醸造所の仕事を疑似体験!! 見て触って楽しむ「よなよなエールのオープンブルワリー」体験レポート
よなよなエールや水曜日のネコを手掛ける、株式会社ヤッホーブルーイング主催の「よなよなエールのオープンブルワリー」が、長野県にある同社の佐久醸造所で8月3日(土)~4日(日)にかけて開催されました。入社3~5年目の若手社員によって企画されたイベントで、「醸造所って、おもしろい!」をコンセプトに、日々働く中で感じている魅力を一般の方にもぜひ体験して欲しい、という想いが込められています。同社ではこれまでも、「よなよなエールの超宴」や、醸造所見学ツアーなどが定期的に開催されてきましたが、ビールについて様々な視点から紹介するイベントは、今回が初開催となります。会場には、2日間で約1000人の来場者が訪れ、醸造所見学やテイスティングを通してヤッホーブルーイングの魅力を満喫していました。
オープンブルワリーの会場には4つの体験ゾーンと飲食コーナーがあります。今回はそれぞれのブースで体験した様子をレポートしていきます。
・体験ゾーン
1.原材料体験
2.品質管理体験
3.パッケージング体験
4.醸造所見学ツアーinオープンブルワリー
1.原材料体験
原材料体験ゾーンでは実際にモルトやホップに触れて、味わいや香りを楽しむことができます。
・モルト6種類食べ比べ
モルト食べ比べでは、ビール造りのベースとなるペールエールモルト、ピルスナーモルトを中心に、色や香りが異なる6種類のモルトを試食しました。実際に口に含むと、普段のビールから感じる甘味に加えて、苦味や香ばしさも広がり、濃色なモルトほど苦味を顕著に感じる新たな発見がありました。
・ホップ6種類嗅ぎ比べ
ホップ嗅ぎ比べでは、乾燥した毬花、加工したペレットの状態で、シトラ、カスケードなど6種類のホップが用意されました。それぞれ嗅いでみると、普段から馴染み深い香りがある一方で初めて体験する香りも多く、ホップの奥深さを実感しました。乾燥した毬花を半分に割り、嗅ぎながら香りのもとを辿っていくことで、ホップの秘密を探りながらその魅力を楽しめ、とても勉強になりました。
・コーヒーミルでプチミリング体験/モルト袋(25㎏)持ち上げ体験。
ミリング体験は、コーヒーミルを使用して麦芽を粉砕し、手触りや香りを楽しむブースですが、この日は特別に、醸造する際に使う粉砕機に麦芽を投入する「ミリング体験」も併せて開催されました。1袋25kgの重さがあるモルト袋を持ち上げて作業するため、まずは参加者全員でラジオ体操をして、体をほぐします。担当スタッフより、持ち運びから投入までの一連の流れの説明を受けて、いよいよ作業開始。粉砕機に麦芽を投入するタイミングでは記念写真を撮影する人も多く見られ、参加者の皆さんにとっても記憶に残る体験になったようです。普段は醸造の前日に行われる粉砕作業。ビールのスタイルによって1回に60~100袋分もの麦芽を粉砕するとのことで、体力勝負となるビール造りの過酷な一面も垣間見られました。
2.品質管理体験
品質管理体験ゾーンでは、仕事としての「テイスティング」と酵母観察を通して、ビールを出荷する際に実施している、品質検査工程の雰囲気を体験することができます。
・テイスティング
テイスティング体験は、3つのグラスに注がれたよなよなエールから、あらかじめ高温の中に数日間放置した、異なる状態の1つを見つけ出すという内容です。スタッフから説明を受けた後、まず液体の色を見比べて、香り、味わいの順番に確かめていきます。作業中に気が付いたことは、言葉にしてテイスティングシートに記載していきます。参加者の皆さんが、香りの雰囲気や味わいの特徴について、ビール用語に囚われず思い思いの言葉で表現していたのが印象的でした。今回は約30名のうち、10名程が見事正解しました。あらかじめ劣化させて特徴を解りやすくした条件下でも、すぐに答えを見つけることは意外と難しく、実際に流通する商品に対して、些細な違いを感じ取り判断する技術の凄さを、身をもって体験しました。
