[ビアバー,ブルワー]2019.6.12

東京都文京区「カンパイ!ブルーイング」~街のアイコンとなるブルワリーへ~

2019年4月、東京都文京区に新しいブルワリーが誕生しました。その名は「カンパイ!ブルーイング」。2019年5月28日には、併設クラフトビアバー「グランズー”Granzoo”」が正式オープンし、オリジナルビールを味わうことが出来ます。「カンパイ!ブルーイング」の魅力と、その想いをお伝えします。

カンパイ!ブルーイング

「カンパイ!ブルーイング」は、東京都文京区と新宿区との境付近にあり、住所は文京区関口となります。交通アクセスは、東京メトロ有楽町線 江戸川橋駅から徒歩約6分、東京メトロ東西線 早稲田駅から徒歩約5分、都電荒川線 早稲田駅から徒歩約5分の距離。神田川沿いの桜並木に面した、木材を使った優しい外観の3階建ての建物にあります。1Fがクラフトビアバー、2Fと3Fが醸造所となっています。

(左)カンパイ!ブルーイング外観、(右)神田川の桜並木

1F クラフトビアバー「グランズー”Granzoo”」

1Fのクラフトビアバー「グランズー”Granzoo”」は、渋谷や神楽坂でワインバー「ZOOGUNZOO」を経営する「株式会社ジップザフューチャーズ」にて運営されています。コンパクトな店内には、カウンターが9席、左手奥にテーブル4席。店内に入ると、U字型に取り付けられたタップスタンドと8つのタップが目に入ります。もちろん、「カンパイ!ブルーイング」のビールを味わうことが出来ます。将来的には、ゲストビールも繋げる可能性はあるとのこと。2019年5月28日オープン。

クラフトビアバー「グランズー”Granzoo”」

キッチン設備は、コンパクトながら充実しています。ビールに良くあうフィッシュ&チップス、生ハムやチーズをつかった料理はもちろん、金沢直送の鮮魚を使った料理、オーストラリア産のワニ肉やカンガルー肉を使った料理など、個性的な料理を提供。オリジナルビールとのペアリングを、たっぷり堪能できます。

(左)アスパラベーコンソテー、(中)カンガルー串焼き、(右)金沢直送鮮魚カルパッチョ

3Fと2F 「カンパイ!ブルーイング」の醸造所

3Fには、スロベニア製Brewiksの槽2つ(糖化、濾過、煮沸、ワールプールを交互に液を移送して実施)、モルトの冷蔵庫、麦芽粉砕装置が設置されています。モルトの搬入は、3Fまでウインチで持ち上げる仕組みがあり、省力化を実現。1回の仕込量は、約300Lとのことです。2019年4月2日醸造免許取得。

スロベニア製Brewiksの糖化槽と煮沸槽

2Fには、スロベニア製Brewiksの発酵タンク4基(満容量約420L)、グリコールチラー(温度管理用の冷却装置)、ケグ用冷蔵庫が設置されています。縦長のタンク4基が、コンパクトなスペースに収まっている様は壮観です。ワールプール後の麦汁は、3Fの床から2Fの天井へ貫く配管を用い、重力も利用して移送。効率を考えた醸造所設計です。

(左)発酵タンク4基、(右)3Fから2Fへの麦汁を移送する配管

2F奥には、ケグ(ビール樽)用のプレハブ冷蔵庫があり、ビールの保管と熟成を実施。この冷蔵庫は、空冷式サーバーの一部でもあり、1Fのタップスタンドへのライン(配管)が繋がっていて、温度管理をしっかりしたクラフトビールを提供します。

(左)ケグ用の冷蔵庫、(右)1Fのクラフトビアバーのタップへつながる配管

街のアイコンとなるブルワリーへ

ビールを好きになったきっかけは、ドイツ在住経験

醸造所をマネジメントする「荒井 祥郎」氏は、1990年代後半に北ドイツに約2年半、在住していました。その時、街角にあるブロイハウス(ブリューパブ)で、そこで作られたビールを気軽に味わえるライブ感、街によってビール文化が異なることに、衝撃を受けました。まるでブルワリーを基点に、その街に楽しいことが提供されている様なワクワク感も感じられました。このことが、ビールを好きになるきっかけになったとのことです。

