[コラム,ビアバー,ブルワー]2024.6.20

【ビールを通じて感じる韓国㉔】東海岸の江陵でクラフトビール<前編> ポドゥナムブルワリー(Budnamu Brewery)を再訪

以前、韓国へ年数回通っていた私は、街で飲まれているビールや売っているビールの変化を体感するのと合わせて、ブルワリーのタップルームをよく訪問していました。
1年半前に4年ぶりに韓国への渡航を再開することができ、まず頭にあったのは以前に訪問したことのあるタップルームの再訪でした。渡航できなかった間にどう変わっているのか、なくなってしまったのではないか…とても心配していましたが、ほとんどのお店はそのまま営業を続けていて、変わらず美味しいビールが提供されていて嬉しく思いました。
そして、地方都市なので残ってしまっていた、江陵(강릉・Gangneung・カンヌン)市にあるポドゥナムブルワリー(버드나무 브루어리・Budnamu Brewery)への今年4月の訪問が、旧知のブルワリーの再訪の最後になりました。ポドゥナムブルワリーは6年ぶり2回目の訪問です。

江陵市とは…

韓国東北部にある江陵市は東側は日本海に面し、夏には海水浴客賑わう美しいビーチが続く東海岸の港町です。日本にたとえるのは難しいですが、人口規模や首都圏などからの位置関係を考えると、先ごろ新幹線が延伸した福井が近いかなと思います。

海岸沿いにある風光明媚な鏡浦湖(경포호・キョンポホ)周辺、朝鮮時代初期の1450~1500年頃に建てられた5,000ウォン札、50,000ウォン札の肖像画になった親子の生家の烏竹軒(오죽헌・オジュッコン)、江陵郷土料理の豆腐店が集まったチョダンスンドゥブ村(초당순두부마을)などの観光地があります。最近では、BTSのアルバムジャケット撮影に使用されたバス停も有名で、世界各国のファンが観光に訪れています。
また、2018年に開催された平昌(평창・Pyeongchang・ピョンチャン)冬季オリンピックで、フィギュアスケート、スピードスケート、カーリングなど各種室内競技の会場にもなった場所です。

ソウルから江陵に向かう

ソウルから江陵に行くには、KTX(韓国高速鉄道・Korea Train Express)もしくは高速バスを利用することになります
ソウル駅から江陵まではKTXで2時間弱、高速バスだとソウル高速バスターミナルから約2時間30分ほどかかります。今回は行きは高速バスを利用することにしました。ポドゥナムブルワリーのタップルームに行くには、KTXの江陵駅からより江陵バスターミナルからのほうが距離が短いからです。
ソウル高速バスターミナルは、ソウル地下鉄3・7・9号線の高速ターミナル駅と地下通路で直結している大型バスターミナルです。本館にある韓国東南部の釜山などを結ぶ京釜線と、別館にある韓国東部の江原道方面を結ぶ嶺東線のふたつの乗り場に分かれています。京釜線と嶺東線の乗り場はL字型でつながっており、1階で行き来することができます。

バスのチケット購入には窓口もありますが、早朝や深夜など時間帯によっては無人になるとのことです。

今回は窓口ではなく、自動券売機を試してみました。鉄道やバスのチケットの自動券売機では日本のカードが使えないことが多いのですが、今回は問題なく使用できました。ちなみに、自動券売機では現金は使えません。
この日は9時少し前に、9時20分発の江陵行きのバスチケットを買うことができました。3列シートの優等バスで24600ウォン(約2710円)でした。


途中1か所での休憩を挟み、高速道路が少し混んでいたところがあった影響があり約3時間かかって江陵バスターミナルへ到着しました。

ポドゥナムブルワリーへ

ポドゥナムブルワリー

ポドゥナムブルワリーは、江陵市に2015年に誕生したブルワリーです。1926年に設立され、2014年に廃業した「江陵濁酒工場」を引き受けて改装してオープンしました。ちなみにポドゥナム(버드나무)とは韓国語で柳のことです。
ここのビールには原料として、米、蕎麦、菊、じゃがいも、トウモロコシ、柿、イチゴなども使われており、それらはすべて地元の農家と提携しての調達。「韓国固有の伝統酒の材料と地域の食材を活用し、韓国ならではの風味と個性豊かなクラフトビールを造る」という意志を持って経営しているブルワリーです。

