[コラム,ブルワー]2024.10.31

【ビールを通して感じる韓国㉜】~風光明媚な港町・統営でクラフトビール<後編>~ 銭湯をリニューアルしたTongyeong Beer

今回の記事は、「【ビールを通して感じる韓国㉛】~風光明媚な港町・統営でクラフトビール<前編>~ ドイツの伝統を守ったビールを造るREIN DEUTSCH BREWERY」の続きになります。

REIN DEUTSCH BREWERYから町の中心部へ

REIN DEUTSCH BREWERYを出て坂を上り切った場所にあるバス停から、行きと同じ354番のバスに乗って町の中心部方面へ戻ります。途中で東洋初の海底トンネル「統営海底トンネル(통영해저터널)」の近くを通りますが、暑さで途中下車して歩いていく気になれずそのまま乗車。中央市場(중앙시장)バス停で下車しました。

統営伝統中央市場と港

バス停の近くにある統営伝統中央市場は、およそ400年の歴史を誇る在来市場(재래시장・行商たちが集まり伝統的な形式で物品を販売する市場)です。

市場正面の海には江口岸(강구안・カングアン)と呼ばれる港があり、漁船や観光用の亀甲船(昔の朝鮮水軍の軍艦)が停泊しています。

統営のクルパン

手軽に食べられる統営のグルメといえば、一口サイズの忠武キムパッ(충무김밥・チュンムキンパッ)や、クルパン(꿀빵)が代表的です。どちらもこの港付近に何軒もお店があります。
今回は昼食を済ませていたので、持ち帰りするためのクルパンを購入しました。クルパンとはあんこ、抹茶などをパンの生地で包んで油で揚げた後、蜂蜜を塗って穀物類をまぶした蜂蜜パンです。

市場裏手の丘には人気を誇る壁画村「東ピラン壁画村(동피랑벽화마을)」もありますが、丘を上がったり下がったりしたい気温ではないので今回はパス。ビールを飲みに向かいました。

Tongyeong Beer

外から見ると…

目指したのはTongyeong Beer(통영맥주・トンヨンビール)。賑やかな港周辺からは少し離れた静かな通りにありますが、徒歩5~6分ほどで着きます。

白いタイルの建物で入口の上には「동호탕」(Donghotang・トンホタン)と表示されています。以前銭湯だった建物をビール醸造所にしており、銭湯だったときの名前が残されています。日本では秋田のHOPDOG BREWINGや大阪の上方ビールなど銭湯だった建物を活用している例はありますし、韓国でも古い建物をリニューアルしてブルワリーにしていることはけっこうありますが、韓国で銭湯をリニューアルしてブルワリーにしているのは初めて見ました。

外からでも、正面の窓から醸造設備が見えます。

お店の前にはこんな表示も置いてありました。

入口を入ると「ビールします」という表示が。ここの小窓ではかつて入浴料の支払いが行われていたのでしょう。

銭湯の設備を生かした内装

右手にある醸造設備を眺めながら建物の奥へ。目に入った店内は銭湯の名残りがたっぷりと残っていて驚かされました。

真ん中には浅めの浴槽。ここでもビールが飲めるように、座席とテーブルが用意されていました。

壁際にある席のライトはシャワーです。

かつてのサウナスペースにもテーブルと椅子があり、ビールを飲めるようになっていました。

ビールを飲むスペースになっているこの1階は元女湯、元男湯は2階にあり今は事務所として使われているそうです。

シャワーの下でビール

メニューなどはなく、並ぶ缶ビールがメニュー代わりです。この日、ここで飲めるビールは6種類ありました。食べ物の提供はなく、ビールだけを楽しむ場所です。

私はトンビランペールエールを選択。ビールはこの場で樽生を飲むと4000ウォン(約440円)です。
ここで造られているビールには、統営を象徴する名前が付けられています。例えば、トンピランペールエールは、前述の壁画の村で有名な東(トン)ピランにちなんでいます。スタウトはイスンシン・スタウトという名前で、軍の令官として赴任した李舜臣(이순신・イスンシン)の名前が使われています。

ライトがシャワーでできている席に座りました。

コースターが紙などではなくあかすりタオルで作られているところにも、元銭湯らしさを感じます。

最初はインテリアとして小さなタオルをかけているのだと思っていましたが、コースターとして使うためだったとわかりました。

ドンピランペールエールは、軽い柑橘の香りと味わいがあり苦味は軽め。すでにほかでビールを飲んできたあとでしたが、美味しく飲めました。

500mlの缶のビールは1本4900ウォン(約540円)。6缶買うと専用の袋付きで20000ウォン(約2200円)とお得なので迷いましたが、重さも考えてトンビランペールエールとタラヴァイツェンの2本だけ購入しました。ちなみに、タラヴァイツェンのタラとは、統営にある港の名前だそうです。

統営総合バスターミナルへ戻る

Tongyeong Beerを出て、近くのサムソンタワーというバス停へ出ました。ここからのバス路線は多くて、簡単な路線図さえ理解できればどこへ行くにも便利です。
韓国の市内バスはどの町でも格安の均一料金(一乗車1500ウォン≒165円程度)で乗ることができるので、特に地下鉄のない地域で使いこなせれば、とても歩き回りやすくなります。
20分ほどの乗車で統営総合バスターミナルへ戻りました。

15時45分発のバスに乗り釜山へ戻ります。暑くて観光はほとんどしなかったのと、今回立ち寄った場所がどちらも昼から飲めるところだったので、釜山から楽々日帰りできました。


今回は釜山からバスで向かいましたが、もしソウルから行くとしたらバスで4時間ぐらいかかります。その場合は往復にかかる時間を考えると日帰りも不可能ではないでしょうが、1泊はしたほうがゆっくりと過ごせて楽しめると思います。
ぜひ、気候の良い時期に統営を訪問して、ビールと観光を楽しんでみてくださいね。

◎Tongyeong Beer(통영맥주)
所在地:53KR Hangbuk-gil, Tongyeong-si, Gyeongsangnam-do
営業時間:月~金 11:00~21:00 土・日 12:00~22:00

*100ウォンを約11円として換算しています

Tongyeong Beerトンヨンビール統営韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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