・酵母観察
酵母観察体験ゾーンでは、ヤッホーブルーイングで実際に使用している酵母の香りを嗅ぎ、顕微鏡を通してその姿を観察することができます。今回はタイプの違う3種類の酵母が用意されました。実際に香りを嗅いでみるとそれぞれに個性があり、スパイスやフルーツを想わせる特徴的な香りに驚きを覚えました。顕微鏡を覗いてみることで、「酵母は生き物なんだ」と改めて実感できる良い機会となりました。酵母はビールに使用する原材料の中でも、触れる機会が少ない材料だと思います。この体験を通して、ビールの香りのもとや酵母の姿を目にすることで、より身近な存在になったのではないでしょうか。
3. パッケージング体験
パッケージング体験ゾーンでは、缶の蓋の部分を締める巻締体験ができます。ブースには、蓋が切り離された缶が用意され、蓋と胴体を専用の機械を使って結合していきます。はじめに、缶の構造について説明を受けます。実際に作業を開始すると、蓋と胴体を巻き込んで締めるというなんとも複雑な工程が、完了するまでの時間はわずか15秒程度。機械のレバーを引き、目の前で高速で仕上がっていく姿は、まさしく魔法のようで、できあがった缶を前に衝撃を受けました。また、巻締が完了する度に、スタッフや周りの皆さんから「ナイスパッケージ!!」の言葉が飛び交い、皆で作り上げる温かな空間も魅力のひとつだと感じます。日常生活の中でも、馴染み深い缶ビールの秘密がわかる、とても貴重な体験でした。
4.醸造所見学ツアーinオープンブルワリー
醸造所見学ツアーでは、普段公開していない醸造所の内部を、担当スタッフの解説を聞きながら約30分かけて巡ります。見学の合間に、麦汁やできたてビールを試飲しながら、見上げるほど巨大な発酵タンクを間近で眺めたり、醸造に使用する機器のスケールの大きさに圧倒され、まさに「探検」という言葉がぴったりな雰囲気の中を進んでいきます。特に印象的だったのが、部屋ごとの温度の違いです。仕込み工程の部屋では、熱湯を使うため必然的に暑く、発酵工程の部屋に進むにつれ、室温は低下していきます。発酵部屋の温度の基準は、酵母の活動温度と結びついているとのことで、部屋の温度1つ取っても、ガラス越しの見学では解らない、多くの発見に溢れていました。また、部屋の至るところに、スタッフの皆さんによるひとことコメントが掲載されていて、コメント探しを楽しみながら巡る参加者の姿が印象的でした。
・飲食コーナー
飲食コーナーでは、ヤッホーブルーイングのオリジナルビールの試飲はもちろん、キッチンカーによるフード販売もあり、会場内に設置されたテントの中で、ビール片手に充実した時間を過ごす参加者の姿がありました。今回提供されたビールの中には、海外輸出向けや工場で試験的に造られた限定種が多数あり、普段とは異なる趣向の味わいには新たな可能性を感じました。併設されたグッズコーナーでは、定番商品から限定品まで、幅広いラインナップが揃い、イベントの思い出に缶ビールやTシャツを購入する人たちで賑わいを見せていました。
・おわりに
よなよなエールのオープンブルワリーは、普段目にすることがない醸造所の仕事を疑似体験しながら、その魅力を存分に感じることがでるイベントでした。ビール造りから、流通までの工程に実際に触れてみることで、ビールに対する考え方が深まり、普段なにげなく手にする缶ビールに、より愛着が湧く良い機会になったのではないでしょうか。会場には、同社で販売しているオリジナルTシャツ姿でイベントを楽しむ参加者が多く見受けられ、工場にカラフルな色彩が映える光景が印象的でした。今回のイベントを通して、ブースごとに参加者を楽しませる趣向を凝らした工夫と、現場で笑顔を絶やさず親切丁寧に対応するスタッフの皆さんの姿に、ヤッホーブルーイングというブルワリーが、沢山の人を魅了して止まない要因の一つを垣間見たように思います。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。