日本人向けのバーレイワインが造りたい!~大手OB技術者集団による熱き挑戦~〈2〉
ビールに愛された皆さまへ。
「おいしい!」「カンボジア王国原産」「アルコール度数12%」という、なぞに満ちたバーレイワインを生み出したウェラワン株式会社の代表 藤原孝行氏へのインタビュー記事の第二弾!
前回のお話はこちら。
今年の製品について熱く語る藤原氏
クラフトビールへの挑戦 ~クラフトエールスターのはじまり~
海外で商品を作り日本に輸入して売るというのは円高のうちはいいのですが、アベノミクスの影響で円安が進んだことで、輸入業としては苦しくなりました。そこで、次の一手を考えたのです。今、クラフトビールって流行っているでしょう。すでに20年も地ビールを作っているブルワリーが様々な挑戦をし始めているので、当たり前のことをしていては、勝てない、楽しくないと思うのです。
ならば。私たちが勝負できるところはなんだろうと考え、自分たちの強みである高い技術力を生かしたものを、日本のビールの常識に挑戦するということで、ハイアルコールのバーレイワインを作ることになりました。高いアルコール度数のビールを作るのは、技術的に難しいですからね。もちろん、アルコール度数が高いだけではない、おいしいものを作ることが大切です。
現地醸造工場
ハイアルコールのビールは東南アジアの現地でも大変好まれて多く飲まれています。8%ぐらいのビールを、氷の入ったグラスに注いで飲むのです。向こうは冷蔵庫が完備されてない場合もありますから。また、バーレイワインは、マレーシアやシンガポールをはじめ、オーストラリアやニュージーランドといった海外でも需要があると感じられました。高いヨーロッパのものを1本1000円近い価格で販売しているシンガポールの華僑商社とも、取引の交渉をしている最中です。
ナイトマーケットへの展開
このバーレイワインの企画を考えたのが、2015年の2~3月ごろ。商品化に至ったのは、同じ年の9月でした。そこから通販で販売を始めましたが、知名度が低いために最初のうちは苦戦していました。
そんな中、バーテンダーやソムリエ、飲食店経営者などの勉強会で、ナイトマーケットへの進出を勧められました。
うちは今迄、スーパーマーケットなどのOEM商品で家庭消費の購買層への販路を取っていましたが、このクラフトエールスターは、バーやパブ、レストランなどで非日常を楽しみながら飲んでもらうナイトマーケットが向いているのではと気づきました。また、知名度を上げるためにビアフェスに参加するように、というアドバイスもありました。
ビアフェス東京に出展したのが今年の春。珍しいのか、面白がってくれて、かなりのお客様に好評を得ました。次のビアフェス大阪にも参加したところ、ここでもまた、多くのお客様に気に入っていただき、お土産ビールも200セット持って行ったところ、すぐ売れてしまいました。
さらに、ビアフェスの一番のメッカは横浜ということなので、今度は9月のビアフェス横浜に参加したところ、かなり良い反応をもらいました。お土産ビール200セットはあっという間に売り切れてしまい、あわてて追加分を作ったほどでした。
また、飲食店関係の方々がブースに見えて、「うちの店で扱わせてもらいたい」「ボトルビールで入荷したい」というお声を多くいただきました。良い情報も集まり、かなりの手ごたえを感じています。
ヴィンテージのバーレイワインへ
今年のクラフトエールスターは、ナイトマーケットに受け入れられやすいようにボトル製品を作りました。長くゆっくり楽しんでいただけるように甘味をおさえた味わいにしています。今後はこの味をスタンダードとして、味のマイナーチェンジを続けながら、「 日本人に合うバーレイワイン 」を訴求し、落としどころを見つけていきたいと思っています。ホップがしっかりきいているようなアメリカや海外製品のバーレイワインを基準にはしていません。そういった固定観念の無いところで作っていこうと思っています。
去年の商品を改めて味わってみたところ、驚きました。最初の記憶していた味と異なり、より熟成が進んでいたのです。ワインやウイスキーのように樽の中で酸化を続けて熟成するものではなく、缶の中の成分だけで熟成を続けていて、味わいが深くなっていくのだとすれば。バーレイワインというのは、単なるハイアルコールで長期熟成というだけの名称ではなく、ずっと熟成を続ける、そういう意味なのだと改めて思い至りました。なので、今年の製品からは年号を入れたヴィンテージにしたのです。消費期限も延ばしました。2015年ものは、また来年も味わって熟成が進んでいい状態であれば、プレミアムとして売り出すことも考えています。
今後の展望
バーレイワインは、本当に面白いと思います。これから出すものについては味わいや度数を変えてみたり、同時に前年ものの熟成具合を見たり、変化に富んでいくと思います。
12月からいよいよナイトマーケットへ展開していきます。東京ではなく、非日常を求める観光客で賑わう、感度の高い地方都市からのスタートです。
まず最初は、札幌を予定しています。ビールの世界の広さ楽しさを手軽に感じていただける価格設定を予定していますので、驚きをもって歓迎されることでしょう。
クラフトビールが主に消費しているのは東京の23区内、横浜・川崎でも中心地ぐらいといわれていましたが、販売店からの取り扱いの問い合わせなどもあり、今後じわじわと拡がっていくだろうということが感じられます。
これからはバーレイワインとしてのブランドの確立を目指しています。バーレイワインが面白いものだと気づいたら、他のところもどんどんやってくることでしょう。大手がまだ参入していないところなので、早く進めていきたいです。
考察
クラフトビール(あるいは地ビール)は、ある土地から生まれ、そこから東京や大阪、日本全国へ(さらには海外へ)、という経路をたどって知名度と売上を上げていくものだが、このウェラワンは海外工場がスタートで、最初から全国や海外へと広がる販路を目指している、異色のブルワリーである。
藤原氏は、大手有名企業である程度の役職を務めてきただけあり、培ってきた土台ありきの余裕と自信が感じられる。昭和という激しい時代を支え駆け抜け、巨大企業にあって海外の国や企業との折衝などをしてきたのだから、柔和な笑顔の裏で、人一倍の苦労を重ねて経験を積んだ相当の猛者であろうことが想像される。なにしろ、バックグラウンドの規模が桁違いなのである。
マイクロブルワリーが、「大手のビールと比べて異色」たる、個性的で土地の特色を生かしたクラフトビールを作り出す歴史を20年重ねたところで、大手企業OBによる「クラフトビール界における異色」のビールが生まれてくるというのは、なんともいえないパラドックスのように思える。さまざまなタイプのブリュワーが現れる、まさに群雄割拠の新時代を楽しめることは、我々ビアファンには大変興味深く、面白い時代になってきたのではないだろうか。
来年はあなたの街のレストランや居酒屋で、このリーズナブル価格でおいしいバーレイワインが提供されているかもしれない。
ウェラワン株式会社
問い合わせ先
TEL:03-3231-6760
商品取り扱いページ
http://www.rakuten.co.jp/hopstar-walawang/
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