媛) Wood Aged Double Sour Ale(フレンチオーク使用)
4.Y.MARKET BREWING(愛知) Wood- and Barrel-Aged Beer(チェリー使用)
ウッドチップビールの可能性について3人のブルワーに話を聞きました。
「最大の魅力は、通常何年も掛かるバレルエイジングのようなキャラクターを超短時間で付けることが出来ることではないかと思っています」(Y.MARKET BREWINGの加地真人さん)
「同じ樽素材で比較した訳ではないので一概に言えませんが、長期間のバレルエイジによる良い意味での予測不能な風味の醸成とは違い、ウッドチップは短時間で狙った木の風味をつけることができます。樽への移送もないので比較的手軽に木の風味をつけることができますし、木樽と比べて省スペースです。ビールのスタイルや副原料だけでなく、『そこにどんな木のチップを使うか』『トースト温度をどうするか』という変化を加えることで、ビールの味わいや楽しみ方を大きく広げることができるのはないかと思います」(DD4D BREWINGの山之内圭太さん)
「木でしか付与できない風味の中に、香気成分によるアロマやフレーバーだけでなく、タンニンがビールに移行することで味に締まりを与えて酒質のバランスを整えているところも着目すべき点だと思いました」(さかづきBrewing金山尚子さん)
説明会後のウッドチップビールと料理を楽しむ会はでは、それぞれのウッドチップビールに合う料理を味わいながらブルワーによる説明を聞いたり、交流したりできます。一度に異なるブルワリーが醸造したウッドチップビールが飲める体験ができる機会は滅多にありません。興味のある方は参加してみてください。
◆ウッドチップビール説明会 概要(ブルワー対象)
日時:2022年11月24日(木)14時~16時
場所:さかづきBrewing 東京都足立区千住1-20-11
参加費:3000円(税込み)
定員:30名
参加方法:Peatix申し込み(申し込み締め切り:開始直前までエントリー可)
◆ウッドチップビールお披露目会 概要(一般対象)
日時:2022年11月24日(木)18:00~20:30 ※18:00開場/18:30開演
場所:さかづきBrewing (同上)
定員:30名(申し込み先着順となります)
参加費:6,500円(税込み)
内容:コース料理に合わせてビールを試飲の他、ウッドチップビールを醸造したブルワリーのトークセッションを開催。
参加方法:Peatixから申し込み
<キャンセルについて>
Peatixでキャンセル手続きを確認して対応してください。
注意事項:飲酒を伴うイベントです。参加にあたっては公共交通機関をご利用ください。妊産婦、未成年の参加は固くお断りします。また会場内の待機もできません。会の進行を妨げる行為があった場合、主催者より制止や退室を申し付けることがあります。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。