[コラム]2022.12.29

Beer&Life Style Fashion編 ビールとツイードジャケットのペアリング

ビールのペアリングはフードだけではない。
どんな装い=ファッションで、どんなビールを飲むか……。
それが「ビールとファッションのペアリング」だ。

IVY、渋カジなんてのが青春だった世代には懐かしく、若い世代には新発見になる連載企画。
第7回目は【ビールとツイードジャケット】のペアリングだ。

【1月上旬】ツイードジャケットとスコティッシュエール&スコッチーエール

ツイードとは?

ツイードとは何か?
よく「素敵なツイードのジャケットですねぇ」なんて言っているが、ツイードとは何か?
きっちりと説明できるか……? すみません。ちょっとあやしいのである。

ということで調べました。
すると、「ツイードとは、太く短い羊毛を紡いだウール糸で織られ、表面の織り目が粗くはっきりしている生地」とのことだ。

それに対し、「表面がフエルト状で滑らかになったものは、メルトンやフランネルと呼ばれ、ブレザーやコートなどに使われる生地」とあった。
なるほど、ちょっと賢くなった。苦笑

ツイードで最も有名なのはハリス・ツイードだ。
イギリスのスコットランドにあるハリス島を含む119の島々からなるアウター・ヘブリディーズ諸島産のツイードである。
ハリスツイード協会の基準を満たした物のみに認められ、王家の宝玉(宝珠)のマークが入った商標が付いている。

ツイードの発祥はスコットランドボーダー地方と言われているが、今ではハリスツイードがブランド化し有名だ。ハリス以外にも良いツイード製品はあるので自分に合ったものを探したい。

​​ツイードジャケットとは?

ツイードは表面が粗いので、素朴で野趣に富む。
また、毛糸が太く密なため暖かく丈夫だ。
このような特質から、屋外でアクティブに行動する際に着用する「スポーツジャケット」と呼ばれる上着に使われた。

今、「スポーツ」といえば様々な種目を思い浮かべるのだが、19世紀のイギリスの貴族階級にとって「スポーツ=乗馬+ハンティング」だった。
つまり、「スポーツジャケット=馬に乗って狩猟するための上着」だったのである。
そのため、ツイードジャケットには、射撃の際につく肘や銃床があたる肩の部分に革のパッチがあったり、寒さをしのぐために襟を立てて留めるタブやチンストラップが付いた物がある。

元々はアウトドアでのスポーツウェアに使われていた。乗馬やハンティングや釣りなどに適したデザインだ。

ツイードジャケット1:ガンクラブチェック柄

そのような歴史的背景から、最もツイードジャケットっぽい物は【ガンクラブチェック柄のノーフォークジャケット】と言い切りたい。
ノーフォークジャケットとは、イギリスのノーフォーク地方発祥説と、ノーフォーク公が着用したからという2説があるが、1860年代にエドワード7世が主催していたスポーツサークルで流行ったことから一般的になった。

ノーフォークジャケット最大の特徴は、ウエストにあるベルトだ。
射とめた小動物を吊るすためと言われているが、前身頃をしっかりと閉めておくと防寒効果が高まるのでありがたい。
ガンクラブチェックはハンターに人気があるチェックで、2色以上のハウンドトゥース(千鳥格子)で織り成され、迷彩効果もある。

今の時代に、ノーフォークジャケットで馬に乗りハンティングに出かけるというのも現実的ではないので、自転車に乗る時に着用したい。スチールやアルミ製の馬に跨り、素敵な風景をスマホでシューティングしよう。

2009年にロンドンで始まり世界に広がった「ツイードラン」に参加してみるのも一興だ。ツイードを着て自転車でツーリングするというイベントで、過去には東京や名古屋で開催されている。

自転車は現在の乗馬と言って良いかも。長いネクタイはヒラヒラしたり垂れ下がったりするので蝶ネクタイのほうが機能的である。裾はチャップスでカバーしたい。

ツイードジャケット2:ヘリンボーン柄

ガンクラブチェックやノーフォークジャケットは「ちょっとデコラティブすぎるなぁ……」という場合は、【ヘリンボーン柄】を選びたい。
ヘリンボーンはV字が連なった柄で、ニシンの骨という意味である。日本では杉綾(すぎあや)と呼ばれている。
ツイードの基本とも言える柄であり、1着あればとても便利なアイテムだ。
インナーにニットを着ればコートもいらない。

初めてツイードジャケットを買うという方にはヘリンボーン柄をおすすめしたい。上品にもカジュアルにも着こなせる。

ツイードジャケット3:ウインドペン柄

ツイードは都会的ではない。と思っている方、あなたは大きな損をしている。
ツイードは柄やデザイン次第で都会的にも着こなせる。

明るい色や大きめの【ウインドペン柄】を選び、光沢のあるシルクシャツ(それも襟元の詰まったタブカラーやピンホールカラー)に紋章入りのロイヤルレジメンタルタイを合わせると効果的だ。
ロンドン紳士のように傘を極細に巻き上げ、ウエリントンスタイルのメガネフレームをかけ、レザーのPCケースを小脇に抱え、チャーチのウイングチップを履けば完成である。

