インドでIPAを飲んでみた
昨年の11月にインド最大の都市ムンバイに行く機会があり、以前から気になっていたインドのクラフトビールを体験してきた。
日本からのムンバイへのアクセスは、ANAの直行便が就航しており、約9時間40分のフライトでムンバイのチャトラパティ・シヴァージー国際空港に到着する。ムンバイは、アラビア海に突き出た半島部分にあり、南部は旧市街と呼ばれ、かつての英国による統治時代の名残が色濃く残っている。また、街の真ん中には有名なインドの生活が垣間見れる屋外洗濯場、ハイテク企業の高層ビルなどが混在し、街は昼夜問わず常に人、車、バイクなどでごった返し活気に満ちている。
一軒目は、 ムンバイで最も古いブルワリーパブの「Barking Deer Brewery」へ向かった。ムンバイで最も古いといっても、設立は2013年なので、クラフトビールが普及し始めたのはごく最近のようだ。店舗併設のブルワリーでは、6つのタンクが設置され、最大一度に300リットルの醸造が可能とのこと。先ずはテイスティングセットを頼んだ。
(写真のグラス左から順に)
– Happy by thirsty インドの暑さにぴったり、のどごしのPilsner。
– Fest Marzen ヨーロッパのビールと言われて飲めば、確実に騙されるMarzen。
– kriizsschlander メニューにはSourと書かれていたがほんのり甘めのGose。
– Going Bananas 3.25 その名の通り、まろやかなバナナの香りがするHefeweizen。
– Flying Pig オレンジピール、コリアンダー、クミンの種を使用したWitbier。
– Fallen Angel Chocolate Stout 非常にスムースに飲めるコーヒーテイストのスタウト。
テイスティングの終えて、日本で飲むクラフトビールとそれほど差がないほどよくできているなと思った。お店のスタッフにいろいろ聞いてみると、このブルワリーは、米国人の醸造家が立ち上げたそうだ。また、最近ではヨーロッパで修行したインド人の醸造家も増えてきているとのこと。なるほど、このビールの質の裏にはそういう背景があるのか。
2軒目は、ムンバイ近郊の都市、プネを本拠地とする「Doolally」のムンバイ店へ。場所があのインド映画の撮影所「Bollywood」に近いためか、映画関係者のような人もチラホラ。また、ちょうど夕食時に訪れたためか非常にお店は混雑していた。今回は、現地の知人を引き連れて行ったが、この「Doolally」、ムンバイの若者に人気のようで、イベント日(通常より安く飲める日)には座る場所がないほどごった返すそうだ。こちらではIPA(インディア・ペール・エール)を頼んだ。
そう、インドといえばIPA。
IPAの「I」はインドの「I」である。
IPAは英国人によって生み出されたスタイルのビールだが、インドが英国に統治された時代に生まれたといわれている。18世紀、英国とインドを往復していた貿易船は、赤道を二度超える長旅に耐えられるビールができないものかと考えた末、アルコール度数を上げ、ホップを増量することによってIPAが生み出された説が有力だ。現在、世界的に大人気のIPAではあるが、インドの現地の人は、IPAの歴史との関連をどう思っているのか聞いてみた。驚いたことに、IPAがインドの歴史と関わりがあることを知っている人非常に少なく、逆に日本人の私が説明するという面白い光景が生まれた。
インドでは、宗教的な背景もありアルコール消費は他国に比べて少なく、クラフトビールが普及し始めたのは2010年代に入ってからのようだ。主にIT産業の拠点であるバンガロール、大都市のムンバイを中心に現在も広がり続けているようで、若い人を中心に人気があるそうだ。
またビールをのみにインドを再訪したいと思う。
<店舗情報>
1軒目:The Barking Deer Brewpub and Restaurant
Mathuradas Mill Compound, Senapati Bapat Marg, Lower Parel West, Mumbai
☎ +91 22 3996 6001
http://barkingdeer.in
営業時間: 12:00〜1:30
2軒目:Doolally Taproom Andheri店
C18-21, Dalia Industrial Estate, Near Fun Republic Mall, Off New Link Road, Andheri West, Mumbai
☎ +91 74001 71674
https://doolally.in
営業時間: 7:30〜1:00
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。