横浜をファンであふれる街に!横浜ファンカンパニーが考えるファンづくりとは
2024年4月23日、横浜ビールの広報を担当している横内勇人さんと工藤葵さんが、人と街をつなげるファンづくりをベースとしたPR会社「横浜ファンカンパニー株式会社」を立ち上げました。もともと、横浜ビールで地域や企業との繋がりを重視しながら広報活動を行っていた2人ですが、何を目的として会社を立ち上げたのでしょうか。
横浜ファンカンパニー株式会社を立ち上げたきっかけや目的、実際に行っていく事業について、横内勇人さんと工藤葵さんに話を聞きました。
目次
横浜ビールだけでなく、ビアバイクも他のブルワリーも伝えていきたい
――横浜ファンカンパニー株式会社設立おめでとうございます。まず、会社を立ち上げたきっかけについて教えてください。
横内勇人(以下、横内):僕は2016年に転職して横浜ビールに入社したんですが、もともとその頃からビアバイクを使って独立したいと思っていたんです。ビアバイクっていうのはオランダ発祥の移動式ビアカウンターで、ビールを飲みながらみんなでペダルを漕いで移動する乗り物なんですよ。横浜ビールに入社したときは、ビールの知識もまったくない状態だったんですが、単純にビアバイクで会社を立ち上げたいと思っていました。
――2021年から、横浜ビールをはじめとした横浜のブルワリーが中心になって、ビアバイクツアーを行っていますね。
横内:そうですね。横浜ビールでビアバイクができるようになったら、だんだん独立しなくてもいいかな…という気持ちも出てきたんですよ。それでも、心のどこかに独立したいという気持ちも残っていて。
横内:それでも会社を離れて、一歩踏み出して挑戦したいという気持ちが強くなったんですよね。独立した立場で挑戦できるビールの仕事をしていきたいっていう。それと、ビアバイクはビールをとおした街づくりの一環としてやっているという考えがあって、横浜ビールに所属していると難しいことが出てくるんです。
――何かやろうとしても、横浜ビールに関連付けなければいけないと。
横内:横浜ビールはもちろんですが、ビアバイクも横浜の他のブルワリーも伝えていきたいんですよ。今は街の企業さんと連携していく中で、横浜のブルワリーが活きる機会をつくっていけたらと模索しています。なので、独立することで他のブルワリーも紹介できるし、ビールに関わらない横浜の人たちとも仕事をしたいという思いもあり、会社を立ち上げようと。
――2024年4月に横浜ファンカンパニーを立ち上げたわけですが、現在も横浜ビールで勤務しているんですか?
横内:はい、今は横浜ビールでも勤務していますが、2025年3月で退職予定です。。
思い切って自分の環境を変えて挑戦してみたい
――工藤さんはどういった経緯で立ち上げに関わったんですか?
工藤葵(以下、工藤):2020年からフリーランスで横浜ビールの広報として関わるようになったんですが、これまでにいろいろな業界の方と仕事をさせてもらいました。全然知らなかった業界や違った文化を持った人たちと何かをつくり上げていくことが、濃い時間でとても勉強になったなと思っているんです。
――横浜ビールさんは、地域の企業や人たちとの関わりがとても多いという印象です。
工藤:ありがたいことにご一緒する企業さんは本当にさまざまです。地元の小学生の方に会社の取り組みを伝えたり、企業さんとランニングイベントを開催したりすることもあります。年々、街づくり視点で横浜ビールを魅力に思って声をかけていただくことも増えました。私は横浜ビールに所属していないフリーランスなので、カメラマンやライターの仕事も幅広くやりながら、模索をしていた状態だったんです。そこで、横内さんから横浜ファンカンパニーの立ち上げの話を聞いて、立ち上げに関わったという経緯です。
――横浜ビールでも一緒に仕事をしていて、お互いを理解していたというのも大きいでしょうね。
工藤:そうですね。あとは、2023年に横浜の日産スタジアムでサイクルメッセンジャー世界選手権2023(CMWC 2023 Yokohama)が開催されて、そこに関わったことも大きかったなと思います。
――工藤さんは自転車が趣味なんですよね。
工藤:はい、そこで横浜ビールと横浜ベイブルーイング、里武士 馬車道の3社それぞれがコラボビールを造ったんですが、その企画やリリースイベントなどを行うにあたって、他のブルワリーや街の人たち、メッセンジャー関連の方と連携しながら濃い時間を過ごしました。世界選手権といっても、実際には業界への強い想いを持っている有志の集まりでつくり上げていたんです。単なる業務ではなく、メッセンジャーという生き方として、自分たちの街に景色をつくろうとしている大人たちの姿に、ビールを信じている業界の人たちと似た情熱を感じました。
