SORACHI1984の新商品がAmazon限定で発売! しかも3種類同時発売。 ブリューイングデザイナー新井健司氏に理由を聞いてきた!
2019年6月27日、Innovative Brewerから早くも「SORACHI1984」シリーズの新商品「SORACHI1984 SESSION」「SORACHI1984 DOUBLE」「SORACHI1984 Another Story Amarillo」の3種類が発表された。発売からまもなく3ヶ月、複数種類の同時発売は予想外だった。しかも今回はAmazon限定発売。なぜ、このような手法をとったのか? ブリューイングデザイナー新井健司氏に話を聞くため、恵比寿にあるサッポロビール本社に向かった。
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【好調の樽販売と小売店での課題】
-:今日はよろしくお願いします。こんなにも早く「SORACHI1984」の新商品が発売されるとは予想していませんでしたので、発表をみて驚きました。
新井氏:あははは。ありがとうございます。してやったりです(笑)。
-:しかも3種類同時です。新商品の話を聞く前に、4月の発売から3ヶ月経った「SORACHI1984」についてお聞きします。当初の販売計画が22万ケース(350ml×24本換算)。売れ行きはいかがでしょうか?
新井氏:販売数は公表していませんが、缶については少し落ち着いてきている感じです。一方で樽は、4月下旬から全国販売を開始して、おかげさまで好評で徐々に伸びてきている状況です。
-:缶については、発売当初からSNSで「置いていない」という投稿をよく目にしました。実際にスーパーなどに足を運んでみると積極的に展開しているところとそうでないところと分かれている印象をもちました。
新井氏:そうですね。置いてくれるということはポテンシャルがあると感じてもらっているのだと思います。一度置いていただいたところに、どうやって再入荷をしてもらえるかが今の課題ですね。
-:置いていないお店に入荷してもらうには、お客さんの声が1番効果的という話を聞いたことがあります。
新井氏:はい。メーカーがいろいろ言うよりも、お客様が「SORACHI1984が飲みたいから入荷してくれ」とお店に直接伝える方が効果的だと考えています。根強いファンになってくださるお客様も多いので、一緒に盛り上げていきたいです。
【SORACHI1984ファンの満足度をさらに高めたかった。だから3種類同時に発売する】
-:話を新商品に戻します。このタイミングで3種類発売することになった経緯を教えてください。
新井氏:最初から3種類出す予定だったんですよ。「SORACHI1984」は、ビール好きだけではなく、ストーリーへの共感やこのブランドの世界観が好きというお客様が付いてくださるのではないかと考えて、ミッションアンバサダーを募集しました。そのような方たちに1番喜んでもらえるのはやっぱりビールなんです。新商品が発売されることが最も効果的だと思います。ホップが主役のこのビールを考えたときに「もっとソラチエースの特徴を感じたい」とか「もう少し軽くていい」と分かれると予想していました。そういった声がある程度集まった時期に少ない醸造量ですが準備をして対応することで、より好きになってもらえればと考えていました。
-:なるほど。
新井氏:特にビールが飲みたくなる夏に発売しようと、この時期に発表しました。
-:これは「That’s HOP!」シリーズの新商品と捉えていいのでしょうか?
新井氏:いや、これは「SORACHI1984」シリーズですね。
-:3種類発売されるので、選ぶ楽しみもあると思います。
新井氏:やっぱり選ぶ楽しみを提供していきたいというのはあります。それとこの商品自体にまだまだ広がりがあることを一気にみせておきたかった気持ちもあります。引き出しはいっぱいあるよと。
【ソラチエースの強弱を楽しめる「SESSION」と「DOUBLE」】
-:ここからは各商品について聞いてみたいのですが、まずは「SESSION」。モザイクを一緒に使いました。これはどのような意図があったのでしょうか?
