[テイスティング,ビアバー,ブルワー]2019.3.16

オーストラリアのブルワリーを訪ねて – Two Birds Brewing 編

気になっていたメルボルンのブルワリー「Two Birds Brewing」を訪れた。

オーストラリアで初めて女性が設立したブルワリー

Two Birds Brewingは、Jayne LewisさんとDanielle Allenさんによってオーストラリアで初めて女性が設立したブルワリーである。二人は西オーストラリアのパース出身の幼馴染で、2010年にアメリカ西海岸のブルワリーやワイナリーそして世界的なレストランなどを訪れた旅先で自分たちがブルワリーを立ち上げることを決意。そして準備期間を経て2011年にTwo Birds Brewingを立ち上げた。

Two Birds Brewing の創業者 Jayneさん(左)Danielleさん(右)

Two Birds Brewing の創業者 Jayneさん(左)Danielleさん(右)(Photo by Two Birds Brewing)

Two Birds Brewingは、メルボルンの中心地から西に7kmほどのスポッツウッドにある。最寄りの地下鉄駅「スポッツウッド」へはメルボルン市街から20分程度で辿りつき、そこからは徒歩である。駅を出た通り沿いを4-5分程度歩くと、Two Birds Brewingの看板が見えてくる。入り口を入るとそこは既にタップルーム「The Nest」となっていて、その奥には醸造設備が並んでいる。

Two Birds Brewing スポッツウッド

Two Birds Brewing スポッツウッドにて(Photo by Two Birds Brewing)

私が初めて飲んだTwo Birds Brewingのビールは「TACO」だった。シドニーの老舗パブで現地の人に勧められ飲んでみた。正直、不思議なネーミングだと思いながら事前知識なく頂いたが、ホップが効いた少し香ばしいエールだと記憶している。あとで調べたところ、創業者の二人が西海岸を旅行中、サンディエゴからポートランドへ向かう飛行機で「大好きなメキシカン料理に合うフレッシュなフレイバーを使ったビールを作りたい」と思い立って作ったビールだそうだ。このTACOは、Two Birds Brewingの代表的な銘柄「Two Birds Pale」や「Two Birds Golden Ale」などと共にここ何年もビアアワードを受賞している。

創業者の一人、Jayneさんに話を伺った。

親友とアメリカ西海岸を旅行中にブルワリーの立ち上げを決心

Two Birds Brewing正面で創業者のJaynesさん

Two Birds Brewing正面で創業者のJaynesさん

筆者: ブルワリーを始めたころのお話を聞かせてもらえますか?

Jayneさん: Two Birds Brewingを始める前は、西オーストラリアのクラフトブルワリー「リトルクリーチャーズ」や「マウンテンゴート」でブルワーとして6年間働いていました。その後、友人のDanielleさんとアメリカ西海岸へ旅行の後、ブルワリーの立ち上げに意気投合し、ビジネスプランを練り始めました。当初は、契約したブルワリーに我々のレシピのビールを醸造してもらっていました。このビールでテストマーケティングを行い、思ったより上手く行けそうだったので自分たちの醸造設備への投資へ踏み切りました。

ビールのクオリティへの取り組みは、我々すべてに影響を与える

筆者: ビール造りでこだわっていることは何でしょうか?

Jayneさん: 基本的なことですが、出荷前のビールのクオリティ、味の安定性には最大限の注意を払っています。美味しいフレッシュなビールを提供することは非常に大事です。そうでないビールを提供することは、その顧客を市場全体から失うことになります。ビールのクオリティは重要で、我々全てに影響を与えます。ここ数年様々な賞をいただいていますが、ビールのクオリティに対する取り組みの結果だと思います。

Two Birds Brewingの醸造設備

Two Birds Brewingの醸造設備

日本の花見からインスピレーションを得て限定ビールを作った

筆者: これまでに作った印象的なビールはありますか?

