初陣柚子と正面から向き合う~その2~
初陣柚子と正面から向き合う~その1~の続きです。
クミン塩との出逢い
普段なら揚げ物としてフリッツを注文するタイミングだが、今回は長野県産産直きのこのベニエ。産直だけあって日によってキノコの種類が違うというのも個人的にはポイントが高い。キノコはエリンギ、マイタケ、しいたけ、あわび茸、ヒラタケの5種類。どちらかというと天ぷらに近い薄くてサクサクとした衣がついている。これにクミン塩が添えられている。これはビールが冷たいとベニエの熱さとの対比を際立たせ、よりおいしく感じられる。初陣柚子の少し温くなって苦みがまろやかになったものよりは味わいもシャープな冷たいほうが良い。ベニエが到着してすぐに初陣柚子をおかわりしたために発見しただけだが、温度もペアリングをする上で大事な判断基準であることを再確認できた。しかし、それをも吹き飛ばすような大発見があった。初陣柚子とクミン塩との相性だ。
クミン塩を合わせたら
クミンのほろ苦さと塩味、柚子ピールの苦さとの融合。日本酒は塩で飲む、という人がいるが初陣柚子ならクミン塩で飲める。数分前に茹でたアスパラと初陣柚子が最高、なんて考えていた自分を一喝したいほどだ。メインの注文をキャンセルしてずっとクミン塩と初陣柚子を楽しんでいたい衝動。「最高だなぁ、おい」とクミン塩に話しかけたくなるレベル。
メインは丸鶏の石窯ローストチキン。ローズマリーの香りとパリッと焼いた皮がまた食欲をそそる。シェフの実力と石窯のマリアージュ。皮がパリッ、噛むと肉汁がジュワー。丸鶏をひとりで食べられるかもしれないほどの美味しさ。しかし、ペアリングとなると柚子とローズマリーが合わない。柚子の柑橘特有の爽やかさがローズマリーに打ち勝ってしまう。柑橘がスパイスに打ち勝った瞬間を残念な思いで飲みこもうとしたとき、思わぬ助太刀の存在に気が付いた。ベニエに添えられていたクミン塩である。ベニエを食べきる前にお鶏さまのご入場となったため、気がついたら鶏のそばにはクミン塩がいたのだ。鶏の上にローズマリーを添え、クミン塩をパラリと振りかける。頭の中には劇的ビフォーアフターのあの曲とともに「なんということでしょう」というナレーションまで流れている。クミン塩がローズマリーの加勢をすることで柚子の爽やかさと対等の立場となり、それぞれの風味が口の中で広がっては味わいがより豊かになる。クミン塩だけでもおいしいのだが、このローストチキンに限ってはローズマリーとも融合させたほうが鶏もビールもよりおいしく感じられる。
そしてデザートにはバニラアイスのレモンクリームソース。強めのミントが口の中を強制的にリフレッシュしてくれる。レモンソースは弱め。これは丸鶏のローストとは逆に柑橘連合が負けてしまった。そして、残念なことにレモンクリームソースはいいが、バニラアイスと初陣柚子が全く合わない。これに関してはだらだら飲まずにコーヒーか紅茶を選択すべきという結論に達した。デザートにもクミン塩をかけるべきか迷った末に止めたのは正解だったのか…。
感想
初陣柚子という縛りを設けていてもここまで楽しめるのだから、いつものように好きな料理と好きなビールを組み合わせれば無限の楽しみが広がることだろう。今回は私を含め、3人のビ女(ビール好きの女性、である。美しさが微かという意味ではない)での訪問だったが、「今度、いつ来る?」、「次のときはこれも食べたいね」などメニューを開いてはキャッキャとはしゃぎながらの飲み会となった。イベリコ豚の石窯ローストコースなら7品3,000円からと六本木とは思えないような価格設定なのもうれしい。秋になればテラス席も気持ちいいだろう。今度は誰を誘おうかとワクワクしている。今度はいろいろなビールを飲みたいという気持ちはあるのだが、初陣柚子をおかわりする自分や初陣柚子の樽とボトルでペアリングの比較をする自分が容易に想像できる。思い描いてしまったらもう我慢などしていられない。今夜は初陣柚子を飲みに六本木まで繰り出そう。
■RIO BREWING & CO. BISTRO & GARDEN
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■デリリウムカフェ ブティック(ボトル販売)
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