[コラム,テイスティング,ビアバー,ブルワー]2018.3.5

【静岡】研鑽が光るハウスビールと本物志向のテキサスBBQ!「OCTAGON BREWING」オープニングレポート

2018年2月22日、静岡県浜松市のまちなかにオープンした「OCTAGON BREWING」
グランドオープンに先駆けて、2月20日に招待者向けのプレオープンデーが開催された。

本記事では千葉ブルワーへのインタビューを交えて、プレオープン当日の様子と今後についてレポートする。
※ブルワリー詳細についてはこちら

 

ハウスビールの先手は「Hartside」と「Oude-Kwaremont

当日つながれた10タップのうち、ハウスビールとして登場したのは2銘柄、「Hartside(ハートサイド)」「Oude – Kwaremont(オウデ クワレモント)」

▲全タップの中から好きな4種類を選べるテイスティングセット「BEER FLIGHT(1,300円)」。左端が「Hartside」、左から2番目が「Oude – Kwaremont」

この名前を聞いてピンと来た人は、同店代表、平野氏と自転車レース談義に花が咲くことだろう。ハウスビールの名前はサイクルロードレースに登場するセクションに由来している。

【Hartside(ハートサイド)スペック:Dark Amber、ABV5.0%、IBU25

▲「Hartside」はイギリスで開催されるステージレース「ツアー・オブ・ブリテン」のゴールとなる峠の名前

鼻を近づけるとふわっと漂う、豊かなローストモルトのアロマ。
口当たりはマイルドで、口に含むとモルトフレーバーが醸し出すコクとうま味を感じながらも、後口は驚くほどすっきり。濃い褐色の見た目とは裏腹に、重すぎず、軽すぎず、サラッと何杯でも飲み続けられる味わい。液色からは想像できないドリンカビリティの高さだ。


【Oude – Kwaremont
(オウデ クワレモント)】スペック:White Beer、ABV5.0%、IBU15

オレンジピールの華やかさと、コリアンダーのスパイシーな香りが織りなす軽やかな飲み口。
ベルジャン酵母が醸す程よい酸味と小麦特有のやわらかさが心地よい。苦味はほとんどなく、フィニッシュに広がる爽やかなボタニカル・フレーバーが印象的。

▲「Oude-Kwaremont」はベルギーの伝統的な自転車レース「ロンド・ファン・フラーンデレン(仏語でツール・デ・フランデル)」に登場する石畳の坂にちなんだ名前

穏やかに香るハートサイドを口にして、「うん、うまいなぁ」と思わず声が漏れ、「オウデ クワレモント」の軽快さに心が躍る。同店のスタンダードになりうる2種類を初めて味わい、今後への期待が高まる。

―― この2種類ついて、こだわりやできばえを聞かせてください。

千葉ブルワー「どちらもケグ詰めをしてタップからサービングしたものは、タンクのサンプリングラインから出した状態よりもかなり良く感じられ、お客様に喜んでいただけるレベルにはなっているのではないかと自信を深めました。まず『ハートサイド』に関しては、予定よりかなり色が濃くドライになってしまい、想定した方向性とずれてしまったのですが、濃色麦芽を多く使用しているため焙煎香をしっかり感じつつも飲みやすい仕上がりとなり、結果的に悪くないところに着地してほっとしています。これからさらにブラッシュアップして、すっきり飲んでいただけるビールとして後味の雑味をさらに減らしていきたいと思っています。『オウデクワレモント』は、オレンジとコリアンダーの香りの強度を調整するのに苦労しましたが、オレンジ感もスパイシー感も支配的すぎないレベルで、しっかり風味を感じられる絶妙なバランスに仕上がったと思います」。

―― 新しい醸造設備は問題なく稼働しましたか?

