[コラム,ビアバー]2018.12.4

タイはビールもアツかった!タイのクラフトビール事情

先日は、Singhaが運営するマイクロブルワリー 「EST.33」を紹介させていただいたが(前記事)、今回はタイのクラフトビールについて書かせていただきたい。

Thai craft bottles

タイのクラフトビール

ビールへの情熱が生んだ合法的なクラフトビール

現地でタイのクラフトについて調べているとわかったのだが、タイでクラフトビールを作るのは簡単ではないそうだ。タイでビールを醸造するには、以下2種類の条件のいずれかを満たした上でライセンスを取得する必要だそうだ。

- 年間100万リットル以上の醸造を行えること
- ブルーパブが対象で、年間10万リットル以上を店頭で提供できること(ただし、ボトル販売は認められない)

(※2018年11月時点、タイの法律 Liquor Act of 1950による)

これを聞いただけで、新規参入障壁の高さが想像につく。しかし、私が訪れたバンコクのビアパブでは、数々のタイのクラフトビールが普通に提供されており、はたして、それらのブルワリーは上記のライセンスを取得しているのであろうか?

そうではないようだ。

タイのクラフトビールのラベルをよく見ると、カンボジアやオーストラリア、中には日本で醸造したと書かれている。国内醸造のためのライセンス取得はハードルが高いため、海外で醸造したビールを逆輸入することで法律をかいくぐるというわけだ。いわば、ビールへの情熱が生んだ合法的なクラフトといってもよいのではないか。

アルコールが買えない時間帯があるって本当?

さて、タイのクラフトビールはどこで手に入るのか?日本でおなじみのコンビニ、ファミリーマート Holiday Inn Silom店にはクラフトビールが比較的揃っているとの情報を得、早速行ってみた。

Family Mart Silom店

ドリンクコーナーに行くと、タイのクラフトビールが確かに並んでいる。早速、5種類ほどのクラフトビールを買い物かごに入れてレジへ行くと、怪訝な顔つきの店員にタイ語で話かけられる。そして私の商品の入ったカゴごと、レジ裏に持って行かれるではないか。

そうこうしているうちに、英語ができる別の店員さんがやってきて、タイでは法律でアルコール販売可能な時間が定められていることを知らされる。

アルコール販売は11:00am〜2:00pmと5:00pm〜12:00amの時間帯のみ

アルコール販売可能時間

アルコール販売の時間は定められている

ちなみに筆者が、最初にレジに行ったのが、10:50amだったので、11:00amになってようやく購入ができた。なるほど、アルコール販売を禁じられている時間帯にビールを買おうとしてたのか。これからタイへ出張または旅行で行かれる方々は要注意だ。

タイのクラフトビールが集まるWishbeer Home Bar

次に、タイのクラフトビールが飲めるお店を探し、品揃えがダントツで多いと評判のビアパブ Wishbeer Home Barを訪れた。

Wishbeerの店内風景

Wishbeer Home Barの店内

タイクラフトの市場に出ている銘柄数は、他国のクラフトビールに比べて決して多くはないが、Wishbeerの冷蔵庫には30銘柄くらいはあったと思う。冷蔵庫の前で、どれを選べば良いか悩んでいたところ、店員さんがおすすめを紹介してくれた。なお、冒頭で述べた通り、ほとんどのビールがカンボジアやオーストラリアでボトル詰めされ、タイへ逆輸入されている。ボトルのトップに貼られたステッカーは、税関を通り輸入を許可された印だ。

Wishbeerのクラフトビールボトル

Wishbeerの冷蔵庫に並べられたタイのクラフトビール

1杯目:伝説のワニの王様 Cha La Wan Pale Ale

1杯目にいただいたのは、プーケットのFull Moon Brew workが作るCha La Wan Pale Aleだ。このボトルは、バンコクのビアパブでよく見かける。また、現地企業の人たちとタイクラフトの話をすると必ずCha La Wanの名前が挙がってくる。タイクラフトの代表的な銘柄なのだろう。ボトルラベルのワニが印象的だ。Cha La Wanとはタイの伝説に登場するワニの王様のことだそうだ。南国フルーツや華やかなホップの香りが強く前面に出ているが、意外とスムースな飲み口が印象的である。

Full Moon Brew workのCha La Wan Pale Ale

Full Moon Brew workのCha La Wan Pale Ale

2杯目:ほんのり甘い香りのRed Truck Red Ale

2杯目に、タイ北部、チェンマイのChiang Mai Breweryが作るRed Truck Red Aleを注文した。こんがりローストされた麦の香りと、苦目のホップが印象的だ。このRed Aleはタイのスパイシーな料理にマッチしそうだ。

Chiang Mai BreweryのRed Truck Red Ale

Chiang Mai BreweryのRed Truck Red Ale

3杯目:アジアが認めた Showdown IPA

最後にタイ東北部、ルーイ県にあるOutlaw BrewingのShowdown IPAをいただいた。7種類のホップの組み合わせから生まれる強烈なパイン、シトラスの香りはインパクト十分なノースウェストスタイルのIPAである。ちなみに、Showdown IPAは、シンガポールで開催されたAsia Beer Championship 2018のIPA部門で金賞を受賞している。

Outlaw BrewingのShowdown IPA

Outlaw BrewingのShowdown IPA


今回、タイのクラフトビールを探索して思ったのは、どのビールも特徴的でクオリティがあることだ。最近、様々な国を訪れる機会があるが、どの国にいっても美味しいクラフトビールが飲めるのは、ビール好きにとっては嬉しいことだ。また、クラフトビールを飲みにタイを訪れてみたい。

<店舗情報>

Wishbeer Home Bar

Wishbeer Home Bar

Wishbeer Home Bar
住所:1491 Soi Sukhumvit 67, Khwaeng Phra Khanong Nuea, Khet Watthana, Krung Thep Maha Nakhon 10110,バンコク
行き方:BTSプラカノンから徒歩5分
営業時間:10:00 AM – 01:00 AM
※ボトル販売も行っています。

http://www.wishbeerhomebar.com

アジアクラフトビールタイ

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

モリイクオ (ikuo mori)

ビアジャーナリスト / Beer journalist

大阪出身。東京在住。ビアジャーナリスト&ビアテイスター。
学生時代に滞在した北米やヨーロッパで初めてピルスナー以外のビールと出会う。まだ見ぬビールの世界があると思うとワクワクする。主に旅先で出会ったビール、ビールにまつわる話を紹介している。

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