[ビアバー,ブルワー]2024.9.3

「三浦半島ビアマップ」誕生秘話と三浦半島クラフトビールの魅力

2024年夏、三浦半島にあるクラフトビール醸造所(ブルワリー)やバー・ボトルショップをまとめた冊子「三浦半島ビアマップ」が発行されました。
今回、「三浦半島ビアマップ」の制作者であるつかこさんにインタビューを行いました。取り組みの発端や経緯、今後の展望、そして三浦半島のクラフトビールの魅力について伺いましたので、その内容をご紹介いたします。
※ 記事内の写真および素材はすべて、つかこさんよりご提供いただきました。

「三浦半島ビアマップ」とは

「三浦半島ビアマップ」表紙・裏表紙

「三浦半島ビアマップ」は、神奈川県三浦半島にあるクラフトビール醸造所やバー・ボトルショップを紹介する冊子です。三浦半島のクラフトビール文化を広めるべく、地元のビール愛好家つかこさん(X(旧twitter) / Instagram)が企画・取材をし、イラストレーターTOAさん(X(旧twitter)/ Instagram)がデザイン制作をしました。
神奈川県横須賀市を中心に、ブルワリーやバー・ボトルショップなどにて、無料で配布がされています。

三浦半島について

三浦半島は、主に神奈川県の横須賀市・三浦市・逗子市・葉山町がある、東京湾と相模湾に挟まれた半島です。温暖な気候と変化に富んだ海岸線が特徴で、観光、農業、漁業が盛んです。JR横須賀線と京急線が半島を縦断し、都市部からのアクセスも良好な、自然豊かな環境と都市機能が共存する地域として知られています。

神奈川県南東部に位置する三浦半島

紹介されている醸造所、バー・ボトルショップ

「三浦半島ビアマップ」に紹介されている醸造所やバー・ボトルショップは全部で10箇所です。

「三浦半島ビアマップ」内容

※醸造所・施設の表記と公式WEB・Instagram、及び丸数字は、取材時(2024年8月現在)、「三浦半島ビアマップ」に掲載されている内容です。
※①③はバー・ボトルショップ、それ以外は醸造所です。

横須賀中央エリア

①seven(Instagram
②横須賀ビール YOKOSUKA BEER(公式WEBInstagram
③YOKOSUKA BEER TAPROOM(公式WEB
④GRANDLINE BREWING(公式WEBInstagramX(旧twitter)

浦賀・久里浜エリア

⑤WHITE DOG BREWING(Instagram
⑥法龍山麦酒 HORYUZAN BEER(公式WEBInstagramX(旧twitter)

三浦エリア

⑦MIURA brewery(公式WEBInstagram
⑧三浦半島ペニンシュラビール(醸造開始予定)

葉山エリア

Brewstars Yacht Club Hayama Brewing(公式WEBInstagram
⑩15 brewery(公式WEBInstagram

「三浦半島ビアマップ」誕生のストーリーと完成まで

三浦半島生まれのつかこさんは、「ビールに肝臓を捧げている」とおっしゃるほどの熱心なクラフトビール愛好家です。特に、複数のビアバーを巡る「パブクロール」(はしご酒の一種)を楽しんでいるそうです。
近年、三浦半島では新しいブルワリーが次々とオープンし、クラフトビールを提供する店舗も増加し、つかこさんは、地元三浦半島で醸造されるクラフトビールの魅力に徐々に引き込まれ、地元三浦半島で醸造されるクラフトビールにも魅了されていったそうです。

ダンボー(あずまきよひこの漫画作品『よつばと!』 シリーズに登場する架空のロボット) と一緒にビールを楽しむつかこさん(SNSより)

地域のクラフトビアマップ活用の経験

つかこさんは以前、大阪クラフトビアマップを使って1泊2日で電車や徒歩でオープン時間をみながら、巡る順番を考えて合計16店舗を巡った経験があります。この体験を通じて、1日でたくさんの場所を巡ることの楽しさを実感しました。また、静岡で配布されていたクラフトビアマップにも憧れを抱いていたそうです。これらの経験から、「もっと地元三浦半島のことを知りたい、そして他の方々にも三浦半島の魅力を知ってほしい」という想いが生まれました。
この想いが制作の原動力となり、つかこさんはクラフトビアマップ三浦半島版の作成を決意しました。制作開始にあたり、SNSで呼びかけで多くの方々の賛同を得て「三浦半島ビアマップ」の制作をスタートさせました。

ブルワリーへの取材

マップのデザインとイラストは、ビールのイラストや漫画「恋するクラフトビール」で知られるイラストレーターのTOAさんに依頼されました。TOAさんは快くこの依頼を引き受けてくださったそうです。
2024年3月、つかこさんはTOAさんと共に三浦半島のブルワリー巡りを行いました。各ブルワリーの方々が丁寧に案内してくださったおかげで、お二人とも三浦半島のクラフトビールを存分に楽しむことができたとのことです。
つかこさんは「普段は味わえない特別な体験ができました」と振り返り、TOAさんも「個人的にまた来たいですね」とおっしゃられ、この取材旅行を通じて、お二人は三浦半島のクラフトビールの魅力を再確認したようです。

