[コラム,ブルワー]2018.6.2

環境保全を意識したエコロジーなBREWERY 【ブルワリーレポート HOPWORKS URBAN BREWERY編】

「HOPWORKS URBAN BREWERY(以下、HOPWORKS)」。「HUB」のロゴが入ったビールを見たことがある人は多いだろう。クラフトビールが盛んなポートランドでは醸造規模が大きいブルワリーだ。彼らはどのような考えをもってビールつくりを行っているのだろうか。ブルワリーを訪れ、話を聞いてきた。

環境にやさしい循環型ブルワリーを目指して

「方針として、麦芽とホップは有機栽培の原料を使い、サステナビリティのある醸造が目標です。電気やガスなど使った分は、自然環境を守る団体に寄付するなどして二酸化炭素削減に対する取り組みをしています」。

オーガニック原料を使うのはエコロジーであること。それと農薬を使わないことで環境にもやさしく、結果として私たちの身体にもいい影響を与えてくれるという考えからだ。原料は、地元産のものを使うようにしている。地元産を使用することで輸送にかかる二酸化炭素の削減に貢献している。

この他にも「HOPWORKS」では様々な環境への取り組みをしている。その1つが水だ。「醸造所は醸造以外にも洗浄などで水を大量に使います。アメリカでは、平均1Lのビールをつくるのに7~8Lの水を使います。私たちは毎年、水の使用量を減らす努力をしています。現在は1Lのビールをつくるにあたり、3.5~4Lになっています」と醸造長のトレバー氏はいう。

「HOPWORKS」について話すトレバー氏(左)と「オ州酒ブログ」のレッド氏(右)

具体的には、まず缶のなかをきれいな水で洗浄する。その後、直に身体の中に入らない缶の外側も同じ水を使うことで節約している。例えるなら野菜を洗った水で、庭の植物に水をまくといった感じだ。同じ水を使うことで、年間40万KLもの削減に成功した。

彼らの取り組みは、他のブルワリーにも影響を与え、同じ取り組みがされるようになっている。日本ではこの辺りはまだまだ後れを取っているところだ。

ビール醸造では、大量の水を使用する。積極的に再利用することで、環境への配慮をしている。

ホップが効いたビールで魅了する

ビールではどんな特徴があるのだろうか。

「ペールエール、IPA、Hazy IPAとホップが効いているのが特徴です。ウインターエールは甘味を感じますが、比較的苦味のあるように仕上げています。麦芽とホップの組み合わせで『どんな味になるのか?』を考えるのが大好きです」と名前の通り、ホップを活かしたビールつくりを行っている。

オーガニックの原料を使うことで、費用は高くなるし、選択できる品種も少なくなる。そのような状況下で同じ味を実現することはとても挑戦的なことだ。しかし、それが「HOPWORKS」の理念であるという。

地元産のオーガニック原料を使ったビール。

評判が悪ければ定番ビールでも製造を中止

「HOPWORKS」には定番ビールをはじめ数多くのラインナップがある。トレバー氏は、ビールは創造性のあるものだといい、麦芽、ホップ、水、酵母の主原料に何を足してもビールだと考えている。「桃のビールをつくるとしたら桃を使えばもちろんですが、酵母やホップの品種によって、桃の風味を出すことができます。色んな種類のビールがあることは楽しいです。これは他のお酒にはない魅力ですね」。

「ワインは1年に1度しかつくれませんが、ビールは2~3週間でつくることができます。醸造サイクルが短いので、次々に新しいビールに挑戦することができます」と失敗しても頑張って挑戦する姿勢が飲み手から評価されていると「オ州酒ブログ」のレッド氏は話す。

「商品では、お客さんからのフィードバックを大事にしています。今でしたらHazy IPAがとても好評でした。その中の1つにグレープフルーツを入れたものがありました。お客さんに感想を聞くと「入ってなくてもいい」という反応でしたので、その後レシピを変更しました」。定番ビールも売り上げが落ちてきたら醸造を終了してしまう。お客さんが喜ばないビールをつくり続けるよりも喜んでくれるビールをつくっていくというのが彼らのポリシーなのだ。

豊富なラインナップ。人気のないものは消えていく。

多彩なアイデアは食事から強く影響を受けるという。「ペアリングも意識しています。ピルスナーは、通常は夏の売れ行きが伸びます。夏場はBBQなどとよく合わせるので、これに合うようによりあっさりとした味に1年半前にレシピを変更しました」と、どのようなシチュエーションで飲むのかを考えてつくるという。

今後のトレンドは?

「Hazy IPAの人気はこれからも続くと思います。今後、無くなるということはないでしょう。これからは、甘いものやスパイスが入っているアルコール度数が高いもので、食事と合わせながらゆっくりと飲めるビールがトレンドになっていくと思います。これまではマニアの間では知られていたことですが、広く伝わっていくのではないでしょうか。特に大きいブルワリーではそのような傾向になると思います」。

日本でも様々なブルワリーがつくっているHazy IPAは、ポートランドで根付いていくといい、食事と合わせてゆっくりと味わうことができるビールが流行るのではないかとトレバー氏は予想する。

醸造長のトレバー氏は3月末で「HOPWORKS」を退職。現在は他のブルワリーで活躍している。

ビールをつくることだけではなく、醸造が周囲に与える影響についても真摯に考える「HOPWORKS」。彼らの取り組みは参考にすべき点が多くあった。今年で10周年を迎え、今後も業界のリーダーとして資源面でもビールでも挑戦し続ける。その挑戦は、ビールを通じて、私たちをこれからも楽しませてくれることでしょう。

◆HOPWORKS URBAN BREWERY Data

住所:パウエル2944 SE POWELL BLVD ポートランド、OR 97202 503.232.HOPS

電話:+1 503-232-4677

Homepage:http://hopworksbeer.com/

Facebook:https://www.facebook.com/HopworksBeer/

 

HOPWORKS URBAN BREWERYブルワリーレポートポートランド

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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