――ひとつのイベントをつくり上げるのは大変だと思いますし、その間に関わった人たちとの関係性も強くなっていったんでしょうね。
工藤:横浜ベイブルーイングの鈴木真也さんもメッセンジャー経験がある方で、これをきっかけによりコミュニケーションをとるようになりました。この世界選手権に関わってみて、JAPAN BREWERS CUPを運営されている鈴木さんもそうですが、業界のために頑張ってひとつのことをやり切る人たちに感銘を受けたんです。このときに、思い切って自分の環境を変えて挑戦してみたいという覚悟が決まりました。
――工藤さんはそういった経緯があって、横内さんも独立したいという思いがあって、そのタイミングが一緒だったと。
工藤:そうですね。横浜ビールも醸造長の井田さん、加藤さんや本店店長の廻さんを筆頭に20〜30代の同世代メンバーも多く、新たなフェーズに進んでいる感覚があります。自分たちも横浜ビールのことが好きだからこそ、お互いステップアップできるように関わっていきたいです。横浜ビールを飲むたび「ヨコビ最高…」って思うくらい横浜ビールが好きなので。
ファンづくりとは、ワクワクする感情で繋がる関係性をつくること
――では、そうやって立ち上げた横浜ファンカンパニーは、具体的にどのような事業を行っていくんでしょう?
横内:ひとつはビアバイクですね。僕はもともとビアバイクで独立したいという思いをずっと伝えていましたし、横浜ビールの代表にも「横内は社長になって挑戦した方がよい」と背中を押してもらいました。
――ビアバイクは、熱意がないと継続していくのが難しいだろうなと想像できます。
横内:横浜ビールとしての仕事のなかでビアバイクを運営していたので、やれることが限られていました。これからはより一層、地域の繋がりをビアバイクでつくっていきたいと思っているので、それを横浜ファンカンパニーでやっていきたいですね。もっと地域の企業さんと連携したプランをつくってみるとか。
――ただ、ビアバイクというのは手段のひとつであって、横浜ファンカンパニーの事業の目的ではないんですよね?
横内:目的はファンづくりですね。
工藤:ビールと街の可能性を探求する、繋がるPR会社として、ファンづくりをベースとしたPR、パブリックリレーションズをさまざまな形で実践していきたいです。横浜ビールでも、単に発信するだけでなく、「実際にどんな人達に楽しんでもらえるのか?」「繋がっていくのか?」ということを考えて取り組んできました。例えば、ヤッホーブルーイングさんは熱狂的なファン層をいかに伸ばすかということを実践されてきていますよね。それに対して私たちは街の中でゆるやかな仲間・友だちをつくっていくイメージに近いんです。
横内:そのファンの定義は、ワクワクする感情で繋がる関係性だと考えています。顧客や消費者、企業が仲間になっていけばブランドの推進力が強くなると思うんですよね。
――その実践のひとつがビアバイクなんですね。
横内:はい。もうひとつわかりやすい事業の事例としては、NEWoMan YOKOHAMAの6階にある「2416MARKET KIOSK」です。NEWoMan YOKOHAMAの6階が「2416MARKET」という神奈川をテーマにしたスペースになっていて、いくつかのテナントのひとつとして、「2416MARKET KIOSK」というショップインショップに近い取り組み全体の企画から携わっています。
――神奈川の魅力を集めたKIOSKという感じでおもしろいですね。どういった経緯で始まったんですか?
横内:「2416MARKET」が神奈川をテーマにしていることもあって、横浜ビールも取り扱っていただいていたんです。なので、「2416MARKET」に関わっている方とも仲良くさせていただいていて、横浜ファンカンパニーを立ち上げるという話をしたときに、一緒に何かできないかとお声がけいただいたのがきっかけですね。
工藤:まだ試験的な段階ではあるんですが、「KANAGAWA LOCAL BEER & CHEERS」というテーマで、地元のビールと乾杯を盛り上げるグッズを集めました。例えば、REVO BREWINGと横浜の養蜂家「ちぼり堂」とのコラボビールや、SakuraTapsというビアバーの燻製ナッツのほか、地元のメッセンジャー会社のCourio-Cityがモルトの空袋でつくったクージーは商品企画から携わっています。
――「2416MARKET KIOSK」の反響はいかがですか?
