[イベント,コラム]2018.7.16

北海道の自然に囲まれて飲むビールに憧れて 【Sapporo Craft Beer Forest 2018回顧録】

青空に広大な緑地と笑顔でビールを飲む風景。ブルワーたちからも「あのロケーションは最高」という声をたびたび聞き、「今年こそ絶対に行く」と決めていた「Sapporo Craft Beer  Forest(以下、SCBF)」。今年は7月7日(土)~8日(日)に開催された。

自分たちの手で「ビールの楽しみ」を伝えるイベントを

2013年10月の開催から今年で6回目。どんなイベントなのかをSCBF実行委員である「Beer + Malt Whiskey Maltheads」の坂巻紀久雄氏に聞くと「札幌という街の特性を活かし、ビールをツールとして、色々な人やものが集まるここでしかできないビールイベント」だと教えてくれた。

すでに全国各地でビールイベントが行われているなか、地元のブルワリーであるノースアイランドビールが「いつ北海道でやるのか?」と言われていたこと。地元のビアバーの周年イベントで、小さなイベントを開催した経験があったこと。「そろそろ北海道でも1つくらいクラフトビールのイベントが欲しい」という流れがあったこと。すでにクラフトビールのブレイクへ手応えを感じていたと坂巻氏はいい、「遅かれ早かれ誰かがイベントを開催すると思っていました。しかし、コマーシャル優先のイベントが開催されてしまうと、せっかくの『ビールの楽しみ』が誤解される内容になってしまう恐れがありました。それならば自分たちで先にやろう」と開催することになった。

2013年6月にビアバー5店が集まり、「SCBF実行委員会」が発足。ノースアイランドビールに全体監修やブルワリーとのコネクトを依頼。初回は道内5社、道外5社、インポーター4社が北の大地に集まった。「各店100名ずつで500名が目標でしたが、最終的に1200名を動員しました」(坂巻氏)。

心が惹き込まれる青空と緑に囲まれた空間

今年は、全国から26のブルワリーとインポーターが参加。私は2日目に参戦した。直前の予報ではお昼ぐらいまで雨予報……。素晴らしいロケーションのなかでビールを楽しめるか不安だったが、当日は雨どころか日差しが痛いくらいの絶好のビール日和になった。

開始時間は12時から。初めてで勝手がわからないので早めに動くことに。11時より地下鉄東西線円山公園駅より無料送迎バスがあるので、10時30分ごろ乗り場へ。すでに20~30人が並んでおり、そのなかには顔なじみもいた。改めてSCBFが道内だけではなく全国のビールファンが駆けつける人気のあるイベントなのだと感じた。

地下鉄東西線円山公園駅からバスで約15分。会場となる「さっぽろばんけいスキー場」に到着。こちらは2017年冬季アジア札幌大会でも使われたスキー場だ。

会場に着くと山に生える草木の緑と青い空に浮かぶ白い雲が一面に広がり、否応にもテンションが高まってくる。会場で前売券とビールチケットの引き換えをするが、時間まで少しあったので先に場所取りへ。屋根付きのテーブル席も用意されているが、天気が良いときはやはり芝生で寝そべりながら贅沢な時間を過ごしたい。バス乗り場であった山口協子ビアジャーナリストご夫妻とご一緒し、芝生エリアで楽しむことに。

芝生でビールを楽しめるイベントはあまりない。ぜひここにきたらテーブル席よりも芝生でのんびり過ごすことをおススメする。芝生は濡れている可能性もあったので、あらかじめレジャーシートを用意しておいた。

場所も決まったので、ビール売り場を確認しながらブルワーさんにご挨拶へ。ヘッドブルワーたちが集まっていることからもSCBFが注目されていることがわかる。

その後、ビールチケットとの引き換えを済ませ、芝生に寝そべりながら12時を待つ。

前売券は期間限定で発売されるグラス付前売券(ビール券6枚分+オリジナルグラス)と通常前売券(ビール券7枚分)の2種類。ともに税込3,000円。前売券は、入場料500円が含まれているのでお得。

