「造り手を知ると、ビールの楽しみが増える」新潟で醸造所開設に奔走するGangiBrewing綿貫卓人
クラフトビールの魅力のひとつに、つくりて(醸造家)の個性がビールに色濃く反映される面白さがあります。
「醸造所の名前を聞くと、醸造家の顔が浮かぶ」という、クラフトビール好きの方も少なくないのではないでしょうか?
本日は、まだ聞き馴染みのないGangiBrewingという醸造所から、『綿貫卓人』という若手ブルワーを紹介します。
目次
Gangi Brewing(ガンギブリューイング)綿貫卓人とは
GangiBrewing。実はこの醸造所は、まだ稼働していません(2023年5月現在)。
新潟県上越市で、今まさに産声をあげようとしている最中です。その立ち上げに奔走する醸造家が、綿貫卓人さん。
https://camp-fire.jp/projects/view/656375
綿貫さんは、新潟県上越市育ち。野球やアイスホッケーなどスポーツ三昧の子ども時代を過ごし、大学進学を機に上京します。
東京で就職するも、音楽に関わる仕事をしていたお父さんの縁で地元に戻り、ライブバーの店長を5年間務めました。
その後、飲食業とは関係のない仕事につきますが、エンターテイメント(音楽)を通して地元を盛り上げるお父さんの背中を見続けてきた影響もあって一念発起。
『醸造家になって地元にブルワリーをつくる』という人生の夢を抱きます。
「なぜビールだったのか?」そう尋ねると、
「ビールは人生の喜怒哀楽どんなシーンにも寄り添える飲み物だから」と答えてくれました。
もともと他のお酒よりビールが好きだったわけではなく、ヒューガルデンをきっかけに、香りや味の多様性を知り、クラフトビールに興味を持ったのだとか。
「ヒトと違うことがしたい!」「入口~出口まで、仕事の全体に関われるような職業が向いている。」「居場所をつくる人間になれたら!」と、自分の性格や叶えたいことを挙げだす中で、おぼろげながら進む道が見えはじめました。
地元ではビール醸造が学べない。修行先を求めて、浜松へ
進みたい道は定まりましたが、醸造所・醸造家の数が現在とは比較にならないほど少なかった為、地元では修行先を見つけることが出来なかった綿貫さん。
ビール醸造が学べる修行先を探す中、研修生として受け入れを検討してくれたのが、静岡県浜松市にあるオクタゴンブリューイングでした。
本場ドイツでディプロム・ブラウマイスターという資格を持つ千葉恭広さんのもとでビールづくりを学べるチャンスを得て、単身浜松市に移住します。
生計を立てるため、浜松市の飲食店でアルバイトもはじめました。
ビールの醸造家の中には、修行をはじめて1年以内で独立する人もいますが、「千葉さんのもとで知識と経験を積み重ねたい」と、昼は醸造・夜は飲食店という修行生活を続けます。
修行中は、ビールの味を覚えるために様々な醸造所のクラフトビールを飲んだと言います。
ビールフェスなどのイベント出店や、各地の醸造所巡り、オリジナルビール開発や、学んだ知識を他のスタッフに伝えるアウトプットも積極的に行いました。
修行と並行して、地元での株式会社設立や助成金申請準備を進め、ついに2023年新潟県上越市での醸造所開設が本格化します。
修行の地、浜松の恩師2人から応援メッセージ
Octagon Brewing 醸造責任者:千葉恭広さん
綿貫君にはサポート業務だけでなく、研修期間中に繰り返しオリジナルビール醸造にチャレンジしてもらいました。
ビール造りの全工程を一人で醸造させたのは、自分で何かを生み出すという経験をして欲しかったからです。
決められた作業を行うだけでは学び得ない経験は、今後自分で立ち上げる醸造所においても必ず役に立つと信じています。
綿貫君のブルワーとしての適性は、醸造所を清潔に保つ努力が出来るところ、感性や勘だけでなく裏付けとなるデータを几帳面につけ、保管しているところ、情報収集も怠らず、研修期間で良いビール・悪いビールの見極めも出来るようになったと思います。
醸造所立ち上げは資金的に非常に苦しいと思いますが、きちんとしたビール造りを続けていってくれれば、注目の新規醸造所になれるはずです。
・Octagon Brewing WEBサイト https://octagonbrewing.com/
34DINER(サンシーダイナー)代表:山﨑浩さん
静岡県浜松市にある店舗のアルバイト募集に、新潟から電話をかけてきたのが綿貫との出会いです。
話を聞いてみたら「醸造所をつくるための修行がしたい!」という、気合の入った目標を持って浜松に来ると言うので、応援の気持ちを込めて採用しました。
真っ直ぐで忍耐強く、マーケティング知識もあり、しっかりとお客様と向き合うことが出来る人間です。体育会系でオトコ臭く、少しガサツな面もありますが(笑)
綿貫は、まだまだ若くて未熟ですが、大きな野望を持って人生を歩んでいます。
浜松と上越との縁をどんどんと拡げて、やっと実現する夢を存分に楽しんで欲しいものです。
・34DINER WEBサイト https://34diner.owst.jp/
『つなぐ』をテーマに、2023年夏の醸造所オープンを目指して
現在も、上越市と浜松市を行き来しながら、醸造所の準備を進めている綿貫さん。
新潟に醸造所が完成するまでは、オクタゴンブリューイングの設備を借りてビールづくりを行っています。
先にコメントのあったお2人について、
「千葉さんは尊敬するビールの師匠。根っことなる理論を掘り下げ、美味しいビールに向き合う土台をつくってくれました。」
「コーさん(山﨑浩さん)は、浜松での父親代わり。接客の姿勢など衝突する場面も多かったが、自分という人間を否定せず応援し続けてくれるかけがえのない存在です。」
と、綿貫さんは言います。
醸造所開設にあたって掲げる『つなぐ』というテーマには、上越と浜松を繋ぐ想いも込められている気がしました。
GangiBrewingが完成したら、つくりたいのは、オフフレーバーのない、香りや味わいをじっくり楽しめるビール。
オクタゴンブリューイングでの修業時代に、レシピを考え抜いた『トラッド』という名前のビターにも改めてチャレンジしたいと話します。
「新潟の自然を活かし、地産地消だけではなく、県外にも発信できる醸造規模のブルワリーを目指しています。」
と、力強く宣言してくれました。
醸造所が出来上がり、オリジナルのビールが上越から全国へとつながる日が待ち遠しいです。
■CAMPFIREにて5/10より醸造所開設に向けたクラウドファンディングを実施
https://camp-fire.jp/projects/view/656375
■GangiBrewingインスタグラム
https://www.instagram.com/gangibrewing/
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。