工藤:すごく反応がいいと聞いています40〜50代の女性が客層として多いフロアらしいんですが、若い方や男性も増えているということで。素通りしてしまいがちな場所なのに、立ち止まって商品を見てくれる方も多いそうです。
横内:あとは、さまざまなローカルカルチャーの中心にいる方を講師に呼んで、地元のビールを飲みながら共通のテーマを深堀りしていく「ローカルカルチャースクール」というイベントも開催します。1回目は、Yellow Monkey Brewingの齋藤健吾さんとイラストレーターのイソガイヒトヒサさんをお呼びして、それぞれの立場で地元とビールをテーマにトークセッションを行います。
※ローカルカルチャースクールのお申し込みについては、下記をご覧ください。
2416MARKET ローカル カルチャースクール「KANAGAWA LOCAL BEER & CHEERS!」2024年11月9日(土)開催
――そういった事業を行っていく上で、大切にしている考えやポリシーなどはあるんですか?
横内:どの仕事でもそうだと思うんですが、一緒にプロジェクトを動かしていく中で、コンサルのような立場ではなく、同じチームとして一緒に動かしていくというのは絶対守っていきたいと思っています。そうでないと、本当の意味でのファンが生まれないと思っているので。
――確かにそうですね。先ほどの「ワクワクする感情で繋がる関係性」という意味でも、一緒に動かしていかないとそれが共有できませんよね。
横内:ビールを通じて新たに挑戦したいと考えているのは、講座です。例えば、商業施設や企業がオリジナルビールを造るために地元ブルワリーとコラボすることはあると思うんです。でも僕たちは、コラボビールを造るにしても、目的はコラボビールを造ることだけではなく、関わった人たちが仲間になるという目的で企業や施設などで講座を開催できないかなと。
ビールを造るためにはチームで飲みにいったり、何度も議論したりして、ビールができあがった頃には仲間になっている。地元ブルワリーを知るきっかけもできて「ビールって人をつなげるんだ」と、実体験で知ってもらうこともできます。プロジェクトが終わったあとも、今度は違う仕事を一緒にやろうと繋がっていくかもしれない。そういう関係性がファンの形のひとつだと思っていて。実現に向けて少しずつですが準備中です。
あとは、サーバー付きのカーゴバイクを広めていきたいなと。北欧では至るところで使われているんですが、子どもや足の不自由な方を乗せて移動できたり、物を乗せられたりできる自転車で、ここにビールサーバーを付けたものです。気軽に移動できるので、これを持っていくだけで、その場所がビアパークになって人が繋がる。こうやって人が繋がっていくビールのある場所を街の人に楽しんでもらいたいなと思っています。
しっかり地に足をつけて、横浜をファンであふれる街に
――今後の取り組みが楽しみですが、会社立ち上げから半年ちょっと経って、想定どおりだったことと、想定外だったことがあれば教えてください。
横内:大変だろうなと想定していたことは、想定どおり大変でした(笑)。
工藤:私は想定していなかった企業さんからお話をいただいたということはもちろん、基本的には、想定外のことしか起きていないですね…。
横内:今の時点では、どんな仕事なのか簡単に説明しにくいんですが、実績を積み重ねて、こういうことができるんだってことを知ってもらえるように頑張りたいと思っています。
――最後に、今後の目標について教えてください。
横内:やっぱり、横浜をファンであふれる街にしたいですね。僕みたいにもともと横浜出身でなくても横浜を好きな方が多くて、愛にあふれている街だと思うんです。横浜愛の強い企業さんも多い中で、その横浜愛が発揮できるようなコミュニティの醸成をビールや街の視点で盛り上げる仕事をしていきたいです。
――講座などで企業さんと一般の方をつなげたり、ファンをつくったりするということですね。
工藤:そうですね。横浜を広い視点で捉えて、新しいことも怖がらずに挑戦していきたいと思っています。例えば、いつか街のブランディングに携わっている方と一緒にチームでお仕事ができたらなぁ、とか。そもそも横内さんとは、副業として2人でやる選択もありましたが、会社だからこそ挑戦できることは今の私に想像もつかないほどおもしろいはずだ、という好奇心が勝って会社を立ち上げました。人生を楽しくサバイブしていきたいです(笑)。
横内:すべてを横浜の中で完結したいという話ではないのですが、目の前にいる人に対して何かしたいという気持ちは強いかもしれません。この先もローカルプレイヤーとして、横浜ファンカンパニーとして、挑戦し続けたいです。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。