[コラム,ブルワー]2017.10.21

ブルーパブからクラフトビールを広める! 【ブルワリーレポート BREWPUB TÊTARD VALLÉE編】

2016年8月の醸造免許取得から1年強で、アジア・ビアカップやインターナショナル・ビアカップ(以下、IBC)といった国際的ビール審査会を受賞したブルーパブが大阪城のすぐそばにあります。それが今回、ご紹介する「BREWPUB TÊTARD VALLÉE(以下、テタールヴァレ)」です。1度の仕込みが200Lという小規模醸造所は何を目指しているのか? 話を聞いてきました。

クラフトビールの「サードウエーブ」であるブルーパブを広めたい!

テタールヴァレが起業から目指しているものがあります。それが、「ブルーパブ業態を日本に広める!」ということ。それは何故でしょうか。

「まず、クラフトビールを飲む場所が少ないということです。そのなかで、ブルーパブは規模が小さく、流通も通さないので、コストを抑えて提供できるので、絶対数を増やしやすいと考えています。私たちのコンセプトでもある『クラフトビールを知らない人が最初に触れやすい場所』としても良いと思いました」とその希少性、将来性に強い魅力を感じ、発展には不可欠なものと話すのはオーナーブルワーである松尾弘寿氏です。

「ブルーパブの強みとして、ブルワーがサービングや接客できることが魅力です。造り手が直接お客様とコミュニケーションを取って、フィードバックを受ける環境というのはそう多くありません。双方に取って魅力的な仕組みと感じています」と魅力について語ります。

入門の場と考えているため、ビールの特徴は「ドリンカブルであること。クラフトビールに馴染みのない人でも違和感なく楽しんでいただける味を常に意識しています」とのこと。この方向性がオープンから受け入れられ、当初は週1回の仕込みであったが、現在は週数回、仕込むほどの売れ行きとなっています。

1回の仕込みは200L。当初の目標よりも多くのビールが飲まれているため、週数回の仕込みを行っている。「数多く、仕込めることで、色々なスタイルにチャレンジできている」という

「もっとクラフトビールを飲みたい!」がきっかけ

「もともと、クラフトビールの一ファンとして長年飲み手でした。自分で造ったほうが『もっとクラフトビールをいっぱい飲めるなぁ』と思ったのが純粋な動機です(笑)。以前より飲食店での起業を志していました。そのなかで、ブルーパブにしたのは、この業態を東京で知り、目標としたためです」ときっかけについて教えてくれました。

店名の「TÊTARD VALLÉE」はフランス語でおたまじゃくしを意味する「TÊTARD」とスペイン語で谷を意味する「VALLÉE」から名付けています。その由来は、醸造の経験を積むため勤務した蛙がロゴの「國乃長ビール」の弟子ということで、おたまじゃくしと所在地である谷町からきています。

周囲はビジネス街ということで、会社帰りの方がよく訪れるという。多くの方がここでビールを造っているとは知らず、醸造設備をみて驚くという。

醸造1年での受賞!

「TÊTARD VALLÉE」がブルーパブ形態を広めていくうえで、重要視していることがあります。それは「ビールのクオリティ」です。当然のことですが、物珍しさから一時的な集客は見込めるかもしれません。しかし、それではブルーパブは根付いていきません。こうした思いから醸造開始から1年という短期間ながら、積極的に国際ビール審査会に出品しています。

受賞について「素直に嬉しいです。最小規模のメーカーとして、クオリティでもきちんと評価されることを1つ証明できたと感じています。それと同時に、継続して高いクオリティのビールを生み出し続けなければいけないというプレッシャーも感じています」と話します。

取材時は4つのビールが提供されていた。
左より与謝野町ホップを使用したTKY*IPA、ヴァイツェン、ベルジャンペールエール、ロブストポーター。常に新しいビールと出会えることもブルーパブの醍醐味

アジア・ビアカップではオーナーブルワーの松尾氏が設計、製造した「ロブストポーター」が金賞受賞。IBCでは初めて醸造の業務に携わった大学院生のアルバイトスタッフが設計、製造した、「ど・ライポーター」が銀賞受賞するという快挙を果たしています。これについては「自分だけでなく、アルバイトという働き方でも努力次第でクオリティの高いビールを生み出せると証明できたのは最大級に嬉しい」と語ります。「ブルワーの育成は今後の課題、目標」と今後は多くの優秀なブルワーを輩出できる仕組みを作っていきたいといいます。

オーナーブルワーの松尾氏(左)とバイスブルワーの北田氏(右)IBCで受賞した「ど・ライポーター」は北田氏が設計・製造したもの。
「ブルワーの育成が重要」と話すように様々な立場のスタッフが醸造に関わっている

多くの人の知恵と力を合わせ、クラフトビールの発展を!

今後は、具体的にはどのような展開を描いているのでしょうか。

「ビールについては、高いクオリティを提供し続けることです。お店については直営店だけではなく、ほかの飲食企業と協力することで、ブルーパブの絶対数を増やしていくようなフランチャイズ展開やコンサルティング事業といった多店舗展開が絶対条件と考えています。そのためには、必要最低限の投資に抑える仕組みや飲食店の運営と製造業の合理的なスペーシングが今後の課題となってきます。また、原料や設備、人材の供給などの横の連携を図り、規模のメリットが増えることが新たな事業になると思っています。そのためにも、ブリューパブの店舗同士のつながりを作る仕掛けを広げていきたいです」と話し、店舗全体の業務量が増大により、人材の確保やチームビルディング、マネジメントの重要性が高まっているといいます。特に人材育成は大きなテーマとのこと。

昼から営業しているため、主婦層の利用も多いそう。料理も充実しているので、女子会にもピッタリの場所だ

今回の取材を通じ、小規模醸造所が街に1軒あるとより身近にクラフトビールを触れる機会が多くなり、認知度も高まると感じました。多店舗展開のためにはブルワーやスタッフの確保、育成をはじめ、設備、各店舗のコンセプトなどクリアしていかなければならない課題もあります。特に関西圏ではまだ数少ないブルーパブ。これからテタールヴァレがどんな展開をみせてくれるのか。注目せずにはいられません。

◆BREWPUB TÊTARD VALLÉE Data

住所:〒540-0021 大阪府大阪市中央区大手通1-1-2 1F

電話:06-6809-5229

Homepage:http://brewpubtv.com/

Facebook:https://www.facebook.com/brewpubtv

お問合せ:http://brewpubtv.com/accesscontact

営業時間:月曜日~土曜日 11:00~23:00

定休日:日曜日

テタールヴァレブルワリーレポートブルーパブ大阪府松尾弘寿氏

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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