飯田商事株式会社 濱本竜さんが考える日本オリジナルのビアスタイルとは?日本オリジナルのビアスタイルを探る旅Vol.19
ゲストを招いて日本オリジナルのビアスタイルの可能性を探るオンラインイベント「日本オリジナルのビアスタイルを探る旅」。2024年1月は、これまで多くのゲストを招く中で、CRAFT BEER BASEの谷和さんが日本オリジナルのビアスタイルとして可能性を強く感じている「麹ビール」について焦点を当てる。ゲストは酒類関連企業とのシナジーにより、酒造りを包括的にサポートする飯田商事株式会社の濱本竜さんを招いて開催した。
目次
CRAFT BEER BASEは麹ビールを造ろうと思ったのか
「はじめから麹ビールありきで造ったわけではありませんでした」
イベントの冒頭、谷さんはこう切り出した。
CRAFT BEER BASEの酒類醸造免許はビール免許ではなく発泡酒免許である。はじめは「麹ビール」を造りたくて使用したのではなく、発泡酒として対応するために少量の麹を使用したのがはじまりだ。そのうちに「どうせなら麹を生かした商品を造りたい」と思うようになり、次第に麹に可能性を感じるようになっていった。
「可能性を感じながらも最初は明確なテーマがありませんでした。『日本オリジナルのビアスタイルを探る旅』を開催して、ゲストの話を聞いていく中で『日本の発酵文化の要でもある麹を使うビールにさらに興味が湧いて、自分なりにしっかりと向かい合ってみたい』と思うようになった谷さん。そこから「食中酒として毎日飲まれるビールに関心を持つようになった」とテーマがみえてきたと言う。
飯田商事が麹をクラフトビール業界に持ち込んだ理由
原料を扱う飯田商事は、なぜ麹をクラフトビール業界に持ち込もうと思ったのだろうか。
「会社の中で白麹をビールに使ったら酸味が効いて『サワービールのように使えるのでは?』という軽い気持ちから始まりました」
実際には思うように酸味を出すことができず失敗に終わった。しかし、やってみたブルワーと話し、「麹は日本独自のものだし、面白いことができそうだよね」という話になったと言う。
クラフトビールでは創造性に富んだ商品が造られる。自由な発想で造ることができる環境だからこそ新しい使い方を提案しやすかったのではないだろうか。
最近では麹を使用した商品を造るブルワリーが増えていて、「少しは認知がでてきたかな」と感じていると濱本さん。麹をどのように使って表現をしていくのか。これからの展開が楽しみである。
麹を使うことで和食に合うスッキリ味のビールが期待できる⁉
谷さん、濱本さんに麹を使おうと思った理由を聞いた後に、改めて麹ビールの可能性を探った。
「可能性はあると思っています。黄麹なら酵素がブドウ糖まで切ってくれるので、ボディが軽くなる特徴があります。少し前にブリュットIPAが注目されましたが、黄麹を使うことで風味も和食に合わせやすい後味がすっきりとしたビールが造れると思います。それと黄麹には、鉄分などの吸収を促進するキレート作用があると言われており、これが生魚の臭みを消してくれることが期待できます」と濱本さん。
谷さんは、「黄麹の場合は、麹特有のきのこを思わせる香りがあるので、薫製麦芽とロースト麦芽と合わせたら出汁のようなフレーバーをもつビールが造れないかなと考えています」と構想を語り、さらに「白麹は、酸味があるので通常のブリュットIPAとは異なる特徴を生み出すことができるのではないでしょうか」と言う。
以前造ったものでは、「クエン酸の酸味と柑橘系のホップとの相性が凄く良かった」と谷さん。「IPAを造る時に米を使ってドライにしながら酸味を加えていくのは面白いと思っています」と化粧の下地の感覚で麹を使ってみる提案をしていた。
「ただ、ホップのキャラクターが強すぎると和食には合わせにくくなってしまうイメージがあります」と谷さんは付け加えていた。
麹は昔から日本人になじみがあるので、受け入れやすいのではないだろうか。「JAPAN BREWERS CUP 2024」ではCHORYO Craft Beerが麹を使ったIPAを販売していて、柑橘の皮を思わせるアロマと柑橘のような酸味のフレーバーが心地よく、筆者は可能性があると感じた。
まだまだ未知の部分が多い「麹ビール」
谷さんも濱本さんも可能性があると話す「麹ビール」。しかし、まだ明確な醸造方法がないと声を揃える。
「CRAFT BEER BASEでは、麹をモルトと別糖化した甘酒をワールプール工程で使うことで複雑味を出しています。麹を添加するタイミングで効果も変わると思うので色々試していける面白さもあると思います」と谷さん。濱本さんは、「グループ会社であるCHORYO Craft Beerでは、クエン酸の特徴を出したい時に、前日に甘酒を造ってビールに使う試みをしています」と使い方を話してくれた。
その他には、「麹は最終的に沈みます。ホップを捨てる時に一緒に出してしまえるので残さない方法もあります。あとは糖化工程で乳酸などの代わりに白麹を使ってpHを調整するブルワリーさんの話も聞きました」と濱本さんは話し、「特徴を出せる形が色々あると思います。クエン酸の特徴を出すだけではもったいないですね」と様々な醸造方法を試しながら特徴あるフレーバーを出せると日本オリジナルのビアスタイルに発展する可能性があると語るところで時間切れとなってしまった。
谷さん、濱本さんの話から「麹ビール」は酸味が1つの特徴になりそうだが、麦芽やホップ、酵母との組み合わせ、醸造方法などでキャラクターが変わる可能性を感じることができた。
次回の「日本オリジナルのビアスタイルを探る旅」は2024年2月21日(水)21時からを予定している。ゲストは和歌山県のORYZAE BREWINGの木下伸之さん。引き続き「麹ビール」を掘り下げていく。
このオンラインイベントは無料で参加できるので関心のある方は参加してほしい。また、イベントの様子は、Podcastでも配信していて、過去の様子も公開している。誰がどんな考えを話しているのか通勤時間や作業中に聞いてみてほしい。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。