千葉ブルワー「正直に言えば、安定稼働にもっていくまでのトラブルは少なくなかったです。今抱えている課題としてはマッシングの温度調整機能のコントロールですね。今後も設備の個性を把握しながら、ベストな運転管理をリサーチしていきたいと思います」。

ハウスビールの次に味わったゲストビールも、ミッケラー、ニューベルジャン、シエラネバダ、モダン・タイムスなど定番の有名どころから、ニュージーランドで注目を浴びる「トゥアタラ」、日本初上陸したばかりのオレゴンの老舗ブルワリー「フルセイルブルーイング」など、多彩なゲストビールがベストコンディションで提供される。

▲待ちに待った街のブルーパブのオープン。平日ながら店内は活気にあふれた

平野氏に聞けば、関係者中心のレセプションではビールの好みが見事に分散したそう。

平野氏「自社ビールだけに人気が集中するのも狙いとは少し違うんです。幅広い好みに応じた味わいで、豊かなビールの世界を楽しんでもらいたいと思っているので、好みが分散したことでビールの多様性を感じてもらえたのではないかと。プレとしてはまずまずの手ごたえを感じています」。

この日のゲストは事前に開催されたイベント参加者が中心。
これまでのイベントを通して、ハウスビールを心待ちにしていた人々だ。

▲ゲストにサンプラーの説明をする千葉ブルワー(左から2番目)。熱心にメモをとる人も見られた

テイスティングセットのオーダーが立て込み、カウンターが慌ただしくなるときもあったが、千葉ブルワーは弾んだ表情でひとつひとつ丁寧にサービングし、ゲストに提供していた。

―― プレオープンの日はどのような心境でしたか?

千葉ブルワー「この日は初めて一般の方をお迎えする初日でしたが、人数はその前に開催したレセプションよりは少なかったので、今まで以上に喜んでいただけるような接客やサービングにこだわりました。クラフトビールに詳しい方もいらっしゃったので、自分のビールがどのように感じていただけるかが気がかりでしたね」。

 

スモーカーでじっくり燻す、テキサススタイルのBBQ

料理の目玉はテキサス式のスモークBBQ
主にアメリカ南部を代表する伝統料理だ。その特徴は「Low & Slow」。低温で長時間、薪を燃やして燻し、食品を保存がきく状態に加工するネイティブアメリカンの食文化として受け継がれている。それは日本式の薄切りの肉や野菜を直火で焼くバーベキューとはまるで違う。日本ではまだなじみの薄いスモークBBQだが、同店のBBQ料理は実に本物志向。アメリカから直輸入したスモーカーで低温の燻煙を10時間以上あてながら、じっくりと燻したビーフブリスケット(肩バラ肉)、プルドポーク(腕肉や肩肉をほぐしたもの)、ポークスペアリブなどをビールと一緒に楽しむことができる。

▲「Smoked BBQコンボ(Large 3~4人前/4,200円)」、パンにサラダと肉をサンドして食べるのがポピュラーな食べ方【画像提供/OCTAGON BREWING】

長時間スモークされたことで形成される「バーク」と呼ばれる黒い表面と、紅色のスライス面「スモーク・リング」が完成度の高さを物語る。部位によって噛み応えのあるしっとりした肉質と、やわらかくジューシーな味わいの両方が楽しめる肉盛りプレートだ。香辛料と酸味のきいたバーベキューソースを添えるとまた食が進む。

▲昨年はBBQの本場テキサスに視察に訪れた平野氏。「レシピがほとんど載ってなかった」と苦笑いする洋書の数々では、アメリカの伝統的な食文化と歴史について、その根底にある哲学から学ぶことができる。

テキサスBBQへの情熱と本物志向のプレートを前にして、同店は自家製ビールとスモークBBQ、その両方が目玉であることがわかる。怒涛のオープンから一週間が過ぎ、千葉ブルワーに現在の心境を伺った。

