【ビールスタンド重富】ビール注ぎ名人が教える、本当においしいビールを届けるための“唯一の道”!イベント情報もあるよ
広島市にある「ビールスタンド重富」は、三代続く酒屋「重富酒店」に併設された角打ち形式の小さなビールスタンドだ。
ビールは大手メーカーのものが1種類なのに、昭和と平成2種類のビールサーバーを使い注ぎ方を変えることによって、5種類の味わいに変化するのだ。
オーナーの重富 寛(しげとみ ゆたか)さんは”ビール注ぎ名人”としても知られており、名人のビールを目当てに他県からもお客さんが訪れるほど。
注ぎ方による味の変化の秘密は、以前「ビア女の酒場放浪記(52)広島のビールスタンド重富で温故知新」でお伝えした。
しかし「ビールスタンド重富」が本当に伝えたいことは、“名人の腕”ではない。
重富さんにビールに関する想いを伺った。
おいしいビールは準備で8割が決まる
ビールスタンド重富は、休日ともなると順番待ちの列ができるほどの人が訪れる。
店内は10人が立てば一杯になるほどの小さなスペースだ。
おいしいビールの8割は準備段階で決まるというのが、重富さんの考えだ。
「ビールをおいしくする5割はジョッキ洗い。あと3割がサーバーの洗浄・ホースの洗浄・樽の管理・ガス圧の管理。この8割でビールは一段とおいしくなります」。
日本の大手ビールメーカーが国内外のコンペでも多くの賞を獲っている通り、日本のビールは優秀だ。しかし、街の居酒屋で飲んだビールがやけに苦かったりえぐみを感じたりした経験はないだろうか? 美味しい状態で出荷されたはずのビールが不味くなること。それは私たちの口に入る途中で“劣化”があったからだ。
生ビールが気軽に飲食店で飲めるようになった反面、その管理法を知らない従業員も増えてしまった。そんな店で出されたビールを飲んだ人たちが、ビールは苦手という印象を持ってもおかしくない。(私も27歳まではビールが苦手だった)
酒販店が温度変化や日光、振動に留意して運んできた生ビールの樽を、うまい状態のまま飲食店で客の口に届けるには、日々のメンテナンス(保管・洗浄・管理)が不可欠だ。
その客の目には触れない日々の努力がうまいビールを注ぐ“唯一の道”というのだ。
その“唯一の道”を広く伝導するのが“ビールスタンド重富の役目”と重富さんは考えている。
重富さんはホームページで樽のガス圧や適性温度、洗浄方法まで具体的に公開している。
また、飲食店向けに正しいビールの管理方法を指導する「生ビール大学」を随時開校。
「ビールがおいしい飲食店が日本全国に増えて、どの店に入っても満足が得られるというのが理想。さらに、最良の注ぎ方を独自に研究してもらえばと思います。結果、当店にお客さんが並ばなくなるのが夢ですね」と重富さん。
ビールスタンド重富では、注文できるビールはひとり2杯までで、ツマミもない。
「ここでビールを飲んだら是非、次のお店にも行ってくださいね」
重富さんのビールに興味を持った人たちがこの店を訪れ、2軒目に流れれば周辺の酒場も活気づくだろう。重富さんは客を自身の店に呼び込みたいのではない。日本の飲食店全体の底上げを図っているのだ。
私が大手メーカーのビールを注ぐ理由
重富さんはイベント出張の時などはクラフトビールを注ぐこともあるが、店では大手メーカーだけ扱う。なぜだろうか?
国産ビールをピラミッドに例えると、その土台にあるのはアサヒやキリン、サッポロ、サントリーなどの大手メーカーだ。クラフトビール市場は拡大しているにもかかわらず、国産大手メーカービールの土台は縮小傾向にある。土台が蝕まれれば、いつかピラミッドが倒れてしまうだろう。
「これは日本の経済が倒れる時だ」、重富さんは危機感を覚えたという。
「クラフトビールだけでなく、国産大手メーカーという土台を伸ばせばビール市場は盤石になるでしょう。私は国産ビールの土台をしっかりと造りたい。だから大手メーカーのビールでもプレミアムは注がずに、大手の通常のものしかやらないのです」
おいしいビールを知ってもらうための旅
重富さんは、本当においしいビールを飲んでもらうために「旅するスイングカラン」と称して、昭和と平成のビアサーバーと共に、他県のイベントでもビールを注いでいる。
広島にとどまらず、まずは本物のビールの味を知ってもらおうというわけだ。
昨年は北海道から鹿児島まで50カ所以上を回った。
2019年の今年はさらに多くの場所でビールを注ぐ予定だ。
広島まで行けないビアファンの方々も「旅するスイングカラン」で、“唯一の道”を通った本当においしいビールを体験してみてはいかがだろうか?
そして近い未来、こんなビールが日本全国の店で飲めることを期待したい。
【ビールスタンド重富】
住所:広島市中区銀山町10-12(ブルーウェーブインホテル広島南側)
営業時間:17時~19時(休日は延長することもあり。重富さん不在時には弟子が開店)
WEB:http://sake.jp/
近日中に開催が予定されている「旅するスイングカラン」
■「出張!ビールスタンド重富!2019 in 秋葉原」
日時:7月6日、7日 11:00〜20:00
場所:日本百貨店しょくひんかん こまきしょくどう(東京・秋葉原)
通常店で味わえる「一度つぎ」「二度つぎ」「三度つぎ」「シャーブつぎ」の他に、「マイルドつぎ」「マイルド&IPA」「ミルコ」も登場。https://www.jbja.jp/archives/25682■『まんがでわかる ビールが10倍美味しくなる知識』出版記念イベント
☆予約で満席になりました。追加販売もございません。
日時:7月13日 15:30~18:00
場所:Beer Cafe Restaurant ATHREE PARLOR(東京・新宿)
重富さんと、その弟子でビアバー「麦酒大学」学長(店主)の山本祥三さん、2人の名人が注いだビールを味わうことができる。こちらのサイトから要予約。
https://www.jbja.jp/archives/25920■阪神のクラフトビールと餃子マーケット
日時:7月19日、20日、21日 10:00~12:00/13:00~16:00/17:00~19:30
場所:阪神梅田本店8階(大阪・阪神梅田)
クラフトビール✕餃子、注目の2つのムーブメントを捉えた食のフェス。旬なクラフトビールと、進化系餃子のコラボが楽しめる。
https://www.hanshin-dept.jp/hshonten/event/index.html/■ひろしまブランドショップTAU期間限定「ビールスタンド重富」
日時:8月2日~6日 平日17:00~19:30 土日11:00~19:30
場所:ひろしまブランドショップTAU(東京・銀座)
ひろしまの旬の食体験の場所として様々なグルメを提供している「ひろしまCAFE」での出張「ビールスタンド重富」。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。