ツイードはカントリー風で野暮ったいとお考えの方にはウインドペン柄を着てみてほしい。シャツやネクタイの選び方で都会的な雰囲気を醸し出すことができる。

女性の着こなしはダイアン・キートン風で

女性のツイードといえば、襟の無いシャネルスーツを思い浮かべる方が多いと思う。
バブル時代の流行が一部で再燃しているとはいえ、一歩間違えると「参観日のお母さん」になってしまう可能性が高い。

そんな時に参考にしたいのが、映画「アニー・ホール」で見せた女優ダイアン・キートンの着こなしである。
1977年にウッディ・アレンが脚本・監督をし、アカデミー賞4部門を受賞した名作の衣装は、主演のダイアン・キートン自身の私服とダイアン・キートンが自ら選んだラルフ・ローレン社の物で賄ったという。

男物のジャケットを羽織り、太めのタイを締め、ボストンフレームのメガネをかけた姿は凛とした可愛らしさがある。
アニー・ホールの着こなしは、今でも参考になると思うのでお試しいただきたい。

メンズのジャケットや古着を上手く着こなす女性は「ファッション上級者」と言える。ツイードのカントリー風ジャケットもベルトやパンツのサイズ感で街っぽく着こなせる。

スコットランド生まれのツイードとビール

ツイードといえば、イギリス、それもスコットランドが本場だ。
となれば、やはり合わせるビールはイギリス、それもスコットランド発祥が気分である。

スコットランドという地名を聞いて頭に浮かぶビールは【スコティッシュエール】と【スコッチエール】だ。この2つは混同しがちだが、かなり違ったビールである。いちばんの違いはアルコール度数。

ブルワーズ・アソシエーションのビア・スタイルガイドラインによると以下の通りである。

・スコティッシュエール 2.8%~5.3%(注1
・スコッチエール 6.6~8.5%(注2

(注1:スコティッシュエールには、アルコール度数の弱いものから Light 2.8〜3.5% 、Heavy 3.5〜4.1%、 Export 4.1〜5.3% という3つのカテゴリーがある。
(注2:スコッチエールはウィヘビーとも呼ばれる。

どちらも、モルトの甘味がしっかりとしたビールで、ホップのキャラクターは微量または全く感じないレベルだ。
スコティッシュスタイル・ライトエールのボディはやや軽めだが、ヘヴィーやエクスポートはミディアムからミディアムフル。スコッチエールに至っては、どっしりとしたフルボディが魅力のビールである。
銘柄によってはスモーキー、ピーティーといったニュアンスもあり、スコットランドの風景が目に浮かぶ味わいだ。

スコットランドで紡がれたツイードのジャケットに身を包み、モルティーなスコットランドのビールを飲めば、「スコットランドに比べれば、日本の冬の寒さなんてたいしたことないんだろうなぁ」と感じるに違いない。

那須高原ビール醸造所

1996年創業の老舗ブルワリー。日本初の「ワールドビアカップ3大会連続受賞」をはじめ、各ビアコンペでの受賞歴は多数で書ききれない。
人気の定番ビールや季節限定ビールに加え、ナインテイルドフォックスという長期熟成型ヴィンテージビールが1998年から毎年発売され続けているのも素晴らしい。ちなみに賞味期限は25年。

ラベルには太陽と月と道化師と大鷹が王冠のイメージで描かれている。

銘柄:那須高原ビール・スコティッシュエール
ビアスタイル:スコティッシュエール
醸造所:那須高原ビール醸造所
アルコール度数:5%

藤原ヒロユキ テイスティングレポート

モルトの香ばしいフレーバーとスッキリした甘味を感じるが、ホップの苦味が効果的に使われていてバランスが良い。アルコール度数が5%なので喉通りも良くスイスイ飲める。ドリンカビリティも高く何杯も飲めるビールだ。

ベアードブルーイング

2001年、沼津港の目の前でブライアン・ベアード氏とその妻さゆりさんが始めた小さな醸造所は、拡張を重ね修善寺の大きな醸造所に成長した。
タップルームやキャンプ場も併設されていて素晴らしいロケーションである。2010年のワールドビアカップで3部門において金賞を受賞するという快挙を含め、各ビアコンペでの受賞歴は多数。

ベアードビールのラベルは全て木版画のテイストで描かれている。

銘柄:やばいやばいストロングスコッチエール
ビアスタイル:スコッチエール
醸造所:ベアードブルーイング
アルコール度数:8%

藤原ヒロユキ テイスティングレポート

芳醇なモルトのアロマと甘味が心地よい。ボディもしっかりしていてリッチな飲みごたえ。アルコール度数8%だが、上品な甘味があるのでキツさを感じずクイクイ飲める。そこが「やばいやばい」という名前がつけられた理由に違いない。笑

では、また季節が変わる頃に、、、

*第1回【ビールとボーダーシャツ】は、こちらで。
*第2回【ビールとベスト】は、こちらで。
*第3回【ビールとジャンパー】はこちらで。
*第4回【ビールとセーター】その1はこちらで。
*第5回【ビールとセーター】その2はこちらで。
*第6回【ビールとマウンテンパーカー】はこちらで。

Beer&Life Styleツイードジャケットファッションペアリングベアードブルーイング藤原ヒロユキ那須高原ビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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