「三浦半島ビアマップ」の完成

つかこさんとTOAさんのブルワリー巡りが終了した後、つかこさんが原稿を執筆し、TOAさんがデザインを担当しました。
2024年7月、「三浦半島ビアマップ」が完成しました。このマップは「Enjoy the Miura Peninsula to the fullest(三浦半島を遊び尽くせ!)」をコンセプトとしています。三浦半島をイメージさせる色合い、楽しいイラスト、詳細な地図を用いて、このコンセプトを視覚的に表現しています。
「三浦半島ビアマップ」は楽しく親しみやすいデザインに仕上がり、多くの人々に三浦半島の魅力を伝える冊子となりました。

三浦半島のクラフトビールの特徴

「三浦半島ビアマップ」に掲載の醸造所やバー・ボトルショップについて、つかこさんが取材を通して感じた三浦半島のクラフトビールシーンの魅力・特長についてご紹介します。

実力派ブルワリーの集結

三浦半島のブルワリーは、世界五大ビール審査会の一つであるThe International Beer Cup (IBC)や、国内のジャパン・グレートビア・アワード、JBCなどで受賞歴のある実力派揃いです。例えば、横須賀ビール、MIURA brewery、GRANDLINE BREWING、Brewers Yacht Club Hayama Brewingなどが、国内外の賞を受賞しています。
醸造を開始してからまだ日が浅いブルワリーでも、他県のイベントへの参加やビアバーとのつながりを通じて、着実に認知度を高めています。

個性的なコンセプトと地域に根ざした取り組み

各ブルワリーは、独自のコンセプトや地域密着型の取り組みを展開しています。つかこさんが取材や実際の訪問を通じて感じた特徴を以下にご紹介します。

GRANDLINE BREWING
KANPAI PASSというデジタル会員証を導入。来店でKANPAI COINが貯まり、ビールや景品と交換可能。
常連客の滞在時間が長く、オープンから閉店まで過ごしたり、1日で全タップを制覇する顧客も。
仕事で訪れているが横須賀が良すぎて母国に帰りたくないという外国人の方と話をしたりと、国際色豊かな雰囲気。
【関連記事】BREWDOGとKANPAI PASSがコラボ!「BREWDOG PUNKS PASS」の発行を開始

WHITE DOG BREWING
常連客の中には、駅まで近いことを利用して電車の発車時間ギリギリまで飲む人や、家族でお出かけの際に先に家を出てブルワリーで一杯飲みながら待つ人がいます。このような親しみやすい雰囲気だからこそ、こうした行動が可能になっているようです。

法龍山麦酒
寺院が母体で、僧侶が醸造しているため、「テラピスト寺(じ)ビール」(造語)と名乗れる唯一無二の存在感があります。
また、新しい顧客層を獲得するため、人気VTuber伊東ライフさんプロデュースの「天地」「明察」を販売し初回ロットが11分で完売したほか、人気VTuber「たみー」さんとのコラボビール「兎(と)」「民(たみ)」を展開、さらにコミケではクラフトビール全般についての知識がなくても法龍山麦酒の名前を知っている人が多いなど高い知名度が確認され、新規顧客の開拓に成功しています。

地域に根ざした取り組み

多くのブルワリーが地域の特色を活かしたビール造りに力を入れています。
例えば、寺院の敷地内で採れた梅の利用(法龍山麦酒)、近隣の方が高齢で収穫ができず収穫を手伝ったお礼に提供された果物、摘果された果実などを地元農家さんとのを協働しながらビールの原料として使用しています。
また、「三浦パン屋 充麦」で生産された自家製小麦を活用したり、地元のパン屋から出る廃棄パンを再利用するなど、地域資源の有効活用がなされています。
このような地域に根ざした取り組みは、ビール造りにとどまらず広がりを見せています。
その一例として、三浦半島にある葉山ホテル音羽の森では、披露宴や挙式の際のウェルカムドリンクとしてクラフトビールが提供されるなど、地域の特色を生かした新たな試みが行われています。

「三浦半島ビアマップ」の反響と今後の展望

三浦半島ビアマップ」の反響

「三浦半島ビアマップ」の完成発表後、様々な反響がありました。紹介した醸造所やバーには「マップは置いてありますか?」という問い合わせが増加しました。また、つかこさんのSNSを参考に、紹介された店舗を訪れる人も増えてきています。
醸造所やバーでは、お客さん同士がマップを通して情報交換する場面が見られるようになりました。これにより、店舗内の話題づくりにも一役買っているようです。
つかこさんが直接マップを手渡した方からは「こんないいお店が近くにあるとは知らなかった。とてもよかった」という感想が寄せられました。こうした反応に、つかこさん自身も大変嬉しく感じているとのことです。

