“失われた香り”を取り戻す異端のビール、クラウドファンディングの意図に迫る!
「あるときに普通の方がオフフレーバーを認識しないでビールを飲んでいて、『美味しい』と話されていることがありました。そこで、『自分たちが意図的に消してきた香りはもしかしたらその必要はないのではないか?』という考えが湧き上がってきました」
7月24日にジャパンプレミアムブリュー株式会社(以下、JPB)が思いもよらぬ挑戦を発表しました。ビール製品ではあってはいけないジアセチル(ダイアセチル)という香りを活かした“バターを思わせる香りのビール”をクラウドファンディングで造るというものです。すでに熱心なビアファンの方は詳細はご存じだと思います。発表直後から様々な反応があがっています。マスターブリュワー(醸造責任者)である新井健司氏にプロジェクトについて聞いてきました。
専門家の考え≠ユーザーの好み
なぜ、この企画を考えたのかを訊ねると冒頭の言葉が返ってきました。ビールにはオフフレーバーという「醸造工程の中で意図的に消している」香りがあります。新井氏も新入社員時代に官能検査の際に、このように学んだといいます。ただ、それを鵜呑みにしていませんでした。
「実は研究所時代に実験をしたことがありました。2つのグループをつくり、1つはビール醸造の知識があるエキスパートたち。もう1つは、ビール醸造にはなじみが無い人たちです。各々のグループに、色々なオフフレーバーを強調したビール飲んでもらう知覚試験を行いました。その結果、予想通り、エキスパートたちはほぼ全部オフフレーバーとして認識しましたが、もう一方のグループでは一部のオフフレーバーに対して、『この香りがあるからビールらしい』という評価を得たんです。この結果から、使い方次第で、オフフレーバーは好ましい香りになると考えるようになり、いつかうまくオフフレーバーを活用したビールを造れないかと思っていました」
これが、“失われた香り”のきっかけとなりました。
「ジアセチルを選んだのは、醸造段階でしか現れないものだからです。一般的には、この香りが含まれてないように、醸造工程中で消してしまいます」と普通のビールでは感じることができない香りというのが理由とのこと。
All or Nothing(オールオアナッシング )未達成ならお蔵入り!
当然、醸造部門の反応は否定的だったといいます。「気でも狂ったか!? という反応もありました。試行錯誤を重ねた試作品を醸造部門のメンバーに実際に試飲してもらうなどして、なんとか許可が降りました。ただ、かなりマニアックなビールになるので、『なぜ、このビールを造ったのか』とバックボーンに共感してくださった人たちに飲んでほしいと思い、クラウドファンディングでの販売を採用しました。今回はオールオアナッシングで、目標金額に届かないと製造はしません。完全にお蔵入りです。達成しても1度しか造りません。一般発売もありません」と飲めるのは出資した人だけとなります。
「ビールへの注目が高まっているこの時期に大手ビール会社(※1)として、ビールがもつ楽しさ、面白さを多くの人に知ってもらいたいという思いがあります。業界を底上げできる行動を起こすことで、文化として定着させる方法の1つとしてチャレンジしました。また、アプローチ次第では既存の考え方とは違う発想で、様々なことに取り組める面白さがまだまだビールにもあることを示したかったです。」と、このタイミングで造ることを決断したようです。
※1 ジャパンプレミアムブリュー株式会社はサッポロビール株式会社の100%子会社
シェアでの出資も大歓迎!
「開始してからの反応はビールファンの認知度は高いですね。リターンや本数については『ハードルが高くて悩んでいる』といった声はいただいています(13,000円の場合 350ML×24本。出資金額により条件は異なる。詳細はHPを参照してください)。本数についてはこちらが予想していた以上の難関になっているとわかりました」と課題も見つかったとのこと。
同行したビアジャーナリストから「共同で出資して、シェアする人たちもいますね」と新井氏に伝えると「そういうのも面白いですね。鮮度が良いうちに飲んでほしいので、1人で飲みきれないという方はシェアでの出資をよろしくお願いいたします(笑)」と関心を示されていました。「1人ではハードルが高いな」と考えている方は友人を誘って、シェアをしてみてください。1度きりしか味わうことのできない禁断のビールを体験できるかは、みなさまの出資にかかっています。
認知度については、ビールが好きな人たちにはしっかりと届いているという実感はあるとのことですが、目標達成に向けては、違った層に関心をもってもらえるようアプローチを検討しているとのこと。
時代とともに味の好みも変化が生じてきます。パクチーは、いい例ではないでしょうか。以前はカメムシの香りと評され、苦手な方が多かったものが、最近では好んで食べられるようになっています。バターのような香りといわれるジアセチルももしかしたら思わぬ評価を得ることになるのかもしれません。
クラウドファンディングは9月10日(日)までです。興味のある方はぜひ、出資してみてはいかがでしょうか。醸造のポイントについてはホームページの動画をご覧になってください。
◆“失われた香り”を取り戻す、「最初で最後の異端のビール」 Data
会社名:ジャパンプレミアムブリュー株式会社
所在地:東京都渋谷区恵比寿4-20-1
Homepage:www.sapporobeer.jp/jpb/index.html
Facebook:www.facebook.com/craftlabel/
クラウドファンディング期間:7月24日(月)~9月10日(日)
リターン:ホームページにてご確認ください。
本商品はサッポロビールネットショップKANPAI+から発送されます。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。