料理の美味しさを引き出すフルーツタイプを知っていますか? 【ビール誕生秘話 3本目 SPRING VALLEY BREWERY JAZZBERRY編】
「開発中、社内からは否定的な扱いされることもありました」
2017年9月7日、京都に3店舗目をオープンする「SPRING VALLEY BREWERY(以下、SVB)」は、東京と横浜ではオープンから2年で、のべ50万人以上が来店した人気のブルワリーだ。ここにはコアシリーズとよばれる定番6種類のビールがある。そのなかの1つ「JAZZBERRY」はペアリングの楽しさを実感できるビールだ。フルーツタイプというカテゴリーには収まらない魅力はどのようにして誕生したのだろうか。
知見の少ないフルーツタイプへの関心が原点!
「ラズベリー果汁を加えて醸造した爽やかな飲み口と、華やかなルビー色の液色が特徴。フルーティーなホップ香とほのかなラズベリーの香りの調和した個性的な味わい」これが「JAZZBERRY」だ。
開発者である古川淳一氏はなぜ、このビールを造ろうと思ったのか?
「私が開発に参加した当初、SVBのコアシリーズとして『496』については少し具体的なイメージがありましたが、その他は『3〜5種類を出そう』ということ以外、ほぼ何も決まっていませんでした」と当時を振り返る。
そこで5種類を用意することを想像したとき、「色彩にバラエティがある方が絶対に良いということと、社内でフルーツタイプの知見があまりなかったことから採用されたら面白いなと思い、取り組むことにしました」と開発のきっかけを話す。
名前については「容易に想像できると思います」というように「JAZZ」と「BERRY」を合わせた造語だ。「ジャズに対して、既存のジャンルを理解した上で、それらを組み合わせたり、即興による変化を加えたりして、新しいものを作っているイメージがありました。当社の商品やランビックといった伝統的な製法も参考にし、遊び心を持ちながら新しいものを造る工程が、自分のジャズへのイメージと重なりました」とネーミングの由来を語った。
ビールらしさを保つバランスを追求して
「『黒ビール、ヴァイツェン、樽熟成したビール。フルーツやトマトといった食材も頭に浮かびました』とビールに色を呈する様々な食材を試しました。最終的に色も味も良かったラズベリーを何種類も試して絞り込み、選択しました」と食材を決定するまでを話す。
役割分担として、幅の広がりを示すポジションと考え、色も含め小さくまとまらず、特徴のある香味の中でバランスを取ることを心がけたというが具体的にはどんなことだろうか。
「ラズベリーとホップ、発酵、それぞれの香りのバランスや、酸味、甘味、苦味のバランスです」と語る。
例えばラズベリーの酸味を和らげるためには、甘味をつけることが考えられ、度が過ぎるとカクテルみたいになってしまうという。そうなると、後味含めた味のインパクトがかなり強くなり、ビールでやる意味がなくなると古川氏は考える。
「JAZZBERRY」は香料や着色料を使用していない。そのため、製法の決定には苦労をしたという。「ビールの風味と調和させるために、発酵中にラズベリーを添加しました。投入のタイミングや温度で、ラズベリーの色や味が大きく変わることや、発酵そのものに影響を与えることがわかり、その塩梅を決めるのは大変でした」。さらに「開発中に否定的な意見をもらうこともありました」と新たなチャレンジは順風満帆ではなかった。しかし、古川氏は「ワインもぶどうを使っているので、他のフルーツも食事との相性はそんなに悪くないのではないかと思っていました。ケータリングを頼んで、色々と合わせて評価しながら味のバランスを考えていきました。」とこのビールの可能性を信じ続け、完成をさせた。
ビールだけでなく、料理との相性の良さが評価を得た!
コアシリーズの一角を担うビールは発売後、古川氏にとって嬉しい展開となった。
「まず色について非常に高い評価をいただきました。味とのギャップも小さく、自然と受け入れられました。味もラズベリーの酸味を活かした、甘すぎない骨格への共感、ビール感とフルーツ感に対するバランスの良さ、ビール入門に良いなど、狙った反応が得られてよかったです。色と味が特徴的であるため、『平均的に好き』よりも『すごく好き』との反応が多くあったことは嬉しかったという。
なかでもビールを愛飲しない人たちが多く味にハマっていたことも印象的であったと加える。
さらに嬉しいこともあった。「SVBのメンバーが色々、ペアリングを試してくれた結果、お客様にも食事との相性についても一定の評価いただいていることは非常に嬉しかったです。頑張ってやってきたことや自分が思っていたことは間違いではなかったのかなと思いホッとしています」と喜びを語る。
実際に料理との相性の良さを高く評価する料理人やビール専門家も多い。当協会、藤原ヒロユキ代表は「ビールだけで飲むこともおすすめですが、料理とのペアリングでそのポテンシャルが一段と発揮されます。酸味のある料理、鴨やイノシシなどのジビエ、ベリー系のスイーツはもちろんですが、マグロやカツオといった血合いの味が強い魚やイワシやサバといった背の青い魚にぴったりです。また、酢飯に合うので寿司との相性も抜群です。」と魅力を語ります。
さらに和食ダイニング まぐろ問屋 十代目彌左エ門などを展開する桑田士誉氏は「料理との組み合わせを考える上で、口内調理をした際のドレッシング感覚がイメージできます。冷たい前菜など、サラダ仕立てにフルーツを入れるのと似ているかもしれません。温かいお料理において、ビネガーの効いたソースを用いる料理などはちょっとしたフルーツフレーバーで楽しめ、ペアリングがしやすいと思います。決して甘味の強い仕上がりではないことが、素材との相性をみせる1つの要素かもしれません」と話す。
冒頭で衝撃と述べたが、このビールに出会うまでフルーツを使ったビールを寿司に合わせようという考えはなかった。絶妙なバランスを考え抜き、醸造したからこそペアリング領域でも高評価を得られていると思う。
最後に生みの親として古川氏は今後にどのような期待をかけているのかも聞いてみた。
「SVBにおけるビール入門としての可能性が、あるのではないかと思っています。それと熱心なファンが徐々に増え、『ビールって面白い!』と感じてもらえる一助になればといいです」とのこと。
「フルーツ」と「ビール」の魅力を最大限に引きだし、単体での美味しさだけではなく、ペアリングの素晴らしさを体感させてくれる「JAZZBERRY」。これからも様々な場面で、多くの方たちを魅了していってくれることだろう。
◆JAZZBERRY 商品概要
原材料:麦芽(大麦麦芽・小麦麦芽)・ホップ・ラズベリー
Key Hop:Galaxy
アルコール度数:5%
IBU:15.0
※ 日本の酒税法上の区分では発泡酒
商品購入:KIRIN ONLINE SHOP DRINX(http://www.drinx.jp/beer/svb/jazzberry/)HP
より購入可能
お問い合せ:0120-111-560
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