「三浦半島ビアマップ」今後の展望

「三浦半島ビアマップ」今後の展望について、つかこさんに伺いました。
つかこさん
TOAさんには制作依頼に応えていただき、大変でしたが、1人でも楽しみながら制作することができました。作ることへのハードルはそれほど高くないと感じています。皆さんのお住まいの地域のビアマップも見てみたいので、このマップをきっかけに、いろいろな情報を教えていただけるのも夢です。
三浦半島には、訪れた人がまた来たいと思う魅力が存分にあります。今回の取材で初めて訪れたTOAさんも「また来たい」とおっしゃっていました。
ただ、三浦半島は地理的に気軽に足を運びにくい面もあります。「行きたいけど遠いな」という気持ちを少しでも和らげられたらと思っています。私の夢は、訪れた方が新しい人を連れてきてくれるような、みんなで輪を広げていくことです。時間を忘れるほど長居したくなる、そんなきっかけを「三浦半島ビアマップ」が作れればと思っています。

「三浦半島ビアマップ」配布場所

「三浦半島ビアマップ」は現在、地域の主要なブルワリーや関連店舗で配布されています。今後も配布場所を拡大し、より多くの人々に三浦半島のクラフトビール文化を知ってもらうことを目指しています。
※2024年8月現在。配布が終了しているお店もあります。

神奈川県横須賀市

・seven
・横須賀ビール
・GRANDLINE BREWING
・WHITE DOG BREWING
・法龍山麦酒
・ロータス
・うれしたのし屋

神奈川県横須賀市以外

・MIURA brewery(神奈川県三浦市)
・Brewstars Yacht Club(神奈川県三浦郡葉山町)
・Tad bottle and bar(神奈川県三浦郡葉山町)
・マインマート茅ヶ崎常盤町店(神奈川県茅ヶ崎市)
・セブン-イレブン 横浜ハンマーヘッド店(神奈川県横浜市)
・SIBLINGS(神奈川県横浜市)
・MUGI(静岡県静岡市)
・びぃる食堂ぬとり&ぬとりブルーイング(埼玉県川口市)

…and more

「三浦半島ビアマップ」お問い合わせ先

「三浦半島ビアマップ」は、地域の隠れた魅力を発掘し、クラフトビールを通じて人々をつなぐ架け橋となっています。この取り組みが、三浦半島の新たな魅力を創出し、地域活性化の一助となることが期待されます。
「三浦半島ビアマップ」へのお問い合わせは、つかこさんまでご連絡ください。

つかこさん


日本ビール検定2級合格、ビアテイスター・ジャパンビアソムリエ・ビアコーディネイターを取得。2024年、「三浦半島クラフトビール紹介本 Vol.1」を発行、コミックマーケット104 にて販売を行う。

X(旧twitter)
Instagram

おわりに

左から:つかこさんのダンボーさんと一緒に/大人のお子様ランチ/SIBLINGS店内

今回、つかこさんのインタビューは、妙蓮寺にある「SIBLINGS」にて和やかな雰囲気の中で行われました。
席につくやいなや話したいことが溢れ出し、みんなで「大人のお子様ランチ」を頼んだりとワイワイと盛り上がり、終始笑顔の絶えない和気あいあいとした時間となりました。
つかこさんの熱いビール愛や三浦半島ビールへの深い思い、ビールの撮影秘話、「三浦半島ビアマップ」への情熱、コミケでの楽しいエピソードなど、話題は尽きることなく飛び交い、あっという間に時間が過ぎていきます。目を輝かせながら語るつかこさんの姿に引き込まれ、まるで昔からの知り合いであるかのような会話を楽しみ、私自身もとてもくつろいだ時間を過ごすことができました。
取材後、「SIBLINGS」さんに「三浦半島ビアマップ」を置いていただく様子も拝見。店主さんとつかこさんのやりとりからは、ビールを通じた人々の温かな繋がりが感じられます。
この日の取材は、ビールを愛する人々の熱意と友情に満ちた、忘れがたい楽しいひとときとなりました。
つかこさん、貴重な機会をありがとうございました。

15 breweryBrewstars Yacht Club Hayama BrewingGRANDLINE BREWINGMIURA brewerysevenWHITE DOG BREWINGYOKOSUKA BEER TAPROOM横須賀ビール法龍山麦酒

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

野中 あゆみ

ビアジャーナリスト

1977年、広島県出身。上智大学卒業。WEBディレクター・ライター。

普段飲みの席にて「とりあえずビール」ではなく「ずっとビール!」を飲んでおり、とにかくビールが大好きだったこともあり、「ビールって美味しいよね!飲むと気持ちもHAPPYになるよね!」ということを伝えたく、ビアジャーナリストアカデミー19期(2023年5月開講)を受講し卒業しました。

普段は、自分が飲んだビール情報を個人SNS(アカウント名「ビール日和」)や個人メディア「ビール日和」にて発信しています。

ビール好きな仲間たちと時間や情報を共有して楽しんでいける場所をつくっていきたいです。

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