チェコホップ協会ROSA氏インタビューvol.3 チェコのホップ 近年状況と品種改良他
2013年11月12日、チェコのホップ協会代表であるZdeněk Rosa氏にインタビューいたしました。今回はvol.3として、チェコホップの近年の栽培状況および今後の品種改良などついてヒアリングしたことをご紹介します。
<vol.3 チェコホップ 近年の栽培状況、品種改良ほか>
― 近年の栽培状況
近年、天候不順などの大きな影響で不作が続きました。例えば、-24℃という低温によりホップが霜でかなりのダメージを受けたり、2012年の夏は一転猛暑となり、収穫を前にホップがかなり落ちてしまったそうです。そして、2013年6月には洪水が起きて農場が水に浸かり、なんとか収量を確保できる程度となってしまいました。
ROSA氏の組織では常に既存の契約先に対して、3年先、5年先に納品する為のホップを在庫しています。しかしながら近年のこういった収穫不足などが続くと、予約に対応するため予備を補填しなければならず、在庫量が乏しくなってきているそうです。ちなみに、現在の在庫は約5,000トンだそうですが、ここ近年のような収穫不足への対策として、今年の秋に約400ha分のホップの入れ替え植樹を行っており、これにより、来年の収穫量は増える予定とのことです。
基本はファインアロマホップであり数値として許容範囲ですが、さまざまな影響により今年のザーツホップのアルファ酸の含有量は昨年(3.8%)に比べると3%とやや低くなりました。しかしながら、今年のホップは虫の被害や病気もなく良く育ち、それを日本のビールメーカーに納品することが出来たのは嬉しい限りとROSA氏は語ります。
― 今後の品種開発について
チェコの代表的なホップはザーツホップです。ご存知のようにチェコはピルスナービールが主体でしたので、多くの種類を育てる必要はあまりありませんでした。日本や中国、ベトナムなどへの輸出もそのほとんどはザーツホップですが、最近はさまざまなニーズがチェコ内外でも高まっており、それに対応するため、ボリュームはありませんが、既に11種類のホップを栽培しています。例えば現在のトレンドであるIPA(インディアペールエール)などにも対応できるような種類として、Kazbek(カズベック/アルファ酸5.0〜8.0%)はカスケードホップに近いアロマ系のホップ。ザーツホップに比べると他種類の収穫量は少ないのですが、まずはこれら既存の新品種を、市場を見据えながら生産調整を図っていくと思われます。
☆取り扱いホップの詳細はこちらのサイトからダウンロードできます。→http://www.chizatec.cz/en/czech-hop-varieties/?arc=36
― 新規契約について
ROSA氏の組織では、ホップを15〜20年という長いタームで計画的に栽培収穫し、長期の契約先に契約に沿った納品していく体制をとっており、基本的に新規取引先候補とも今後の長期を想定した契約をお話ししているそうです。併せて近年の収穫不足による在庫量の減少などにより、スポットでの新規売買に即座に対応するのは残念ながら難しいのが現状とのこと。また、ビールトレンドの変化により、近年、ホップ市場の需要は日本に限らずイタリア、アメリカ、ベトナムなど世界的に伸びています。さまざまな諸条件を鑑みながら、将来に向けて良い形で市場を広げる努力をしていきますとのお話をいただきました。
日本の輸入代理店として株式会社E.A.Tが窓口となっています。大手ビールメーカーだけではなく、クラフトブルワリーとの取引もコンテナでの混載などの形を取って対応することは可能です。
次回は、チェコのビールトレンドについてレポートします。
チェコホップ協会ROSA氏インタビューvol.1はこちら
チェコホップ協会ROSA氏インタビューvol.2はこちら
☆当日一緒に取材いたしましたビアジャーナリスト奥村 剛さんによる、インタビュー動画もぜひご覧ください。→ https://www.jbja.jp/archives/7536
ビアジャーナリスト二期生 宮原佐研子
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。