東北のクラフトビールブルワリーの恩返し 東北魂的IPA発売開始!
「東北魂プロジェクト」をご存じだろうか。
これは東北に拠点を置くクラフトビールブルワリーの勉強会だ。共同でビールの仕込みを行い、これまで7回実施されている。この度、第8回目が行われ、昨日より販売が開始されている。今回はどのような思いをもって臨んだのか話を聞いてきた。
きっかけは東日本大震災
そもそもこのプロジェクトを始めようと思ったのはどうしてだろうか。
「きっかけは東日本大震災。多くのクラフトビールファンから義援金をはじめとするご恩をいただきました。それに対して、『私たちは何を返せるのだろう』と考え、たどり着いたのが『より美味しいビールをつくること』でした(いわて蔵ビール佐藤航社長)」。
それまでは各ブルワリーが独自に勉強し、ノウハウを蓄積していたが、体系的ではなく感性と感覚による経験で造っていた。また、東北のブルワリーは、通常ブルワーが1社1~3名で醸造しており、孤独になりやすい環境だという。
そこで、2013年8月に佐藤社長が発起人となって、「秋田あくらビール」長谷川氏、「福島路ビール」吉田氏に声をかけ、勉強会を立ち上げた。内容としては、年に数回、参加ブルワリーに集まり勉強会と仕込み実習を行い、お互いの技術を高めている。そうして「東北から世界に通用する品質の良いビールを提供して恩返する」ことを目的にしている。
キリンビールの協力により目で見えるビール造りが可能に!
2016年の第6回以後、「キリンビール仙台工場」谷川氏と「SPRING VALLEY BREWERY(以下、SVB)」田山氏より「何か一緒に取り組めないか」と話があがる。彼らは弱点であった数値化による分析や勉強会を依頼した。これにより数値化が図れることで、さらなる技術の向上が可能となり、より確かな品質向上となる土壌ができあがった。
早速、先月には今回提供される「東北魂的IPA」の分析をキリンビールの工場で行っている。
同じ原料なのに異なるビール?
今回の特徴は、同じ原料を使ってブルワリーごとに仕込むことだ。造るのは「東北魂的IPA」。第6回に「福島路ビール」で醸造されたものをベースとしている。「秋田あくらビール」長谷川氏によると「IPAは東京では人気がありますが、東北のブルワリーで醸造しているところは少ない。前回とても好評でしたので、採用することにしました」とのこと。
できたビールを分析、ディスカッションをして学び合い、技術向上を図ることがねらいだ。しかし、同じレシピで造られたビールで違いが生まれてくるのだろうか。
実際に造られたビールを見てみると、はっきりとわかるくらい色が違う。感じる香りや強さ、風味も異なるから不思議だ。同じレシピでどうして違いが生まれてくるのかを「田沢湖ビール」小松氏に尋ねると「設備の大きさの違いでも特徴に変化が生まれてきます」。確かに以前、工場を拡大し、大きさが異なる新しい設備を入れたブルワリーに「同じレシピでも設備が変わると味が変化する」という話を聞いたことがあった。また、「水質の違いも各々に特徴が生まれた」と佐藤社長は教えてくれた。環境の違いで変化が表れるところが難しいところでもあり、面白いところだ。
ブルワリー違いで同じレシピを醸造する企画は珍しい。お店で見かけたらぜひともその違いを確かめてほしい。また、ドネーション企画としてSVB東京での「東北魂的IPA」ご注文1杯あたり10円を東北の震災復興支援の一環として、石巻市でホップ栽培をしている「イシノマキファーム(代表理事 高橋由佳)」に寄付される。
これからもブルワリーが集まり、挑戦して美味しいビールを提供していくという。研鑽し合うことで技術力は上がり、さらに美味しくなる彼らのビールが私たちの喉を通る日はそう遠くないだろう。向上する過程も楽しみながら飲んでいきたい。
◆商品概要
商品名:「東北魂的IPA」
発売日:2018年3月7日(水)
発売場所:SVB東京をはじめ、全国100カ所以上の飲食店(詳細は東北魂プロジェクトFacebookページを参照)
価格:販売場所によって異なる
アルコール分:5.5%
製造場所:東北魂プロジェクト参加8社(いわて蔵ビール、秋田あくらビール、福島路ビール、仙南シンケンファクトリー、遠野ズモナビール、やくらいビール、田沢湖ビール、SVB東京)
原材料:麦芽、ホップ
商品特徴:Citra、Mosaic、東北産IBUKIによる、柑橘のような華やかな香り、シャープな苦味が特徴
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。