Jayneさん: 2016年に日本を旅行して花見を体験しました。そこからインスピレーションを得て、Sakura Sourという限定ビールを作ったことがあります。コメとサワーチェリーと日本酒の酵母を用いて作りました。フラッシュピンクで、サワーでドライ。今までで一番面白いビールでした。

Jayneさん - 実はウォータリングフォールのTシャツを着ていました

Jayneさん (実はウォータリングフォールのTシャツを着ていました)

筆者: 日本を旅行した時のことを教えてください。

Jayneさん: 2016年に夫と一緒に日本を旅行した時期がちょうど、桜の時期でした。名前を覚えて無いけど大きな公園で花見をしました(後で代々木公園と判明)。2-3時間ほど花見をして
喉が渇いたので近くで見つけたウォータリングホールに行きました。偶々、ネストビールのイベントが行われていて非常に楽しかった記憶があります。

筆者: 今後の予定を教えてください。

Jayneさん: 新しいビールとしては、マンゴーを素材につかったビールとバレルエージに取り組みたいと思っています。

インタビューの後、4種類のビールをテイスティングさせていただいた。

テイスティングパドル

左からTaco 、Pale、Pilsner、Passion Victim

TACO
IBU 28 / ABV 5.2%
人気の定番。副原料としてコーン、コリアンダー、ライムの皮を入れることで風味は強めな感じがするが、ボディは軽く飲みやすい。
メキシコ料理だけでなく、タイやベトナム料理とも合いそうだ。

Pale
IBU 28 / ABV 5.0%
2種類のオート麦による飲み口の優しさと、アメリカ産とオーストラリア産のホップが醸し出すフルーティ感が絶妙に組み合わさっている。何本でも飲めそうだ。筆者の一押し。

Summer Pilsner
IBU 38 / ABV:5.2%
想像以上にホッピーでフルーティ感があるピルスナー。真夏の炎天下でキンキンに冷やしていただきたいビール。残念ながら夏限定ビール。

PASSION VICTIM
ABV: 5.0%
IBUs: 24
アマリロ、モザイック、ギャラクシーの3種のホップとパッションフルーツのピューレを発酵時に加えたビールは、トロピカル感たっぷりのビール。こちらも限定ビール。

ここでJayneさん、もう一本の限定ビール「Brut IPA」を持ってきてくれた。

ET TU BRUT?

ET TU BRUT?

このビールは、シェークスピアでおなじみのフレーズ「ET TU BRUTE(ブルータス、お前もか?)?」を文字って「ET TU BRUT?」としている。さらにラベルにはブルータスがオーストラリアの大自然を背景にオージーハットをかぶるというユーモア溢れるビールだそうだ。お味の方は、アメリカ、ニュージーランド産のホップ、CitraとHallertau BlancによってフルーティかつドライでスッキリしたIPAに仕上がっている。

 


今回は、Jayneさんに貴重な話を伺うことができた。ここ数年、オーストラリアでも急速にクラフトビールが普及する中で、Two Birds Brewingは安定したクオリティのビールを提供し続け、インディペンデントのクラフトブルワリーとして今も多くの人に支持されている。また、ユーモア溢れる銘柄づくりも次に何を出すのかワクワクさせてくれる。メルボルンを再訪する際に立ち寄りたいと思う。

<ブルワリー & 店舗情報>

Two Birds Brewingのタップルーム

Two Birds Brewing併設のタップルーム 「Nest」

Two Birds Brewing
住所:136 Hall Street Spotswood, VIC 3015, オーストラリア
電話:+61 3 9762 0000
営業時間:
Thursday – 4pm – 9pm
Friday – 4pm – 11pm
Saturday – 12 noon – 11pm
Sunday – 12 noon – 8pm
公式ホームページ

TACOオージークラフトオーストラリアスポッツウッドマウンテンゴートメルボルンリトルクリーチャーズ

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

モリイクオ (ikuo mori)

ビアジャーナリスト / Beer journalist

大阪出身。東京在住。ビアジャーナリスト&ビアテイスター。
学生時代に滞在した北米やヨーロッパで初めてピルスナー以外のビールと出会う。まだ見ぬビールの世界があると思うとワクワクする。主に旅先で出会ったビール、ビールにまつわる話を紹介している。

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