[新商品情報]2017.10.20

ビア女の酒場放浪記(41)生物たちの宝箱!奄美大島で乾杯「奄美はなはなエール」

奄美大島に、クラフトビールが誕生したのをご存じだろうか?

奄美大島は鹿児島と沖縄のほぼ中央に位置し約6万人が暮らす鹿児島県の離島。
飛行機で東京から145分、鹿児島から65分、主要都市からも直行便が出ている。

手つかずの自然が残る奄美大島は「東洋のガラパゴス」とも

奄美群島やその周辺海域は国立公園に指定されている自然の宝庫で、2018年の世界自然遺産登録を目指している。
琉球(沖縄)や薩摩(鹿児島)の影響を受けながら築いてきた独自の島文化も興味深い。
近年ではスローライフを送りたい人の移住場所としても人気だ。

そんな奄美大島で今年2017年8月に誕生したのが「合同会社奄美はなはなエール」のクラフトビールブランド「AMAMIGARDEN」
3種類のクラフトビール「たんかんペールエール」「黒糖スタウト」「パッションウィートエール」だ。

2018年NHK大河ドラマの主人公である西郷隆盛が3年間身を潜めた奄美大島龍郷の屋敷

血が呼んだ地域おこし協力隊の仕事

奄美はなはなエールを立ち上げたのは、泰山祐一(やすやまゆういち)さん。
東京で大手広告代理店の仕事をしていたが、奄美大島の瀬戸内町が地域おこし協力隊を募集していると聞きつけ、都会での生活を捨て2年前に奄美大島に移住してきたというユニークな経歴の持ち主だ。

クロマグロ養殖日本一をうたう瀬戸内町の巨大モニュメント前にて

「とは言っても、両親が奄美大島の出身・育ちで、島に祖父母や親戚がいるんです。幼少期より、時折遊びに来ていた奄美大島の自然や人が大好きで、いつかは島に住みたい、島の活性化に貢献したいと考えていました。島への移住は、きっと奄美の血が僕を呼んだのでしょうね」

そうはにかむように笑う泰山さん。
くっきりとした目鼻立ちは南方の島人特有のそれだった。

でもなぜ地域おこしでビールだったのだろうか?

「奄美群島で飲むビールはどれも土地にゆかりのない素材を使っています。乾杯にビールを注文する人は多いのですが、ビールを通じて島を感じることはできません。しかし、島の人たちと話すうちにクラフトビールに関心がある人も多いことがわりました。それなら奄美の魅力をビールで表現したいとビール事業に踏み出しました。私自身もビールが好きでしたので」

マングローブ林の中をカヌーで探検ができる。生物が多種多様であるのも島の魅力の一つ

泰山さんは島のビールを造るべく「合同会社 奄美はなはなエール」を設立。
2016年12月からビールの試作を繰り返し、地元の飲食店で試飲会をするなどして改良を重ねてきた。

副原料として、島の特産品であるパッションフルーツ、たんかん(亜熱帯性の柑橘類)、黒糖を選んだ。
果実は傷が付くなどして出荷できなくなったものを購入。
農業を盛り上げたいという気持ちから、一般的な相場より高い値段で取引している。
原料を岩手県にある「いわて蔵ビール」に運び委託醸造という形でビールを造った。
奄美の多種多様な動植物を表現したラベルは地元のデザイナー豊島ゆうなさん、ブランドデザインは従妹でもあるアマミデザインの染川司さんの協力によるものだ。

こうして完成したクラフトビールが「AMAMIGARDEN」
人間も含めた多種多様な動植物が共存する奄美群島の魅力を表現した3種類のビールだ。

島の内外からも非常に高評価で、早くも今年10月12日にはかごしまの新特産品コンクールの食品部門にて「鹿児島県観光連盟会長賞」を受賞した。

海の中も多種多様な生き物が。スキューバダイビングならこんなにもウミガメが近くに

泰山さんは来年の地域おこし協力隊任期終了後も島に残り、ビール事業などで島の発展に尽力するつもりだ。

「島には塩豚やパパイヤの漬物、鶏飯など、独自の島料理があります。島地ビールで奄美の食文化をさらに楽しくしたいと考えています。そしていつかは島の原料だけを使ってオール奄美で造ろうと計画を練っています。この活動を通じて、今後島人や奄美好きな人に愛されるビール会社を目指したいです」

次のステップとして来年秋を目標に、奄美に30KL程度の醸造所を建設する準備を進めている。
島でビールを醸造する人、もしくは醸造指導ができる人を募集中だ。

ビール醸造所としてだけでなく、地元の人や観光客が集まりたくなるような“楽しい場所作り”も視野に入れて活動を進めており、今後の展開が楽しみだ。

「奄美群島の素材を活かした美味しいビールを通じて、ここで暮らす人たちやお客さんたいの想い出となる乾杯を応援したいと思います。島の暮らしは本当に楽しいです。自然が豊かな奄美大島にぜひ遊びに来てください」

泰山さんの地域おこしは、まだまだ続いている。

会社の名前にもなっている「はなはな」とは、島口(方言)で「乾杯」を意味する。
奄美の自然に感謝しつつ、島口で乾杯しようではないか!

「はなはな~~!」

 

はなはな!のラインナップ

パッションウィートエール
フルーティーな酸味と甘みで喉の渇きを癒すのにもピッタリ

黒糖スタウト
ロースト麦芽の程よい苦みと香ばしさが黒糖のコクのある甘みにマッチ

たんかんペールエール
柑橘類の爽やかな香りと苦味が心地よい

【合同会社奄美はなはなエール】
住所/鹿児島県大島郡瀬戸内町清水127番地
http://www.amami-hanahana.com/

◆奄美大島の一部の飲食店で飲めるほか、店舗でも購入可。
http://www.amami-hanahana.com/shop

◆奄美大島になかなか行けない人にも島の味を届けるため通信販売を開始。
https://amami-hanahana.stores.jp/

◆ブルワー募集についてのお問い合わせ
Tel/ 080-8367-5976(泰山)
Mail/ y.yasuyama0128(アットマーク)gmail.com

AMAMIGARDEN奄美はなはなエール奄美大島

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

コウゴ アヤコ

ビアジャーナリスト

1978年東京生まれ。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールに惚れこみ1年半ドイツで生活したことも。『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『BRUTUS』(マガジンハウス)など様々なメディアで執筆。

最近はキャンプとサウナにドハマり中。そこにもやはりビールは欠かせない。最高の「ビアキャンプ」&「ビアサウナ」を求めて、日本全国津々浦々旅をしている。

■執筆歴■
-海外生活情報誌ドイツニュースダイジェストで「旅ールのススメ」連載中
ビール小話 (ドイツニュースダイジェスト)2009~16年連載
-東海教育研究所かもめの本棚onlineにて「旅においしいビールあり」
-クラフトビールで乾杯!(日本トランスオーシャン航空機内誌Coralway2020年9.10月号特集)
-ビール王国(ワイン王国)
-ビールの図鑑・クラフトビールの図鑑(マイナビ)
-BRUTUS(マガジンハウス)
-an・an(マガジンハウス)
-CanCam(小学館)
-DIME(小学館)
-東京人(都市出版)
-るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
など
■出演歴■
-アサデス。7(KBC九州朝日放送)
-KURASEEDS(J-WAVE81.3FM)
-食べて!歌って!まるごとユーロ!ドイツ語(NHKラジオ第2)
-トークイントーク(フレンズFM)
-売れ筋RANKING~クラフトビール(KTSライブニュース)
-よじごじDays(テレビ東京)
など

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