醸造所をマネジメントする「荒井 祥郎」氏

ビールづくりを通じた街づくり

日本に帰国後、都市計画に関する仕事に就職。日本各地の都市で、地域の市民や行政と協力し、10年後や20年後の将来を見越した「街づくり施策等の立案」に関わってきました。なお、第一次ビールブームが終わった後は、ビールとは少し遠ざかっていたとのこと。2014年頃、再び迎えたビールブームの中で、クラフトビールを手にする機会があり、『全然違う味わい、美味しい!』と感じられました。都市計画は、とても大きな仕事ですが、結果が見えるのは10年単位先。あまりに長すぎて、もどかしさを感じていました。一方、ビールはエール系であれば、仕込~発酵と熟成期間を含めても、最短で約1月程で製品になります。「荒井 祥郎」氏は、ビールづくりを通じた街づくりをしたいと思い、ビール醸造について専門家から学びました。その後、埼玉県志木市のSHIKI BEERで研修を受け、東京都文京区にブルワリーを開くことに至りました。

醸造設備について説明する「荒井 祥郎」氏

街のアイコンになるブルワリーを目指す

ブルワリーのある文京区関口から江戸川橋駅周辺は、印刷業の企業が集まる地域です。近年は、時代の変化で廃業する会社もありますが、それでも小規模の印刷業の工場や事務所が多数あります。マンションなど住居向け建物は増えており、この土地で暮らす人は増加の傾向です。また、アートのギャラリーなども点在しており、クリエイターなどの活躍の場になりそうな雰囲気もあります。「荒井 祥郎」氏は、かつて住んだ北ドイツの街のブルワリーの様に、この土地に住む人、働く人、活躍する人の交流の場として、ブルワリーを街づくりに役立てようと考えられています。

街のアイコンとなるブルワリーを目指す、「荒井 祥郎」氏

カンパイ!ブルーイングのクラフトビール

2019年5月26日、オープニングレセプションが行われ、オリジナルビール2種が同時に提供されました。来客数は、近隣の方を中心に約200人にもなり、地域からの期待の高さを伺えます。ビールの銘柄には、ブルワリーがある文京区、隣接する新宿区にある坂の名前が使われており、地域に目を向けていることが分かります。

1stビール 胸突坂IPA

ビアスタイルは、WIPA(Double IPA)。外観は琥珀色。ホップによる柑橘系の香り。口に含むと、その風味と苦味を感じます。苦味は、しっかりしている印象。アルコール感も良く感じ、飲み口はやや重めです。ABV8%。胸突坂は、文京区目白台一丁目にある坂。かなりの急勾配のため、途中に休憩所が設けられるほどです。飲み口の重さと、しっかりとした苦みのあるビールに相応しい名前です。

胸突坂IPA

2ndビール 神楽坂セゾン

ビアスタイルは、SAISON。外観は金色。酵母由来のフルーティで華やか香り。口に含むと、その風味が爽やかに広がります。苦味はあまり感じません。後味はドライでスッキリ。飲み口は軽く、とても飲みやすいです。ABV6%。神楽坂は、新宿区の外堀通り交差点(飯田橋駅の西側付近)から大久保通り交差点付近までの早稲田通りの坂。華やかな通りと、路地には風情漂う神楽坂の街、そのイメージにあうビールです。

神楽坂セゾン

カンパイ!ブルーイングのビールを楽しもう!

「荒井 祥郎」氏は、当面はベルジャンスタイルやアメリカンスタイルのビールを主に醸造し、今後ラインナップを充実していくとのことです。気温が上がって暑くなる時期、ビールを美味しく味わうには適した季節。是非、クラフトビアバー「グランズー”Granzoo”」を訪れ、「カンパイ!ブルーイング」のビールを楽しまれてはいかがでしょうか。

この記事が、素敵なビールとの出逢いに役立てば幸いです。


■グランズー”Granzoo”

営業時間:
[月~土] 17:00~23:30(L.O.23:00)
[定休日] 日曜・祝日

■カンパイ!ブルーイング

FACEBOOK:

https://www.facebook.com/kanpaibeer/

※臨時休業や営業時間の変更の可能性もあります。
訪れる際は、事前にご確認をお願いします。

カンパイ!ブルーイングブルワリー文京区

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

Atsushi Taguchi(田口 篤史)

ビアジャーナリスト/ビアライター

ビール大好き!ビールを求めドイツやベルギーを中心にヨーロッパをよく旅していました。
世界にも日本国内にも、素敵なビールはまだまだたくさんありますので、巡りたいところは尽きません。
ビールの素晴らしさ、楽しさを多くの人に伝えていきたいと思います。
Enjoy!Beer!

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