江陵バスターミナルから歩く

江陵バスターミナルからはタクシーに乗ることもできますが、私はポドゥナムブルワリーまで歩くことにしました。途中は林や古い家があったという記憶だったのですが、高層マンションに変わった場所もあり、以前来たときから約6年という年月がたったことを実感しました。

約20分ほど歩き、ポドゥナムブルワリーに到着しました。

建物の内部

建物の入り口を入ると、まず右手に醸造設備やオーク樽が目に入ります。左側にはタップと持ち帰り用の瓶ビールやグッズが並べられていました。


店内は広々としていて、中央には樹木が植えられています。天井は高く、韓国の伝統家屋らしさも感じる独特な構造です。

近くに観光地があるわけではない場所で平日の12時半ごろでしたが、先客が何組かいらっしゃいました。外のテラスも含めどこに座ってもOKとのことだったので、店内のほど中央にある樹木を目の前にするカウンター席を選びました。

ビールと料理を楽しむ

ここの定番ビールは、Minori Session(アルコール分4.7%・IBU28)、Zeumeu Blanc(アルコール分5.3%・IBU8)、Haslla IPA(アルコール分6.1%・IBU41)、Baegilhong Red Ale(アルコール分6.2%・IBU32)の4種類。まずはそのサンプラーを注文しました。180ml×4種類で18000ウォン(約1980円)です。メニューは、ビールの説明も韓国語だけでなく英語でも書いてありわかりやすかったです。
使われているグラスには、それぞれ버、드、나、무の文字が入っていて合わせてブルワリー名になっています。 おつまみは無料でついてきました。

ビールが運ばれてきたときにも、韓国語ででしたが丁寧な説明がありました。
Minori Sessionは米が使われており、クリーンな味わい。Zeumeu Blancには菊や山椒が使われていて、独特なスパーシーさと甘みがありなかなか複雑な味わいでした。Haslla IPAのHasllaは江陵の旧名で広い海を意味し、華やかな香りと苦味がいいバランスのIPA。Baegilhong Red AleのBaegilhongは100日咲く江陵のシンボルの花の名前(百日紅)で、カラメルの香りがある苦みと甘みのバランスガ取れた深みのあるビールでした。

料理はピザが4種類のほか、ハンバーガー、パスタ、揚げ物、BBQなどありましたが、私が頼んだのはイカ焼き。海が近いこともあり、とても美味しかったです。

追加で頼んだビールはシーズナルでアルコール分4%、IBU30のNitro Poter。450mlで7000ウォン(約770円)でした。ポーターとなっていましたが、爽やかでスムースに飲めるビールでした。

ちなみにシーズナルビールのサンプラーもあり、4種類が19000ウォン(約2090円)で提供されていました。

テラス席

この日は天気がよく、ちょっと迷ったのがテラス席の利用。結局、建物内で飲むことにしましたが、テラス席は中庭にあり、こちらもいい雰囲気でした。


以前の訪問から時間が経っているので、もし違いがあっても気が付かなかった点もあったとは思います。でも、以前と同じ素敵な雰囲気で美味しいビールが提供されていることが確認でき、いい再訪になりまでした。

飲食した会計の際に合わせて瓶ビール1本と栓抜きを買おうとしたら、栓抜きは「プレゼント」といただけることになりました。その優しさがとても嬉しかったです。

江陵駅へ歩き始める

ポドゥナムブルワリーの目の前にバス停はありますが、次のバスは1時間ぐらい待たないと来ないようでした。

1時間あれば、町の雰囲気を感じながらKTXの江陵駅まで歩けてしまうのではないか。ソウルに戻るにしても少し観光するにしても、取りあえず江陵駅に出てどうするか考えてみればいいし、もし途中で駅まで遠すぎると感じたらそこでタクシーを拾えばいい…そう思い、私は江陵駅に向けて歩き始めました。
(続く…)

後編は、ポドゥナムブルワリーから江陵駅までと、江陵にあるもうひとつのブルワリーの話になります。

◎ポドゥナムブルワリー(버드나무 브루어리・Budnamu Brewery)
所在地:강원도 강릉시 경강로1961(1961 Gyeonggang-ro, Gangneung-si, Gangwon-do)
営業時間:12:00~23:00

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2020)」BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています

Budnamu Breweryポドゥナムブルワリー江陵韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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