ベルギービールウィークエンド~日本とベルギーの比較
先日、ベルギーで行われたベルギービールウィークエンドに参加してきた。日本のベルギービールウィークエンドと本国のそれとの違いや共通点、感想などを挙げてみる。
会場の外観
グランプラスという広場が全部会場というわけではなく、外側には通路が設けてある。通路との境目は柵で区切られており、テーブルも少ない。さながら満員電車の中でビールを飲んでいるような状態ともいえる。しかも、グランプラスの中心部に各醸造所のブースが設置されているため、ブース全体を客が囲っているような状況だ。陸上競技場のフィールド内にブースがコースのほうを向いて設置されている。トラック全体ではなく、内側の2コースを柵で囲ったなかに人が溢れているのをイメージするとよい。日本では六本木ヒルズアリーナの外側にブースが設置され、客はその内側。もちろん柵などで囲い込まれたりはしていない。少し離れた毛利庭園の緑の癒し効果もあり、解放感という意味では圧倒的に日本のほうが有利だ。
ビールを買うための準備
プラスチックのコイン1つとジュトンと呼ばれる王冠10枚がスターターセットとなる。これらは翌年に使うこともできるのが便利。平均で2~4枚のジュトンでビールが1杯手に入る。グラスは飲み終わったらそこのブースに返却するとコインが返されるという仕組み。ちなみにコインは1枚で3ユーロ、ジュトンは10枚で10ユーロ。単純計算で日本の半額。日本では持ち帰れるグラスとコイン11枚付きのスターターセットが前売り価格で3,000円。日本ではその年度内限り有効で、翌年には持ち越せない。ベルギーではいくら翌年に持ち越せるとはいえ、100枚単位で買う人を多数目撃したときは我が目を疑った。
ビールを買う
コイン1枚とジュトンを数枚ブースで渡す→目当てのビールがもらえる→飲む→同じブースにグラスを返却→コインが返される
このイベントでの日本とベルギーとの最大の違いはここ。すべてのビールが専用グラスで飲める。ただし、ほとんどが150~250ミリリットルの小さなサイズである。ミニチュア感覚のそれは美味しさの外側にかわいらしさという衣をまとったかのよう。買った瞬間とビールに口につけた瞬間の高揚感と言ったら!
ただし、この方法には欠点がある。グラスはビールを買ったブースに返さないとコインの返却はされないのだ。狭い会場の中ではグラスの返却は難易度が高くなる。万が一、テーブルを確保できてもビールを買ったブースからそこまでが離れていれば、その往復に費やす労力が必要となる。満員電車の端から端まで往復することがいかに困難かは説明不要だろう。いきおい買ったその場で立ち飲みすることが多くなる。すると、場合によってはそこだけ人があふれ、隣のブース前で飲む人も出てくる。隣のブースの客がなだれ込んでくるのを見ているしかない注ぎ手たちの気持ちを思うと切なくなる。
日本ではグラスリンサーというグラスを洗う機械が設置されていて、グラスは自己管理となる。毎回きれいなグラスというわけにはいかないし、専用グラスではないのは寂しい。しかし、テーブルまで戻って飲んでもすぐに次のビールのブースに行けるのは効率的だ。しかも、飲み終わればグラスを返すために列に並ぶ必要もない。まして近隣のベルギービールバーでは期間中に専用グラスを持って飲みに行くと割引が受けられるところも多数ある。こればかりはどちらに軍配を上げることもできない。
ブースについて
ベルギーでは醸造所ごとにブースが分かれている。(唯一の例外はトラピスト。ここだけは各修道院のビールが一つのブースで飲める)日本ではインポーター毎にブースが分かれているため、1つのブースで複数の醸造所のビールを扱っている。これに関してはあまり差がないように思われる。大きな違いを上げるとすれば、日本には食べ物のブースがあることだ。ベルギーではそこかしこにビールによく合うフードが売っているため、持ち込みで間に合わせている。しかし、ほとんどの人が何も食べずに飲んでいる。ビアバーなどではおつまみ程度のものすらおいていないところもあるほどなので、飲むことと食べることを別に考えているのだろう。そして、日本ではそう簡単にはベルギービールに合うベルギー風の食べ物が調達できない。持ち込みを禁止してフードのブースで買うようにアナウンスがあるのは本場の料理とのペアリングとともにビールを楽しんでほしいという主催者側の想いがあるのだろう。確かに安いとは言えないフードではあるが、会場内で調達してほしい。
会期中のイベント
日本では毎日アーテイストが日替わりで登場。ライブパフォーマンスが会場を一体化する時間がある。しかし、ベルギーではメイン会場とサブ会場に分かれており、メイン会場では数名の(そう、千葉にある王国のボタンがいっぱいついたパーリーバンドのような…といっても理解できる人は少数かもしれない)小さなバンドの演奏が突発的にどこかのブースの前で行われるだけだ。しかし、会場の外の通路を盛装してグラスを持って練り歩く人たちがいた。セレモニーなどもサブ会場で行われていたところを見ると、メイン会場はビールに特化しているように思われる。
エンディング
日本では最終日のイベント終了後、ビールを飲み終わるまでいても基本的には黙認してもらえる。もちろん問題行動を起こさなければ、というのが大前提ではある。しかし、ベルギーは違う。まず、終了時間が金曜日は23時、土曜日は22時、日曜日は21時…そう、最終日は夜もこれから、という時間に終了となるのだ。当然、終了時間になっても飲み足りない人たちばかり。それを時間通り21時になると警官が強制排除を始める。警官は酔っ払いの言葉に耳を傾けたりはせず、淡々と職務をこなしていく。何とか理屈をつけては飲みたいという要求を通そうとする酔っ払い。しかし、警官にかなうはずはなく、排除された酔っ払いたちは近隣のバーに駆け込み、続きに興じる。
総じて日本のイベントのほうが、というより日本人のほうが酔っても品良くビールを飲んでいるという印象を受けた。楽しんで盛り上がっているか、という観点ならいい勝負だ。そんなベルギービールウィークエンド東京2015は9月15日から六本木ヒルズアリーナにて開催される。ベルギーと遜色ない品揃えと会場脇のボトルビール販売コーナーも魅力の一つだ。ベルギーでのウィークエンドを経験している人も、そうではない人も、楽しめばいい。自らが盛り上がることでイベント自体のボルテージも上がっていく。東京のイベントの主役はあなただ。
□ベルギービールウィークエンド東京2015
期 間 9月15日~9月23日
場 所 六本木ヒルズアリーナ
公式HP https://www.belgianbeerweekend.jp/ja/bbw-home
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。