発泡酒の未来
城端ビールが限定醸造した「和(なごみ)」を飲み、「節税型発泡酒」におけるひとつの”答え”を見た気がする。
黒米を使ったこの発泡酒は、今まで大手メーカーが造ってきた発泡酒とはまったく違った進化系である。
ビールの歴史を遡ってみると、酒税と醸造家の攻防をいくつか見ることが出来る。
その中で最も興味深くかつ有名な話は、アーサー・ギネス氏による「ポーターからスタウトへの進化」だ。
当時、酒税が麦芽に掛けられていたため、ギネス氏はロンドンで流行していたポーター(注1)というビールを『麦芽化されていない大麦を直接焦がし』て使い、『スタウト(強い)ポーター』を創り上げた。
このビールは、苦みと芳ばしさが強調され、色も真っ黒になり(注2)、ポーターをしのぐ人気ビールとなった。その後、スタウトはポーターから完全に独立したスタイルとなり、現在も世界各国で飲まれている。
アーサー・ギネス氏は節税とともに”スタウト”という新たなビア・スタイルを構築したわけである。
今まで、日本の大手メーカーが造る節税型発泡酒に課せられたは、『どのようにすれば、ピルスナーのような色と香りと味わいの発泡酒を造ることが出来るか?』だった。
『節税型発泡酒』は『ピルスナーの安価な代用品』という発想に他ならない。
大手ビールの醸しだす発泡酒は技術的に非常に高度であり、その完成度は素晴らしいことは高く評価したいが、ピルスナーの呪縛から逃れ切れないラビリンスに迷い込んでいたことも否めない。
城端ビールは「和(なごみ)」、そんな”呪縛”からみごとに解き放たれた逸品である。
発泡酒は新たなビア・スタイルを生む可能性がある広大なフィールドである。
「和(なごみ)」の濁りある液色、鮮烈なホップのアロマとフレーバーは『発泡酒は、まがい物のピルスナーではない!』と語っている。
それは、発泡酒におけるひとつの”答え”であり”提案”に違いない。
今後も、発泡酒に注目し、期待したい。
(注1:ポーターは、ペールエール、ブラウンエール、古くなったブラウンエールのブレンドビールの味わいを再現したビール)
(注2:今でこそ、ポーターといえば真っ黒なロブスト・ポーターが主流だが、発祥当時のポーターは褐色だった。その伝統はブラウン・ポーターとして残ってはいるが、今や少数派だ)
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