[ブルワー,新商品情報]2018.4.24

「麦芽重量の5%まで」 ビール新定義への挑戦 【ビール誕生秘話5本目 SPRING VALLEY BREWERY SOUR Citrus 4月26日(木)発売】

今月よりビールの定義が変更になった。各社、さっそく新作ビールを発表している。「SPRING VALLEY BREWERY(以下、SVB)」も新定義でのビール「SOUR Citrus」を2月1日に発表した。このビールにどんな思いを込めているのか。開発担当者である古川淳一氏に話を聞くため「SVB東京」を訪問した。

条件付きのなかでインパクトを与えられるか!?

「今回の酒税法改正で、使える原料の幅が広がりました。そこが1番大きい動機です」と開発の経緯を話す。ところが思わぬ壁が立ちはだかった。「副原料は麦芽重量の5%の範囲に限る」という定義だ。これまでSVBでは、「JAZZBERRY」を筆頭にフルーツをはじめとした副原料を使用した商品を多く提供してきたが、大半が麦芽重量の5%以上であるため、引き続き「発泡酒」と表記しなければならなかった。しかし、「これを機に1回、この定義に当てはまるなかでインパクトを出してみようと思いました」と新たな挑戦を決意した。

新定義第1弾にあたり採用したのが、すだちとかぼすだ。「ベルジャンホワイトで使われるオレンジピールやレモンなどいろいろ思案しました。だが、これらの原料を使ったビールは過去にもあり、差別化しにくいと感じました。それで、いままであまり使われたことがないが、馴染みのある原料を探しました」。

そのなかでピッタリと当てはまったのがすだちとかぼすだという。

ポイントは「酸味」

開発のヒントは以前、この2つを使い、人気を集めたSVB東京で発売した限定醸造品「秋三昧(定義上は発泡酒)」からヒントを得た。では、このビールの特徴は何だろうか。

「ポイントはやっぱり酸味です。ホップも使っていますが苦味を抑えて、後味がスッキリするような酸味にしています」。

両方とも酸味を特徴とする果物だ。個性を際立たせるため、果皮を使い、香りを強くすることも検討された。今回は、SVB各店だけではなく、インターネット通販サイト「DRINX」でも販売される。「通販で購入される方は自宅で飲むことを考え、食事と相性が良くなるようバランスを意識しました」。結果として果汁のみを使い、酸味を程よく感じられるレシピとした。

「SVBは、ビールと食事の相性を重要視しています。特にそこを考えるとものすごく尖ったものよりバランスの良いつくりを心がけました。使用する果汁は収獲したすだち、かぼすを絞ってそのまま凍らせたストレートの果汁です。その果汁を発酵途中に入れています」。

料理を邪魔しない味わいにするため果汁を入れるタイミングは試行錯誤を重ね、発酵工程の途中で果汁を投入する形となった。

すだちは徳島産。かぼすは大分県産のものを使用。

個人的にはSVB各店では「ビア・インフューザー」があるので、果皮を入れて香りを強くしたバージョンを提供してみても面白いと思う。果皮が加わるだけでどれだけ印象が変わるのか体験できるのはSVBならではの強みだ。実現すれば、ぜひ体験してみたい。

レモンを搾って食べる料理と

食事との相性を意識したということになるとやはり気になるのは、「どんな料理に合うのか」だ。

「合わせるなら淡白な味の魚ですかね。味を締めてくれるのでムニエルとかおすすめしたいです。他には酸味でさっぱりするので、脂っぽい料理も良いと思います。レモンを搾る感覚の料理は合うのではないでしょうか」。

レモン果汁をかける料理というと唐揚げやマリネと様々なレシピが思い浮かぶ。そう考えるといろいろな料理とのペアリングを試してみたくなるビールだ。発表会の際に試飲したが、食中酒としてとても良かった。また、爽やかな気分にしてくれるので、これから暑く、湿度の高い季節にもよく合うビールだ。

脂っぽいお肉料理では、酸味によってスッキリとした後味となる。

サワーといっても乳酸菌を使ったサワーエールではなく、果実の「酸味」による味わいとなっている。酸っぱいビールが苦手な人でも飲みやすいビールになっている(筆者は酸っぱいビールが苦手だが、このビールは美味しく飲めた)。

この時期に新しく登場したものになると「定義が拡大したからとりあえず、お披露目的に発売した」という印象をもつかもしれないが、「SOUR Citrus」は新定義に沿ったうえで、「食事との相性」という自分たちのコンセプトのなかでチャレンジして誕生した。古川氏の話を聞いていると、これからも制限の中でもビールカテゴリーの魅力を拡げる商品づくりにかける情熱を感じた。ぜひ、その思いを感じながら色々な料理とのペアリングを楽しんでほしいこの春注目の1本だ。

「SOUR Citrus」開発者である古川淳一氏。「JAZZBERRY」を開発したブルワーでもある。

◆SOUR Citrus 商品概要

発売日:2018年4月26日(木)

発売場所:DRINX、SVB東京・横浜・京都

販売価格:DRINX 2,332円(330MLびん×6本)、SVB各店舗 880円(360ML)※いずれも税込、価格は予定

酒税法上の区分:ビール

原材料:麦芽(大麦麦芽・小麦麦芽)・ホップ・すだち・かぼす

特徴:酸味、渋味が感じられる爽快な飲み口のフルーツビール。

★DRINXのサイトはこちらから

https://drinx.kirin.co.jp/beer/svb/about/

 

SOUR CitrusSPRING VALLEY BREWERY古川淳一氏

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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