[コラム,ビアバー,ブルワー]2024.10.24

【ビールを通して感じる韓国㉛】~風光明媚な港町・統営でクラフトビール<前編>~ ドイツの伝統を守ったビールを造るREIN DEUTSCH BREWERY

10月に入っても気温が高めの日もまだありますが、さすがにもう夏の猛暑のときの感覚はかなり記憶からなくなってきているのではないでしょうか。
改めて振り返ってみると、今年の夏の気温は全国的にかなり高くなり、厳しい暑さが長期間続きました。1898年から統計を開始した日本の平均気温偏差(その年の平均気温とベースとなる平均気温との差)は過去最高を記録したとのことです。
韓国でも同様に、特に7月下旬から8月にかけては夏の厳しい暑さが続いていました。毎朝、テレビCMで熱中症対策について流れていたり、スマホに滞在地域が猛暑になるという災害情報アラートが上がってきていました。暑さのために中止になったプロ野球の試合もありました。
そんな時期に、10数年ぶりに向かった韓国・統営(통영・Tongyeong・トンヨン)。見どころはいくつもあるのですが、暑さで足を運ぶ気にはとてもなれず、今回はほぼビールを飲むためだけに歩き回ってきました。

統営

統営とは

統営は、韓国の南東部に位置し、東西南を海に囲まれた海や山を望む絶景を満喫できる東シナ海に面した港町です。一帯はいくつもの入り江が入り組んでいるリアス式海岸であり、水産業が盛んです。また、海には大小さまざまな島が数多く浮かんでいます。
日本で例えると、面積や人口規模も含めて広島の尾道が近いと感じます。
海に突き出した絶壁や奇岩が織りなす風景は年中観光客が絶えず、本来は年間を通して比較的温暖な気候でありリゾート地としても人気があります。
海を中心とした自然が豊かな統営ですが歴史のある地域でもあり、16世紀末の豊臣秀吉の朝鮮出兵時には水軍の司令部が置かれ、司令官として赴任した李舜臣(이순신・イスンシン)に関わる旧跡も多くあります。
閑麗水道眺望ケーブルカー(한려수도조망케이블카)のほか、1932年に完成し現在も通行可能な東洋初の海底トンネル「統営海底トンネル(통영해저터널)」、全国的な人気を誇る壁画村「東ピラン壁画村(동피랑벽화마을)」など見どころも多く、私も以前観光目的で訪問したことがあります。

行き方

統営へは、釜山の地下鉄2号線沙上駅直結の釜山西部バスターミナルから直行の高速バスに乗ると、約1時間半で到着します。料金は13900ウォン(約1530円)。直行バスは1時間に2~3本程度あるので、バスの出発時刻はそれほど気にしなくても大丈夫です。直行バス以外に他の町を経由して行くバスもあります。

REIN DEUTSCH BREWERY

統営に向かった目的のひとつは、REIN DEUTSCH BREWERY(라인 도이치 브루어리・ラインドイツブルワリー)でビールを飲むことでした。

REIN DEUTSCH BREWERYとは

REIN DEUTSCH BREWERYはドイツの伝統的なスタイルのビールへの関心を広げることを目的に、2019年に設立されました。2000年初期にドイツのブルワリーが統営に開設したタップルーム(2012年に閉鎖)のブラウマイスター(醸造におけるトップ・ドイツ国内において認定国家資格)のもとに再集合して始めたブルワリーです。
名前からも推測できるとおり、ドイツのビール純粋令を守ったビール造りをしています。

以前から名前は聞いたことがありましたが、訪問しようと思ったきっかけは4月の韓国のビールEXPO(KIBEX)で試飲したことでした。

*KIBEXについては下記のリンクからどうぞ…
韓国のビールEXPO「KOREA INTERNATIONAL BEER EXPO(KIBEX)」に行ってきました<前編>(2024.4.30)
韓国のビールEXPO「KOREA INTERNATIONAL BEER EXPO(KIBEX)」に行ってきました<後編>(2024.5.3)

統営バスターミナルから

釜山からの高速バスが着く統営総合バスターミナルは、見どころのある中央市場周辺からも離れているので、どこへ移動するにしても市内バスに乗るかタクシーを利用する必要があります。私はバスを選択。バスターミナル前の広い道路に出て少し右に行くと市内バスのバス停があります。

ここから354番のバスに乗って30~40分ぐらい。統営大橋を渡って5~10分ほどのテウサンガアパート前で降ります。

近くの角を曲がり坂道を下っていくと、目の前は海!


海沿いの道路に出て左に曲がってすぐREIN DEUTSCH BREWERYが見えます。バス停から徒歩7~8分で着きます。

REIN DEUTSCH BREWERYでビール

店内は4~6人掛けのテーブルが12卓ほど。広々としていて、通路もゆったりとしています。

窓側の席からは海も眺めることができて、人気があるようです。

ここで造られている定番ビールはヴァイツェン(アルコール分5.3%・IBU8)、へレス(アルコール分4.5%・IBU14)、ピルスナー(アルコール分4.9%・IBU18)、ゴールデンエール(アルコール分4.9%・IBU32)、IPA(アルコール分5.7%・IBU40)、ヴァイツェンボック(アルコール分6.7%・IBU10)の6種類。それ以外のビールはありませんでした。
せっかくなので、6種類すべてを飲めるサンプラーを注文。17000ウォン(約1870円)でした。3種類のサンプラーもあり、9000ウォン(約990円)でした。
ちなみに個々に注文すると、400~500mlサイズで6000~7500ウォン(約660~830円)となっていました。

やや酸味のあるヴァイツェン、柔らかな甘味を感じるへレス、爽やかなピルスナーとゴールデンエール、苦みのきいたIPA、程よい重みのあるヴァイツェンボックと、それぞれの味わいが楽しめました。
料理は、ヌードルと書かれた中から、19000ウォン(約2090円)のスパーシーシーフードトマトを選択。海に囲まれた地域だけあって、驚くほどのシーフードが入っていました。

訪問したのが昼間ということもあり、子ども連れやビールを飲まないグループも来店しているようでした。ビールも美味しかったですが、食事もボリュームがありそれも納得です。もともとのビール好きだけのための場所ではなく来店する層を広げることは、長い目で見ればビール好きを増やすことにつながるのではないか…そんなことも感じました。

1時間ほど滞在したあと、REIN DEUTSCH BREWERYを後にしました。ブルワリーの前にもバス停はありましたが、本数がほどんどない可能性が高そうだったので、最初に降りたバス停へ戻ることに。

行きは下り坂でしたが、帰りはもちろん上り坂です。

距離は500メートルもありませんが、35℃目前の気温の中で上る坂の角度ではないですね… 次回があれば別の季節を選びたいと思います。

後編では、統営の町の中心部で見つけたブルワリーの話を書きたいと思います。

◎REIN DEUTSCH BREWERY(라인 도이치 브루어리)
所在地:경상남도 통영시 미우지해안로 103(103 Miujihaean-ro, Tongyeong-si, Gyeongsangnam-do)
営業時間:11:30~24:00(途中休憩時間あり)

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2020)」BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています

REIN DEUTSCH BREWERY統営韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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