ビール純粋令
4月23日は、1516年にドイツのバイエルンで「ビール純粋令」が公布された日である。ドイツビール好きのビア・ファンにとっては特に思い入れの強い日に違いない。
その”大切な日”が週末に重なった今年の4月23日は、チャリティー・イベントも含めいくつかのビアイベントが都内で開催され、掛け持ちに走り回った方も多いのではないだろうか。
この「ビール純粋令」は「ビールは大麦、ホップ、水から造るべし」というもので、のちに「麦」は「麦芽」に書き変えられ、1556年には「酵母」が書き加えられた。
その後、ドイツ統一を経て、1906年にはバイエルン地方だけでなくドイツ全土に対して適用されるようになり1919年には国法と定められた。以後ドイツでは「ビールとは麦芽、ホップ、水、酵母のみで造られるもの」となった。
また、ドイツでは大麦麦芽のみで造られるビールは下面発酵、小麦やライ麦の麦芽を使うビールは上面発酵で造ると決められている。
「ビール純粋令」は粗悪なビールを取り締まるためのものでもあったが、パンの原料である小麦を確保するためのものでもあった。そして、その”小麦を使ったビール”の醸造権利を皇族や修道院や貴族にのみ与えたため、当初は「独占法だ」との反発もあった。
その後、EUの非関税障壁として問題視され1987年には「ドイツ国内の醸造所が造るドイツ国内向けビールのみを対象とし、国外への輸出ビールや輸入ビールには適用されない」ということになった。
ドイツ以外の国のビールにはフルーツやスパイスやハーブを使ったビールはもとより、麦芽化されていない小麦や大麦、砂糖、米やコーン、蜂蜜、コーヒーやチョコレート、ウッドチップといったものを使うビールがあり、それらがビールとして認められないことは輸出入の妨げになるからだ。
ちなみに、ビールの歴史を紐解くとホップ以外のありとあらゆるハーブやスパイスや薬草といった原料が使われており、「麦芽、ホップ、水、酵母」以外が不純なわけではない。またアメリカのクラフトビールから始まった自由な発想は「ビール純粋令」の枠を越えた非常に個性的なビールが生んでいる。
今後、ビール業界が一段とグローバル化していくなかで「ビール純粋令」がどのような立ち位置になっていくのか非常に興味深いところである。
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