新井氏:これはもともと「SORACHI1984」が、パクチー的な個性の強さを感じる方もいるかなと考えていました。実際、「この香りは苦手」という声はありましたが、それほど多くなく、「面白いビールだな」と思っていただけました。そのなかで、SESSIONは苦手な人でも飲みやすいものにしたかった。
-:飲みやすさを押し出したと。
新井氏:それとソラチエースというホップは、他のホップと組み合わせることで、香りの性質を変化させる研究成果があります。その傾向が最も出るホップがモザイクなんです。この2つをうまく組み合わせることでソラチエースの新しい可能性を示唆しつつ、モザイクのトロピカルなアロマで、より楽しみやすい「SORACHI1984」を味わってほしいと選択しました。あと1点が2017年に発売した「絶妙のMosaic&Citra」で初めて2種類のホップをセッションさせてすごく評判が良かった。4.5%と低アルコールでも爽やかさと飲み応えを両立していて、モザイクは「SESSION」をつくるときに向いているなと。飲んでみると、最初にモザイクのトロピカルな感じがあり、後からソラチエースのレモングラスやヒノキ、ココナッツといったフレーバーが感じられます。その交わりを楽しんでほしいと思います。
-:ソラチエースがモザイクのトロピカルな感じを引き立ててくれるビールなんですね。
新井氏:そうですね。繰り返しになりますが、とにかく飲みやすくしたかった。
-:お話を聞いていると、ビール用語的に使われる「軽い」という意味よりも音楽用語で使われる「合奏」というイメージですね。
新井氏:両方ですね。
-:そういうところにもストーリー性を感じます。その他には解放感を得られるビールというイメージをもちました。
新井氏:「とりあえず難しいことを考えずに美味しいビールを飲もうよ!」という感覚でつくっています。なので、デザインも夏向きで爽やかな感じになっています。サッポロビールとしても斬新なデザインじゃないかな(笑)。
-:ビールのデザインってどちらかというと男性的な色合いが多くて、日本のナショナルブランドでピンクってあまり使われていないですよね。
新井氏:なかなかないですよね。
-:次は「DOUBLE」について、お聞きしたいと思います。こちらは名前の通り「強さ」を意識したビールでしょうか?
新井氏:はい。その通りです。
-:アルコール度数も6%で少し高めになっています。強さを感じさせるためには、アルコールは高くなるものなのですか?
新井氏:香りのボリュームをつけつつ苦味のボリュームもついてくるので、飲みやすさを得るには一定のボディ感が必要になってきます。これを実現するためと「DOUBLE」という力強さをイメージしてもらうために今回はアルコールを少し高くしました。色も少し濃くなっています。
-:色が少し濃いというは、使っているモルトの関係ですか?
新井氏:はい。濃いめにすることでボディを厚くしています。ただそれに負けないくらいソラチエースの香りを付けていますし、苦味も若干強めです。
-:ソラチエース自体、苦味成分は強いのですか?
新井氏:強いです。昔からあるホップと比較すると強いです。苦味成分量でみると結構高めなんですよ。
-:「DOUBLE」ではその辺りも楽しめると。
新井氏:はい。
-:こちらは「元気をもらいたい」「勢いをつけたい」ときに合うビールというイメージです。
新井氏:そうそう。「元気をチャージして明日も頑張ろう」といった感じかな。
【ソラチエースへつながる「Another Story Amarillo」】
-:そして「Another Story Amarillo」。これもちょっとビールの商品名としては珍しいアナザーストーリーという言葉が使われています。
新井氏:アメリカでソラチエースに注目したのがダレン・ガメシュさん。アマリロが彼の畑で初めて見つかったフレーバーホップです。その当時はすごく特徴的な香りをもつホップで「ビールに使ったら面白い」と使われるようになっていきました。そこから色々なフレーバーホップを探すようになって見つかったのがソラチエースです。ダレンさんがアマリロを発見していなかったらソラチエースにも関心を示さなかったかもしれません。ソラチエースにつながる物語の1つとしてアマリロの存在があるということを知ってほしくてデザインしました。こちらはソラチエースとアマリロを組み合わせたビールです。
-:どんな感じのビールなのでしょうか?