―― オープンから1週間経った心境と今後の予定を聞かせてください。

千葉ブルワー「改良の余地はあるものの、今のところ恥じることのないレベルの自家製ビールを提供させていただけたと思っています。ゲストビールに関しても、徹底的にコンディションにこだわっているため自信をもっておすすめできる状態です。これからもこの状況を維持、さらに改善していくとともに、早めに次の仕込みに入ってさらに完成度をあげたビールを提供できるように頑張りたいと思います。次の銘柄は肉料理と合わせてさっぱり飲めるタイプなどを考えていて、3月下旬から4月上旬あたりに提供できればと考えています」。

最大5種類を予定しているハウスビールには、まだ未知の味が控えている。
現在提供中の2品種も、千葉ブルワーのストイックな探求心と研鑽が、ますます良質なビールへと進化させることだろう。
今後はさまざまなイベントも予定している。

【イベント情報】
「What’s Smoke BBQ」
スモークBBQにおいて国内随一の情報量を誇るブログ「Yasunaga」の主宰ヤスナガ氏を招き、アメリカ南部の名物料理「Smoke BBQ」の基本的なことから、昨年11月に平野氏と視察した本場テキサスの最新事情まで語るトークイベント。
・日 時:3月10日(土)、18時~21時
・参加費:3,000円(ハウスビール1杯+スペシャルBBQコンボ)
・定 員:12名(先着順、要申込)
・問合せ:info@octagonbrewing.com
・申込先&イベント詳細はこちら

「PAPERSKY ツール・ド・ニッポン in 浜松
~街の魅力をつくり出す人たちに出会う 気になる街・浜松をめぐる春の自転車旅~」
雑誌PAPERSKY主催、日本の魅力再発見の旅プロジェクト。浜松伝統の大凧あげに挑戦し、OCTAGON BREWINGでビール試飲、手打ちそばや浜松餃子を楽しむ浜松ローカルの魅力をめぐるウォーキングツアー。
・日 時:3月24日(土)
・申込先&イベント詳細はこちら
※イベント詳細や最新情報はfacebookなど公式SNSでご確認を

▲慣れない設備に苦心しつつもようやくこの日を迎えた千葉ブルワー。その表情はどこか晴れやかだ

OCTAGON BREWINGのテーマである「Drink with neighbors in neighborhood 」
ふと気がつけば、隣り合った人と杯を傾けていた。
このビールがご近所で飲めるとしたら、きっと毎晩足を運んでしまうだろう。

浜松に、通い続けたいブルーパブができた。

 

【店舗情報】
「OCTAGON BREWING」 
住所:静岡県浜松市中区田町315-25
電話:053-401-2007
営業時間:日・月・火・木/18:00 ~ 23:00、金・土/17:00 ~ 24:00
定休日:水曜日
メール:info@octagonbrewing.com
公式HP:http://octagonbrewing.com/
公式facebook:https://www.facebook.com/octagonbrewing/
公式Instagram:https://www.instagram.com/octagonbrewing/

Octagon Brewingオクタゴンブルーイング浜松静岡

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

山口 紗佳

ビアジャーナリスト/ライター

1982年愛知県知多半島出身、大分県大分市在住。中央大学法学部卒業。
名古屋で結婚情報誌制作に携わった後、東京の編集プロダクションで企業広報、教育文化、グルメ、健康美容、アニメなど多媒体の編集制作を経て静岡で10年間フリーライターとして活動。現在は大分拠点に九州のビール事情をお伝えします。

【制作実績】
フリーペーパー『静岡クラフトビアマップ県Ver.』、書籍『世界が憧れる日本酒78』(CCCメディアハウス)、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)、グルメ情報サイト『メシ通』(リクルート)、ブルワリーのウェブサイトやPR制作等

【メディア出演】
静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」
静岡FMラジオ局k-mix「おひるま協同組合」
UTYテレビ山梨「UTYスペシャル ビールは山梨から始まった!?」
静岡新聞「県内地ビール 地図で配信」「こちら女性編集室(こち女)」等

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