アナウンスがあるので、新規開栓も逃さない

SCBFでは、ブルワリーは1度に提供できるビールが3種類と決められている。パンフレットには提供ビールが記載されているが、どのタイミングでつながるかはブルワーさんたちの気分次第なのだ。狙っているビールがある場合は、両日ともに参加するのがベストだろう。

新規開栓があるとブルワーさんや実行委員がアナウンスしてくれるし、ブース前に「◯時に◯◯ビール開栓します」と告知していたりもするので、「いつのまにかつながっていて飲みそびれてしまった」ということがない。こうした手法は他のイベントでも積極的にやってほしいと思う。

城端麦酒の山本勝ヘッドブルワーと。イベントで大人気の「Great Blue」をいただいた。

普段はあまりレアビールに並んだりはしないのだが、この日はどうしても飲みたいビールが2つあった。

1つが富士桜高原麦酒の20周年ビール「ゆず香り和イツェン」。ドイツ純粋令を頑なに守ってきた富士桜高原麦酒が箕面ビールとコラボレーションしたビール。日本を代表する2社がどんなビールをつくるのかとても興味があった。来場者の多くも関心が高かったようで、販売された1樽は15分で完売。柚子のほのかな香りにヴァイツェン特有のバナナ香。甘味と微かな酸味で「うまく両方の良いところがでている」と富士桜高原麦酒の宮下天道醸造長が言うように両社の特徴をよく感じられるビールだった。

「ゆず香り和イツェン」を注ぐ宮下天通氏。このビールを飲むために30分並んで待ったが、地元のビールファンとビール談義をしながら楽しく過ごせたのであっという間だった。

もう1つが南信州ビールの「#フルーツパーラー」。こちらも箕面ビールとコラボレーションしたりんごと桃を使ったビールだ。りんごのアロマにほんのり酸味があることですっきりした飲み口。フィニッシュに桃の風味が鼻へ抜けていく優しい味わいだった。

このほかにも各ブルワリー、渾身のビールを用意してきていた。あるブルワリーは20種類以上も準備してきたというから、いかにSCBF に気合を入れているかがわかる。

色彩が豊かなのもクラフトビールの魅力。城端麦酒「Great Blue」(左)とhokkaido brewing「すいかラガー」(右)。

フードもビールに合う定番おつまみから地元の食材を使ったメニューまで幅広く用意されていた。私のように道外から来ている人にとっては、北海道グルメが楽しめるのは嬉しい。

燻製の盛り合わせと月と太陽ブルーイング「Hop Concerto」。

「おいしいビールを楽しむ最高の環境」を提供しているだけといい、「参加者が『どう楽しむか』を自由に決められることが、このイベントの最高の楽しみ方」と坂巻氏は話す。芝生エリアでは、酔いがまわってきたのか昼寝をしている人の姿もあり、各々が楽しんでいる光景が広がっていた。

そう感じられるのもやはり運営側の意識がしっかりしているからだ。この日は暑かったが、前日は寒く(気温13℃)、「トイレが大行列でした。そのため2日目は簡易トイレを増設しました」。前日の状況を踏まえ、素早い対応がとれる運営力はとても高いと思う。「前年よりも少しでも良いイベントにしよう」という運営スタッフの意気込みが伝わってきた。特に坂巻氏は、「大きなトラブルが発生しないのは、私たちの考えに共感して参加してくださるボランティアスタッフの方々の力が大きい」という。

多くの人が1度は訪れたほうがいいというが、実際に足を運んでみてよくわかった。いいイベントの定義は皆それぞれ異なると思うが、SCBFに来て、お客が喜び、ブルワリーも楽しみ、運営側もやりがいを感じられる形は、1つの理想の形ではないだろうか。

「来年もまた来たい」。帰る道中に思った。来年もSCBFに来られるよう、スケジュールを今から調整することにしよう。

◆Sapporo Craft Beer Forest 2018 Data ※本年度は終了

日時:2018年7月7日(土)・8日(日)12:00~18:00

会場:さっぽろばんけいスキー場

Homepage:http://www.sapporo-craft-beer-forest.com/

Facebook:https://www.facebook.com/sapporo.craft.beer.forest/

Sapporo craft beer forest北海道

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

●音声配信アプリstand.fmで、ビールに恋するRadioを配信中
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<TV>
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<雑誌>
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<Web>
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