新井氏:オレンジのような香りが甘く膨らむ感じで、とても爽快感のあるビールに仕上げました。「SESSION」同様にソラチエースは後からフワッと感じられます。
-:ダレンさんがソラチエースに注目するきっかけとなったホップ「アマリロ」とのセッションがどんな味になっているのか楽しみです。缶にデザインされているのは、ダレンさんの農場にある建物ですよね?
新井さん:そうです。昔はホップの乾燥場で、ここでホップを袋に一旦詰める工程をしていたそうです。すごく大事にしている建物で、今はホップ置き場になっています。マーケティング的には、3種類とも表面を同じに揃えた方が良いのですが、彼の農場において象徴的なシンボルなので、あえてこれだけは外しました。
-:このデザインを見てすぐに「ダレンさんの農場にある建物だ」と気づいた人は、なかなかの「SORACHI1984」ファンですね。
新井氏:そうなりますね。ワインにはボトルラベルにシャトーがデザインされたものがよくあります。あれは「ここでつくったワインです」というのをアピールしていますが、それと似たような感じですね。
-:確かにありますね。他に缶ラベルのデザインでポイントはありますか?
新井氏:「Another Story Amarillo」はレトロ感みたいなのを出したかったので、この2色を用いました。縞模様はいくつかサンプルをつくったなかで1番しっくりきたからですね。
-:ダレンさんには、このデザインはお伝えしたのですか?
新井氏:もちろん! 「Good Art」って言っていました(笑)。
【追加発売なし。3種類ともつくった分がなくなっても醸造予定なし】
-:「SORACHI1984」はビアスタイルとしては、ゴールデンエールと明記していました。今回の3種類はスタイル的にはどういった感じなのでしょうか?
新井氏:あ~。3つともエールですけど、ビアスタイル的には当てはまらないかなぁ。強いて言うなら「SESSION」はセッション・ゴールデンエール、「DOUBLE」はダブル・ゴールデンエールであり、「Another Story Amarillo」は、ゴールデンエールかなぁ……。
-:スタイルを意識しているわけではないと。それと今回は、Amazon限定での発売になります。全国の小売店販売という形にしなかったのは何故ですか?
新井氏:今回は、「SORACHI1984」を軸に販売しながら、ファンになっていただいた方に向けたビールなのでネット販売という方法にしました。ファンの方々が飲んでくださったときの反応をみてみたいんです。皆さんの満足度を上げられたらなという思いと、テストマーケティング的な意味合いもあります。
-:ファン向けの商品というわけですね。
新井氏:はい。ネット販売なので在庫がある限りは、いつでもどこでも買えると。少量でもかまわないという戦略の方が合っていた感じです。
-:ケース販売だと24本売りが基本だと思いますが、今回は12本売りです。これは何か意図があるのでしょうか?
新井氏:「24本だと多い」という声はずっといただいていたので12本で対応しました。それに加えて飲み比べセットを設けたので、気にいっていただけたら単品で購入してもらえれば。
-:現在の予約状況(取材日:7月9日)はいかがですか?
新井氏:飲み比べセットが1番多いですね。
-:醸造量はどのくらいですか?
新井氏:約10KLずつです。
-:売れ行きが良かったら、また仕込を行う形をとる?
新井氏:今年は、いま醸造した分だけです。
-:なくなったら終わりと。じゃあ、飲みたい人は、今買っておかないと飲む機会を失ってしまうわけですね。
新井氏:そういうことです。
-:発売は8月4日(日)。そこから発送なので届くのは翌日くらいでしょうか。
新井氏:もしかしたら地域によっては、4日に届くかもしれません。
-:今後の展開について教えてください。
新井氏:まだ言えることは少ないのですが、アンバサダーをはじめ、「SORACHI1984」ファンの方たちにより愛されるように努めて、その人たちが発信をしやすい環境をつくっていきたいと思います。皆さんがゴールとして認識しやすい「何か」を設定して、みんなでそこに向かっていきたいなと考えています。そういう仕掛けを色々と思案中です。
-:ありがとうございました。次の展開も楽しみにしています。
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